熊本にいるTansaの辻麻梨子から今朝、連載「健軍から」の取材班のグループチャットにメッセージが入った。中川七海と共に現地で取材している。
「あれだけいろんな話をした住民説明会を見て、この記事・・・」
共同通信が配信し、東京新聞のデジタル版に掲載された記事「市民がミサイル『説明会』 長射程配備の熊本」のリンクが添付されていた。陸上自衛隊健軍駐屯地に3月、長距離射程のミサイルが配備されたことを受けて、「市民団体」が5月15日に住民説明会を開いたことを伝えている。
記事は300字足らず。中身が薄い。「市民団体」とはどういう団体なのかということすら、説明がない。
だがこの説明会は、主催者の「ストップ! 長射程ミサイル・県民の会」をはじめ、地元住民の思いと叡智が集まったものだった。詳しくはTansaの連載で報じていくが、辻と中川の取材メモを読むと、参加者は250人で質疑応答含めて2時間半。ミサイルの性質や防衛省の意図、住民の不安をどうやって解消していくかなど、軍事要塞化が進む日本列島の問題点を包括する説明会だ。
辻と中川は説明会の前後にも取材を重ねた。例えば、障がい者の作業所で働く人の「障がい者は平和でないと生きていけない」という声に接している。
私は先日、説明会に向けた主催者の会合を取材した。そこでは、どうやったら住民間の分断や自衛隊員との亀裂を生まない説明会にできるか、タイトルに頭を悩ましていた。最終的に「国がせんけん せにゃんたい! 住民の住民による住民のための説明会」に決まった。私は熊本弁を取り込んだこのタイトルにぐっときた。
だが、共同通信が配信した記事は「住民説明会」としか表記していない。
朝日新聞の角田克・社長兼最高経営責任者が「AI全振り」を宣言している。今の記者がやっているようなことは、AIに置き換えられるという趣旨だ。朝日新聞に当てはめれば、200人の「スーパージャーナリスト」と、それを支える300人の計500人の規模になると推測している。今の朝日新聞の社員は3700人ほど。AIを活用することで、7分の1以下にリストラできるというわけだ。
角田社長の構想は、報道機関のトップとしては情けない限りだ。だが組織の延命だけを考えるならば、的を射ている面もある。
熊本の住民説明会について、共同通信のような記事しか書けないのであれば、AIに任せれば十分だ。説明会の録音を取っておいて、AIにまとめさせる方が内容は充実するだろう。文章ができるスピードも早い。記者に人件費をかける必要性はない。
メディア激動研究所の井坂公明所長が、「波紋広げる角田・朝日社長の『スーパージャーナリスト』構想」という論考を研究所のサイトに掲載している。研究所はマスメディアの衰退と共に、社会全体のニュースの質が低下することに危機感を持ち、メディアの将来像を探っている。井坂所長は時事通信の出身だ。
この論考では、朝日新聞の角田社長に対するメディア関係者の見解が、私を含めて載っている。武田剛・屋久島ポスト共同代表の言葉に、私は共感した。
「この構想には市民の小さな声に耳を傾けるという『ジャーナリズムの原点』が抜け落ちている。トランプ大統領ら国内外の要人にインタビューできる専門記者がいくらいても、現場を丹念に歩いて取材する、名もない庶民の小さな声に一つひとつ耳を傾ける記者がいなければ、読者から見放されてしまう」
AI時代に社会から必要とされるのは、「スーパー」がつくエリート記者ではない。原点に忠実なジャーナリストだ。

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