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学び直すべきは、政治家(23)

2023年01月31日20時38分 小倉優香

2023年1月27日の参議院本会議で、自民党の大家敏志参議院議員が産休・育休中の学び直しについて質疑した。

「産休・育休の期間にリスキリングによって、一定のスキルを身につけたり、学位を取ったりする方々を支援できれば、子育てをしながらもキャリアの停滞を最小限にしたり、逆にキャリアアップが可能になることも考えられます」

これに対して岸田文雄首相も「後押しする」と答弁した。

私はこれを聞いて、産休・育休に対する理解のなさに腹がたった。

出産や育児は大変だ。私には経験がないが、保育園で栄養士として働いていた時によく保護者からの相談にのっていた。

特に多かった相談は、「忙しい中で簡単に作れるメニューはないか」という相談だ。夜泣きで睡眠時間が確保できず、ストレスが溜まって母乳が出にくくなってしまうお母さんもいた。

ベビー用品にも、育児の大変さが現れていた。少しでも食事の片付けを楽にしようと、食べこぼしをキャッチできるポケットがついた前かけや、倒してもこぼれないコップ、落ちても割れない食器が人気商品だ。

そもそも、出産や育児は仕事にとってマイナスではなく、スキルアップできる経験だ。

イタリアのAshokaフェロー、リカルダ・ゼッザさんがそれを証明している。Ashokaは社会起業家のグローバルネットワークで、社会課題を構造から変える個人を認定している。

リカルダさんは、会社に勤めていたとき2度の産休を経験した。しかし、2回目の産休を終えて職場へ復帰した時、管理職には戻れなかった。出産・育児によって、キャリアを諦めざるを得なくなったリカルダさんは、育休中に向上した能力が科学的に裏付けられていることを立証し、「MAAM理論」を提唱した。親という役割を担い、出産や育児を経験することは仕事に役立つスキルを学ぶ機会であり、そのスキルは組織にとっても良い効果を生み出すという理論だ。例えば、共感力や問題解決能力、些細な変化に気づく力が向上する。

私が保育園で働いていた時、産休・育休を経て職場に戻ってきた同僚の栄養士はMAAM理論を体現していた。園に通っている子どもたちだけでなく、同僚の変化にもいち早く気づき、業務が溢れている時はチームを軌道修正しようと声をかけてくれた。ミーティングでは、立てた目標が現実的かどうか、彼女のおかげで考え直せる場面がいくつもあった。

産休・育休はブランクではなくて、キャリアの一部だ。大家議員が言うように、「キャリアの停滞」になるとは思えない。子育てによって一度職場を離れると能力が落ちる、と周りが決めつけることこそが、産休・育休を取りにくくなってしまう要因だと私は思う。

大家議員は自身のサイトのトップページで、「子どもたちが暮らす地球を守ること」というビジョンを掲げている。壮大な言葉を使う前に、産休・育休中の親に話を聞きにいくべきではないだろうか。

政治家こそ、学び直しが必要だ。

 

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