編集長コラム

有権者の1票をないがしろにするもの(133)

2024年10月19日16時48分 渡辺周

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「多岐にわたる課題に対し、一つひとつ着実に成果をあげる形で展開されており、高く評価できる」

この高評価が、誰に向けられたものか。分かる人がいるだろうか。

衆院選が公示された10月15日付で、経団連は各党の政策と取り組みへの評価を公表し、自民党のことを褒めた。

経団連は毎年、政党評価を実施していて、それをもとに会員企業に献金を呼びかける。自民党はいつも高評価で、企業献金をがっぽり受けられる。

だがいくらなんでも、今の自民党へのこの評価はないだろう。毎日新聞が10月15日から16日にかけて実施した世論調査によると、自民党の支持率は22%。最も多かったのは「支持政党はない」で50%だった。

国民世論とかけ離れても、経団連が自民党を褒めるのはなぜか。

それは自民党に献金しておけば、自分たちの要求に応えてくれるからだ。各政党への評価で自民を褒めるのは、自民党に献金するための口実であり「出来レース」だ。要は政策を買っているのだ。Tansaが今年7月に始めたシリーズ『自民支えた企業の半世紀』は、そのことを検証している。

Tansaのシリーズを経団連が気にしているのかは分からないが、経団連は10月15日付の文章で、次のように書いた。例年にはない記述だ。

「民間からの寄付については、社会的実在である企業も、その担い手として期待される。特に、経団連の呼びかけを踏まえた企業・団体による政治寄附は、政党の政治資金団体を窓口として行われる。これは、特定の利益誘導を図るようなものではない」

本当に自民党への企業献金が「特定の利益誘導を図るもの」ではないのか。Tansaはまだまだ、『自民支えた企業の半世紀』で検証していく。

選挙期間中にも記事を出したい。財界の献金で政治が左右されることに対し、有権者の票でノーを突きつけてほしいからだ。そうでなければ、せっかく1票を投じても、結局は大企業の財力に影響される政治が続くことになる。有権者の1票はないがしろにされる。

ただ、Tansaは小さなチームで仕事があふれている。いくつものテーマを同時に取材しているし、「国葬文書隠蔽裁判」も始まった。取材だけではなく、資金集めや運営の仕事にも追われている。

それでも、大企業であろうと、何の遠慮もなく向かっていけるのが私たちの強みだ。経団連は選挙のタイミングで、自民党を賞賛する声明を出してきた。負けるわけにはいかない・・・。

チームで同じ思いを抱き、来週続報をガツンと出すことになった。

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