編集長コラム

突き抜ける若者たち(3)

2022年03月28日12時54分 渡辺周

世界最大の社会起業家ネットワーク「Ashoka」には、ユースベンチャラーと呼ばれる若者たちがいる。社会を変革する「チェンジメーカー」を発掘しているAshokaが選定し、支援している若者たちだ。Tansaの中川七海と小倉優香はユースベンチャラーの出身だ。

私は昨年、Ashokaの「Special Relationship Innovator」に選ばれて以来、ユースベンチャラーの若者たちと交流しているが、スゴイ。日本にこんな若者たちがいたのかと目を開かされた思いだった。私と同年代以上の人たちとの会話では、相手がメディア業界でもビジネスパーソンでも刑事でも「最近の若者は元気がないねー」という言葉が出てくる。「そうですよねー」などと同調していた自分を恥じた。

ベンチャラーの活動は多彩だ。ある若者は、児童養護施設に「人生で出会った最高の一冊」を募って届けた。活動資金を得るためクラウドファンディングを実施し、5400人から3700万円を集めた。ある若者は、ラケットにフェルトを貼って球に回転をかけれなくする「無回転卓球」を考案し広めている。例えばオリンピックのメダリストと障がいを持つ人でも対等に卓球での勝負を楽しみ、交流を深めるアイデアだ。

ベンチャラーはそれぞれ、大人たちの指図を受けず自分で考え行動する。「なんでもやりたい放題」だ。確かにTansaの中川も小倉も「萎縮」という言葉など存在しないかのように、どんどん動き回っている。

ただし、ベンチャラーには絶対に守らなければならない鉄則があるという。それは「自分の心を他者の心に重ね、その人の感じていることを理解する意識的努力」だ。

日本のジャーナリズムを創り上げていくのは、この辺りのコミュニティーにいる若者たちだなと思っている。

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