編集長コラム

「詰んでいる人たち」との闘い(220)

2026年06月27日16時57分 渡辺周

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ダイキン株主総会の原稿がきのう、中川七海から夕方に送られてきた。出張先の熊本空港で編集作業をしながら思った。

「ダイキン、完全に詰んどるな」

淀川製作所が原因のPFOA汚染について、地域住民ら1131人との公害調停が進んでいるのに、株主からの質問に何も答えられなかった。健康影響が出ているフランス・リヨンの地域住民200人からは、66億円の損害賠償訴訟を起こされているのに、話をそらした。PFOAはPFASの中でも、健康への危険度が最も高い。説明責任を果たせないならば、企業活動を営む資格はない。

問題は、ダイキンには自分たちが詰んでいるという自覚がないことだ。

私は、平賀義之氏がいまだに化学事業担当役員を務めていることに驚いた。株主総会で、PFOA汚染に関し意味不明な発言を繰り返していた。

平賀氏のことは2022年7月、中川と共にダイキン本社で取材した。ダイキンが汚染源であることを決定づける「社外秘文書」を、中川が入手。内容について質すためだったが、平賀氏は工場敷地外へのPFOA排出量すら知らなかった。この時点で、ダイキンは平賀氏を解任し、PFOA汚染に対処する体制を立て直すべきだったが、平賀氏は留任した。

結局、ダイキンは空調事業でエアコンが売れ、社の業績が好調ならばそれで良し。化学事業の公害問題など「どこ吹く風」なのだ。30年にわたってトップを務めた井上礼之氏は、2024年に43億円の「特別功績金」をもらって会長職を退任した。

詰んでいるのに、その自覚がないのはダイキンだけではない。

国葬文書の隠蔽をめぐっては、「記録を取っていない」「文書を捨てた」という最初の言い訳自体、すでに詰んでいた。

首相の高市早苗氏も詰んでいる。「中傷動画」をめぐる説明は支離滅裂だ。国会中継は「お笑いコント」のようだが、最高権力者が国会で放つ言葉だけに笑えない。

1番目の約束

詰んでいるのに自覚がない人たちを生んでいるのは、社会の怒りのエネルギーの低下だ。「だから何? 自分には関係ない」と思う人が多いと、悪事をはたらいた当事者は「でも、みんな怒ってないじゃん」と開き直る。倫理上は詰んでいても、実態としては詰んでいないということになる。事態はなかなか好転しない。

この状況でTansaが闘うには、相当な時間とエネルギーがいる。

例えばダイキンに関しては2021年11月から、国葬文書隠蔽は2022年9月から追及している。その他にもTansaは数年かけて取り組んでいるテーマがいくつもある。取捨選択しても、取り組まねばならない新たなテーマが加わっていくので、必要なエネルギーは雪だるま式に増えていく。寄付収入の状況とにらめっこし、メンバーを増やしているものの専従は現在6人。「詰んでいるのはTansaの方ではないか」とやり場のない悔しさが込み上げることもある。

それでも、諦めるわけにはいかない。Tansaは「5つの約束」のうち、1番目の約束で「旬のニュースを消費せず、事態が変わるまで報道します」を掲げ、次のように宣言している。

「私たちは、探査報道によって犠牲者が置かれている状況を変えることを目指しています。取り上げるテーマは犠牲者を救うために何を変えたらいいのかという視点で選びます。読者の興味に合わせて次に移ることはしません。着手したら、事態が変わるまで粘り強く報道を続けます」

約束を果たすための「ウルトラC」はない。限りある時間の中で集中力を高め、メンバーのチームワークを向上させ、取材・編集と経営の技術を学び、Tansaを支援してくれている「仲間」に常に感謝すると共に新たな仲間を探す――。

日々その繰り返しだ。

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