編集長コラム

「質問をさせない」長崎県政記者クラブの皆さんへ(217)

2026年06月06日16時09分 渡辺周

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以下の各社が加盟し、日々の長崎県政を報じておられることと思います。

(五十音順)

朝日新聞社、共同通信社、時事通信社、テレビ長崎、長崎国際テレビ、長崎新聞社、長崎文化放送、長崎放送、西日本新聞社、日本経済新聞社、日本放送協会、毎日新聞社、読売新聞社

Tansaは、海星高校2年生だった福浦勇斗さんが、2017年にいじめを苦に自死したことについて学校や県の責任を追及する取材をしています。担当記者は中川七海で、「保身の代償~長崎高2いじめ自死と大人たち~【学校編】」として、すでに30本の記事を出しました。

明後日の6月8日、遺族が海星学園を提訴した裁判の判決が、長崎地裁で出ます。遺族は同日17時15分から県政記者クラブでの記者会見に臨みます。

Tansaもこの記者会見に参加したいので、5月18日に県政記者クラブに中川が電話しました。県職員が電話に出て、「幹事社が出払っているので明日折り返す」と言いました。

しかし、翌日もその翌日も連絡がありません。

5月21日になって、ようやく連絡が来ました。幹事社からではなく、県広報課のツツミさんからの電話でした。

「参加は認めますが、質問はできないオブザーバー参加です」

質問ができないというのは、記者としてあり得ません。中川が理由を問うと、ツツミさんは言いました。

「記者クラブ加盟社じゃないから。今回の記者会見だけではなく、どの会見でもこの理由です」

幹事社は日本経済新聞の藤井さんと、テレビ長崎の佐藤さんということでした。県広報課のツツミさんが回答してきましたが、当然、幹事社のお二人はTansaからの申し込みへの対応を承知していることと思います。質問をさせないというのは長崎県政記者クラブの慣例だということですから、他の加盟社も異議はないのでしょう。

私は長崎県政記者クラブの皆さんに、尋ねたいです。

「あなたたちは、誰のために仕事をしているのですか」

Tansaは、犠牲者のために仕事をしています。今回で言えば、福浦勇斗さんのために仕事をしています。亡くなった人が戻ってはこない以上、私たちができることは、勇斗さんのような思いはもう誰にもさせない社会にすることです。こうしている今も、いじめで苦しんでいる子どもは全国にいて、そのことへの焦燥感が原動力になっています。取り憑かれたように取材する中川をみていると、そう感じます。Tansaは今、全国のいじめ事案についてデータベースを作成中ですが、膨大な作業にメンバーが力を合わせてあたっています。

記者会見で加盟社以外には質問をさせないという慣習は、あなたたちが「誰のために仕事をしているのか」ということに向き合ったことがないから、温存されているのではないですか。勇斗さんの母のさおりさんは、「せっかく長崎に来てくださるのに本当に申し訳ありません」と中川に言っています。遺族はTansaが他社と同じ条件で取材ができることを望んでいます。

百歩譲って、あなたたちが勇斗さんの件について、しっかり取材をしているのなら救いはあります。

しかし、私は懐疑的です。長崎へは私も何度か取材に行き、各社の記者が遺族を取材する際も居合わせましたが、熱を感じませんでした。全く予習をしていないのではと思わざるを得ないような質問もありました。

取材は記者の特権です。私たちが記者だから、取材相手は報酬もなしに時間を割いて応じてくれるのです。そこには、事態が改善に向かうことに役立つ報道への期待があります。

長崎県政記者クラブの皆さんは、特権にあぐらをかいていませんか。賃料を支払っているのかは知りませんが、県庁の中に常駐スペースを与えられ、そこにいるだけで県から情報を与えられる。「よそ者」が来たら、県の広報課が間に入って自分たちだけの特権を守ってくれる。

特権が当たり前になると、感性が摩耗します。勇斗さんの遺族が以前に県政記者クラブで会見を開いた時、居眠りをする記者がいたそうですが、そういう態度は職務を果たしていないだけではなく、遺族を傷つけませんか。

勇斗さんは遺書で記しています。

「マスコミにかぎつかれないようにして」

家族に迷惑をかけたくない、そっとしておいてほしいという趣旨です。勇斗さんにそう思わせてしまった時点で、私たちを含め報道に携わる者の敗北です。

それでも海星学園と闘っている遺族にとったら、マスコミの報道は追い風になります。勇斗さんの命日の日、取材に来た各社の記者に勇斗さんの貯金で買ったお菓子を配っている姿は、いたたまれないものがありました。取材して報道するのは仕事です。私たちはとても受け取る気持ちにはなれませんでしたが、それほど遺族は必死なんです。

6月8日の遺族の記者会見で、Tansaに質問をさせないならば、皆さんが的確な質問をし、いじめ自死をする生徒がいない社会に資する報道をすることを期待します。

Tansaは引き続き、事態を変えることを目指した報道を続けます。

※2026年6月6日付の本記事では、幹事社を「NHKの藤井さんと、テレビ長崎の佐藤さん」と表記していましたが、正しくは「日本経済新聞の藤井さんと、テレビ長崎の佐藤さん」でしたので、2026年6月8日に訂正しました。

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