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ジェンダー平等を笑う彼に

2026年07月02日9時00分 湯川友愛

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4月初旬、都内にある音楽ホールへと向かった。学生時代から趣味で続けている、合唱の練習だ。

気温は27度で、歩くとすっかり汗ばむ。私はおろしたてのTシャツを着て行った。

胸の部分に「Rights」、背中には「ジェンダー平等のための長い列に加わる」と書かれている。私たちが享受している権利は、先人たちが闘って勝ち取ってきたものだ。そんな歴史に思いを馳せ、自分も権利のために闘う一員に加わるというコンセプトが気に入って買った。

休憩中、私の後ろで歌う女性がTシャツに興味を持ち、ゆっくりと文字を読み上げた。

「ジェンダー平等のための、長い列に加わる……?」

私は振り返って、Tシャツを見せながら答えた。

「前には、権利って書いてあるよ」

そこへ、近くにいた男性が半笑いで割り込んできた。

「思想強っ」

大学時代からの友人だった。政治学を専攻していた彼とは、一緒に講義を受け、お昼ご飯を食べながら政治について語り合ったこともある。

「思想が強い」という冷笑は、SNSではよく見かける。だが、まさか彼が口にするとは思ってもみなかった。面と向かって言われると、身体が氷のように固まった。

そんな私に気づかず、彼は続ける。

「そこのステージに立って、みんなの前でスピーチしたほうがいいよ」

周りで話を聞いていた数人も笑った。場の空気にのまれ、私は愛想笑いで相槌を打つことしかできなかった。

男女不均衡な社会で

日本は、男女不均衡な社会だ。

2025年6月に世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数で、日本は148カ国中118位だった。G7(先進7カ国)の中では、イギリスとドイツがトップ10入りし、イタリアが85位と低順位だが、日本はそれをさらに下回る最下位。日本の順位と並ぶのは、117位のアンゴラと、119位のブータンだ。

政治、経済、教育、健康の評価項目のうち、特に政治・経済分野での格差が大きい。企業の管理職や国会議員、閣僚の女性の割合が著しく低いことが、順位を押し下げている。社会の意思決定層は、男性ばかりだ。

調査が始まった2006年からの20年で、日本の順位は80位から118位にまで下がった。他の国が改善していく中、日本の男女不均衡はいっこうに変わらない。

昨年の調査から1年。初の女性の首相が誕生した。高市早苗首相の就任により、日本のジェンダー・ギャップ指数の順位は上がるかもしれない。

しかし、現実社会は変わらない。むしろ、高市首相の主張や政策は、男女不均衡をより強固にする。

閣僚のジェンダーバランスを是正する姿勢は見られない。新内閣には、18人中2人しか女性を登用しなかった。選択的夫婦別姓に反対で、世界で唯一の「強制的夫婦同姓」を維持する。

高市首相には、自分が自分として生きるための選択肢を奪われている女性たちの存在が見えていない。国民の代表という立場で権力を託された首相として、致命的だ。

私たちは、待っていられない。権力者の鶴の一声に期待するのではなく、主権者として声を上げ変化を起こさなければ、次の世代も苦しむことになる。

この夏、何度でもこのTシャツを着よう。もし笑われたら、「ジェンダー平等、大事じゃん」と真面目な顔で言ってみよう。「スピーチすれば」と言われたら、本当にスピーチしてみるのもいいかもしれない。

「思想強っ」と笑っている場合ではないことを、次こそ友人の彼に伝えたい。

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