6月6日の本欄で、「『質問をさせない』長崎県政クラブの皆さんへ」と題しコラムを書いた。
Tansaは長崎県政記者クラブで開かれる記者会見への出席を5月18日に申し込んだ。いじめを苦に自死した海星高校2年生の遺族が海星学園を提訴。6月8日の判決後、遺族が県政記者クラブで記者会見を開くことになっていた。
長崎県政記者クラブは5月21日、県広報課の職員を通してTansaに連絡してきた。記者会見で質問ができない「オブザーバー参加」しか認めないという。6月6日のコラムでは、そのことを批判した。
ところが当日の6月8日、やはりTansaによる質問も認めるという。この時も県広報課の職員を通じて伝えてきた。
コラムでの批判が効いたのだ。
ただ長崎県政記者クラブに、排他性や県政当局との癒着の観点から、記者クラブの運営を見直す視点はない。Tansaがうるさいから、今回は特例で乗り切ろうというだけだろう。本当にこれまでの記者クラブの運営について反省しているならば、県広報課の職員ではなく、記者クラブの幹事社の記者がTansaに連絡してくるはずだ。
Tansaは6月8日のうちに、以下の質問状を長崎県政記者クラブに送った。加盟各社でしっかり協議をした上で回答してほしいので、回答期限は6月30日に設定した。
1、貴殿が、長崎県政記者クラブ加盟社以外の報道機関に対し、質問を禁じるオブザーバー参加しか認めてこなかった理由を具体的に教えてください。明文化された規約等があれば、併せてご提示ください。
2、当初、Tansaに対して質問を認めなかった理由を教えてください。また、いつ、どのような経緯・理由で、判断を改めたのかを具体的に教えてください。
3、長崎県政記者室の使用にあたり、貴殿から長崎県に対して使用料(家賃、水道光熱費、管理費等)は支払っていますか。支払っている場合は、その金額を教えてください。支払っていない場合は、その理由を教えてください。
4、記者クラブは本来、行政当局から独立して運営されるべきものです。今回の記者会見へのTansaの申し込みに対し、長崎県政記者クラブ加盟社ではなく、県広報課がTansaとのやり取りを担った理由を教えてください。
6月30日、長崎県政記者クラブから回答があった。メールに回答のワードファイルが添付されている。
通常、組織としての回答であっても、回答先からの問い合わせに備え、担当者名を記す。だがメールには、「6月幹事社 テレビ長崎 日本経済新聞社」としかない。メールアドレスも、個人のアドレスではなく、テレビ長崎の報道局のものと思われるアドレスから送られていた。ただワードファイルは、「プロパティ」というところをクリックすれば、文書の作成者が誰か分かる。そこには「佐藤有華」とあった。テレビ長崎の記者だ。
回答は以下だ。
貴法人よりいただいたご質問について、回答いたします。
長崎県政記者クラブ主催の記者会見について、過去に加盟社以外から参加希望が寄せられた際、オブザーバーとして参加していただいた経緯がございました。それに基づき、貴法人に記者会見の参加を認めるものの、質問は会見終了後にお願いしたい旨をお伝えしました。その後、一部加盟社の意見も踏まえて検討し、記者会見の質疑に参加していただきました。
引き続き、日本新聞協会の「記者クラブは『開かれた存在』であるべきだ」との見解に基づき、適切に対応してまいります。
Tansaの質問に対して、ほとんど答えていない。「前例からTansaには質問を認めない判断をしたが、『一部加盟社』から意見があった。検討して質問を認めることにした」と言っているだけだ。
だが重要なのは、過去の記者会見での参加希望者になぜ質問を認めなかったのか、「一部加盟社」とはどこで意見内容はどんなものだったのか、その社の意見を踏まえて長崎県政記者クラブで行った検討の中身だ。
記者クラブの規約の有無、県政記者室の使用料の支払い、県広報課がTansaとのやり取りを行った理由については、全く触れられていない。
回答の最後に至っては虚偽だ。開かれた存在として「適切に対応」していないからこそ、Tansaは質問状を送った。
長崎県政の担当記者たちにしてみれば、これまで通り記者クラブを拠点に取材しているだけで、長年の慣習に抗う気は起きないのだろう。そんなことをすれば、社内で睨まれる。記者クラブの他社との折衝だって面倒くさい。自分は毎日、真面目に仕事をしていてしんどい思いをしているのだから、これ以上負担を増やしたくないというのが率直なところだろう。
長崎県政だけではない。日本全国の様々な記者クラブの記者と接していると、同じ心境に陥っていると感じる。
だが、甘過ぎると思う。コップの中のぬるま湯につかっていて、外の嵐に気づかないか、気づこうとしないだけだ。マスコミが大部分を占めてきた日本の報道機関は今、絶滅の危機に瀕している。危機の核心は、経営難ではなく、社会からの信頼の喪失にある。
「自分は一社員だから何もできることない」と諦めないでほしい。犠牲者や権力者と向き合う現場の記者が闘わないでどうする。幹部なんて無責任なもので、この絶滅危惧時にノーアイデアだ。朝日新聞の角田克社長が「AI全振り」を宣言したことが象徴している。
Tansaは長崎県に対して、県政記者室の使用料の支払い有無など、長崎県政記者クラブが回答しなかったことを情報公開請求した。長崎県政記者クラブには、開示結果が出る前に自主的に回答することを望む。

長崎県政記者クラブで開かれた記者会見=2026年6月8日、千金良航太郎撮影
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