編集長コラム

ドジャースに学ぶ(211)

2026年04月25日18時48分 渡辺周

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4月16日未明、ひどい腹痛が私を襲った。

胃を握りつぶされているような痛みだ。嘔吐を繰り返し、熱もぐんぐん上がる。歩くのもつらい。3歩進んではうずくまってしまう。病院で痛み止めの点滴を打ってもらい、少し落ち着いた。

原因はよく分からないものの、重大な病気ではないと医師は言う。一安心ではあるが、1日経った17日の朝になっても、痛みと熱はなかなか引かない。困った。17日は重要なTansaの会議が予定されていた。近く、新シリーズを始めることになっていて、取材や編集の段取りを話し合わなければならない。

布団の中でスマホを手にし、会議の延期をメンバーに申し入れようかと思った。新シリーズに向けた段取りを話し合うのに、編集長がいないのはあり得ないと考えたからだ。

が、ちょっと待てよと思い留まった。NHKの番組が頭に浮かんだ。先日観て、とても感銘を受けた。

「栗山英樹 ザ・トップインタビュー 特別編 ドジャース・常勝軍団の秘密に迫る」

野球日本代表の監督を務め、WBCで優勝に導いた栗山氏が、ワールドシリーズで2連覇したドジャースの強さの秘密に迫る番組だ。インタビュー相手は、ドジャースの編成本部長、アンドリュー・フリードマン氏。

フリードマン氏は、資金に乏しい弱小チームだったタンパベイ・レイズを、ワールドシリーズに出場する強豪チームにしたことでも知られる。彼は大学まで野球をしていたが怪我でプロを断念。その後、ニューヨークの投資ファンドで成功を収めるが、やはり野球が大好きで、組織作りのプロとして球界に入った。

レイズとドジャースをどうやって、組織作りの面から強くしていったか。私は野球にそれほど興味はないのだが、Tansaに当てはまることが多い。必死にフリードマン氏の言葉を書き留めた。彼の表情は実に柔和で人柄の良さが伝わってくる。

特に心に刺さったのは、以下の言葉だ。

「確かに私は立場上、(裁判長の)ハンマーを持っています。つまり最終決定を下す権限があるということです。でもできる限りそれを振りおろさないようにしています。みんなで合意に至ること、そして他の人や意見を真に尊重することが大切だと思っています」

「もし常に私の考えだけで進むのなら、彼らは必要ないことになりますし、私の持つ偏りや見落としがそのまま露呈してしまいます」

「『自分がすべての答えを持っている』とは思わず、優秀な人たちと議論を重ね組織としての決定にたどり着くことが重要です」

栗山氏も、同じポイントで感銘を受けたようだ。インタビュー後の感想で語っている。

「『ハンマーをなるべく振りおろさないようにしている』ことが印象に残りました。立場や部署を越えて誰もが合意形成に参加できるという姿勢を貫き通すには、かなりの忍耐力が必要となります。見習わなくてはならない、と思いました」

私は腹痛に悶えながらフリードマン氏の言葉を思い出し、会議を欠席する旨はTansaのメンバーに伝えたが、会議の延期は申し入れなかった。

会議が終わった後、私に報告が入った。

取材の段取りだけではなく、シリーズの開始日まで決めていた。編集長抜きで、シリーズの開始日まで決めるとは! 予想以上だ。なぜ開始日がその日なのかについても、実によく考えられていた。

私は嬉しかった。各人が意思を持ちつつ「全員プレー」で前進する組織を目指しているからだ。「オレ、聞いてねーぞ」と怒り出す上司の顔色ばかりをうかがっている組織にしてはならない。

挑戦に許可は必要ない。「長」がつく私の役割は、挑戦の環境を整えることであり、失敗した時の対処で前面に出ることだろう。

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