広島の「Tansa木のねっこ支部」から先日、嬉しい報告があった。
木のねっこは広島県廿日市市のフリースクール。2021年から2022年にかけ、「スクープを放つ」と題して、取材の仕方や記事の書き方を伝授した。
あれから2年、木のねっこの横山怜勇さんと田上史花さんは高校2年になった。今度は自身が、中学2年生と小学6年生のインストラクターになった。初めての教え子たちが奮闘した結果を知らせてくれたのだ。
横山玲勇さんの教え子は、中学2年の宮武千諒(ちあき)さん。「SNSと推し活」について、取材し原稿を書いた。
千諒さんは、「推している」グループのライブで盗撮が行われ、その映像をSNSで配信する人がいることに心を痛めた。ライブに来ている人はお金を払っているのに、SNSで流された動画を無料でみる人がいるのは良くないと思ったのだ。なぜ盗撮と拡散が止まらないのか。
友人や家族、初めてあった人にも聞き取りをしたりしてみましたが、ほとんどの人は盗撮、盗聴している人をLIVE内で見かけたとしても、注意しないそうです。大事にしたくなかったり、LIVEを中断させる原因になりたくない、LIVEを純粋に楽しみたい。という気持ちがあるそうです。中には、すぐにその場で言う、と言う意見もありました。
ではどうすればいいか。ちゃんと提案がある。
盗撮や盗聴を少しでも防ぐ為には「全体を巻き込み、皆で推しを守る 」ということが重要です。
推しているアイドルグループのファンクラブを巻き込んで、LIVEを楽しみながらも盗撮や盗聴を警戒し、注意する 、自身の担当、推しを守る 、名づけて、「自担警備員」として大切な推しを保護してみるのも良いと思いました。
田上史花さんの教え子は、小学6年の宮武知実さん。ある日、大人との会話で「WBGT」という言葉が出てきて、「なにいいよん」(広島弁)と思った。そのことが、知実さんの取材の出発点になる。
調べると、WBGTとは、暑さ指数「Wet Bulb Globe Temperature」の略語であることがわかった。熱中症を予防することを目的として、1954年にアメリカで提案された指標であることも調べた。
だがともみさんは思う。「日常的に使う英語略語は増えている。私のように意味がわからず会話に困っている人がいるんじゃないか」。
ショッピングモールに行きインタビューをしてみました。あるサラリーマンの男性は、会話中にわからない英略語が出てきたら、知ったかぶりをしたり、直接意味を聞けずに話が曖昧になってしまうと答えました。
超高齢者社会の日本で、(英語略語が)たくさん使われるという事実について、地域で市民活動をしている高齢者の方にインタビューしてみると、若い子だけがわかる言葉で話してくるから、思いやりがないと思ったそうです。
ともみさんの記事の面白いところは、「じゃあ、英語略語はやめよう」とならないところだ。「物事を簡潔にまとめられ、仕事をする上で大切」だとも書いた。
知らない英語を調べていて「インクルーシブ」という言葉に出会った時は、その考え方に感銘を受けた。
障害の有無、性別、人種、多様な属性、ニーズを持っていることを前提として、分け隔てられることなく地域で当たり前に存在し、認め合い、全ての人がお互いの人権と尊厳を尊重しながら生きていく社会をインクルーシブ社会と言います。
社会では、ハラスメントは増え、SNSでは匿名で誹謗中傷、人種差別など酷い話を沢山聞きます。
おじいちゃんおばあちゃんや子ども連れ、外国人、障害者など困った人を見つけたら声をかけて自分ができる限りのことをできるようにしていきたいです。
インクルーシブな社会の実現にはみんなの理解が必要です。インクルーシブ公園、インクルーシブプレイ、たくさんのアイデアがあります。
みんなでインクルーシブな社会を作ります。
AIにできない仕事は ?
今週の水曜日は、神戸市の灘高校に出かけた。公民科で、3年生文系の45人を対象に2コマの授業をした。教諭の片田 孫 朝日さんから、「生徒はメディア、ジャーナリズム関係の授業は、受けたことがないと思います。東京の大学に進学する生徒も多いので、将来Tansaやジャーナリズムに関わってほしいとも思っています」と依頼を受けた。
Tansaの活動を紹介しつつ、授業を進めた。鋭く、熱のある質問がいくつも飛んできた。
私がTansaのことを「⾃分たちが掘り起こさなければ埋もれる真実を社会改善のためにスクープする」と説明したことには、こんな質問が出た。
「社会改善とはなんですか?」
私は答えた。
「多数決が民主主義ではない。社会からこぼれおちる人をなくすため、みんなで努力するのが民主主義だ。『スクープ』の原義も『掬い取る』。だから、こぼれ落ちる人を少なくするのが社会改善だ」
AI(人工知能)にはできない仕事ってなんだろう?この問いへの回答は、頼もしかった。
ある生徒は裁判官だという。「なんで?」と聞くと、「袴田さんの冤罪事件のように、人の命を左右するような仕事だから」。本人は裁判官志望だという。こういう考えを持つ裁判官がどんどん増えてほしい。
「責任を取らなければならない仕事は、人間でないと。AIでは責任を取れない」という意見も出た。なるほど。
「学校の先生」と答える生徒がいた。理由は「生徒一人一人と向き合えるのは、人間だから」。他の生徒からは「媚びてるー」とツッコミが入り、みんな笑っていたが、これはその通りだと思う。先生の片田さんが、照れくさそうにしていると、「ほら、AIは照れたりしませんよ」と生徒から言われ、また笑いが起きた。
授業が終わった後も、生徒たちは質問に来た。
報道関係に進みたいという生徒もいた。待ってるよ!
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