2026年5月4日、こんな見出しの記事がリリースされた。
「戦後日本最悪の労働弾圧:労働組合が『人質司法』に立ち向かう」
労働組合「関西生コン支部」(関生支部)への弾圧を取り上げ、捜査権力を真っ向から批判している。
「計画された捜査:合法的な組合活動を『犯罪』に変える」、「司法の無知と『人質司法』の悲劇」――。
この記事を報じたのは、韓国・ソウルに拠点を置く「DUNIA」。非営利独立の探査報道メディアで、イ・スルキさんが2025年11月1日に創刊したばかりだ。DUNIAはインドネシア語で「世界」、「地球」という意味だ。

イさんは、インドネシア最大手の雑誌「TEMPO」、韓国の週刊誌「ハンギョレ21」、ネパールの英字紙「ネパリータイムス」などで活躍してきた。アジア各地で「地を這う探査報道」を実践。ある時は、インド北東部の女性たちが気候変動と闘う姿を報じ、またある時は、インドネシアで韓国企業が所有するパーム油プランテーションが、現地の暮らしを破壊している実態を伝えた。東南アジアの政治にも精通している。
私がイさんと知り合ったのは2025年9月末。イさんはニュースタパと共に、ハン・ハクチャ総裁が逮捕されたばかりの統一教会を取材していた。「統一教会と韓国政界の癒着は、日本での統一教会と自民党の長年にわたる関係を模倣したのではないか」。イさんらはそうした問題意識を持ち、日本での統一教会の政界工作について、私に事情を聞きにきた。この時にイさんらの取材班とTansaが築いた関係が、後の日韓コラボ企画「TM特別報告書―自民党に巣食った統一教会」につながっていく。
イさんと話をする中で、私は彼女が芯の通ったジャーナリストであり、この仕事が本当に好きなんだなと確信した。
私はTansaが報じている関生支部の弾圧について、イさんに説明することにした。イさんなら、この弾圧をジャーナリストとして見過ごさないはずだと考えたからだ。
案の定、イさんは関生支部への弾圧に問題意識を持った。関生支部と弁護士たちが韓国の労組との交流で釜山を訪れた際、湯川裕司委員長ら組合員や弁護士を次々と取材し、冒頭に紹介した記事と動画をリリースした。「司法の無知と『人質司法』の悲劇」。こんな鋭いフレーズは、記者クラブで警察・検察・裁判所と馴れ合っている日本のマスメディアでは見かけない。
ジャーナリストとしての矜持がある友人を得たことは嬉しい。
だがもっと嬉しいのは、イさんがDUNIAという非営利独立の探査報道組織を立ち上げたことだ。給料をもらう立場を捨て、自ら資金を集めて組織を経営していくのは勇気がいる。探査報道組織は、あらゆる政治経済権力から独立している必要がある。誰からでも資金を得ていいわけではない難しさもある。
それでもイさんは、組織を新たに作ることで、理想を追求した成果物を社会へ送り出す決意をした。
イさんたちとTansaのメンバーで飲んでいた時、私はイさんから「組織を経営する上で重要なことは何か」と質問された。私はこう答えた。
「ジャーナリストしては、極端なまでの執着が必要だ。でも経営には、極端さが妨げになる」
本来ならば、ジャーナリストと経営者を兼ねるのは理想的ではない。だが組織の立ち上げ時はやむを得ない。私は長年、取材と記事を書くことしかやってこなかった。経営も担わなくてはならないようになり、随分と失敗を重ねた。イさんもずっとジャーナリストの仕事に専念してきた人だ。私のアドバイスをスマホでメモしていた。
DUNIAは2人のメンバーでスタートした。「最初の約束」として、こう書いている。
「私たちは、アジアを対象とした不平等や沈黙、そして国家、民族、宗教、ジェンダー、アイデンティティによって形作られるアジア内部の不平等や沈黙に立ち向かいます。私たちは、アジアの声を世界の言語へと届けていきます。それが、Duniaの最初の約束です」
これから様々な壁が立ち現れるだろうが、初志を持ち続ける限り、きっと突破していくと思う。
がんばれDUNIA!

DUNIAを設立した、イ・スルキさん
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