中学生の時、友人は学校を休みがちだった。段々と教室に来る頻度は下がり、そして不登校になった。
私や友人と話している時、彼女はよく笑っていた。「本当は学校に行けるようになりたい」と、メールで彼女から打ち明けられたこともあった。彼女は「自分でもなぜ学校に行けないのかわからない」とも話していた。
だが私は、彼女が学校に行けなくなった理由がわかる気がした。
私は学校が苦手だった。1日中狭い教室に40人近い生徒が同じ服を着て同じことをさせられることが苦痛だった。皆と同じことができないことは恥ずかしかった。クラスメイトに爪弾きにされる恐怖が常にあった。
休んでいる彼女の机の中に、配布物を差し込むのは近くの席の人の役目だ。ある生徒がプリントを入れながら「この人は学校をサボれてずるい」と言った。周りのクラスメートたちも同調していた。
憶測でものを話す同級生たちに怒りが湧いた。私は、彼女が遊びたくて学校を休んでいたわけではないと知っていたからだ。自分が言われたわけではないのに、悔しかった。こうやって集団の中で異質な人を排除するような周りの態度が、余計彼女を追い込んでいるのではないか。
私はいま、過去の新聞記事からいじめ事件を拾い出す作業をしている。Tansaのシリーズ「保身の代償」のリサーチの一貫で、データベース化を進めている。
データベースに入っている事件のほとんどで、いじめられた生徒が自殺してしまっている。
ところが、そのことが社会に周知されず埋もれてしまっている。なぜ死に追い込まれたのかを知る必要がある。苦しんでいる人は今も沢山おり、自ら命を断つ生徒が絶対に出ないようにしなければならない。
今生きている社会が苦しいと感じた時、周りに助けを求められる。私は社会をそのような環境に近づけたい。
苦しい思いをしている人が自分から助けを求めることは勇気が必要だ。相談しても「それはあなたの甘えだ」と突き返される恐怖がある。「助けてほしい」と言えないのは、声さえ出せない状況に置かれているからだ。
苦しみを抱えている人を見落とさない。見て見ぬふりはしたくない。微かな声を探し出す姿勢を、できる限りとろうと思う。
絵:三井凜
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