編集長コラム

「公害 PFOA」の冊子に込められたもの(47)

2023年02月18日15時47分 渡辺周

中川七海が制作した「公害 PFOA」の冊子が好評だ。これまで報じたシリーズの記事を転載したものだが、デザイナーに入ってもらいレイアウトしているので見やすいし、こうして手に取って一覧すると問題の所在が分かりやすい。希望者に無料で送付している(配送料は別途)。

嬉しいのは、Tansaのサポーター同様、全国各地から申し込みが来ていることだ。私は仕事柄、秋田県以外はすべての都道府県を訪れたことがある(秋田も今年は行く予定)。取材が終わると夜はまちに繰り出して、私のピコピコレーダーが反応した飲み屋さんで一杯やる。方言を聞きながらビールを飲むのが楽しみで、地元の人と会話が弾むこともよくあった。冊子を申し込んでくれる人の住所を見ながら「ああ、このまち行ったな」と思い浮かべている。

だがもっと嬉しいことがある。それは、申し込みをしてくれた人が「周囲にもこの問題を伝えます」と行動を起こしてくれることだ。

冊子の制作には手間がかかっている。普段の仕事をしながら、中川が時間をひねり出してつくった。注文を受ければ、そのあとは発送作業がある。ボランティアの佐野誠らの協力を得ながら、ひとりずつ宛名と住所を確認して発送していく。中川は「嬉しい悲鳴」だと言っていた。

ここまでしているのだから、冊子には対価をいただこうというのは自然な発想だ。だが私たちはそうはせず、無料で提供する。「お客様」ではなく、「仲間」として「公害 PFOA」を広げる役目を担ってほしいという思いがあるからだ。金銭面も冊子の配布を始めて以来、更なる寄付が続々と集まっている。コメントをみれば、仲間としてTansaを応援してくれていることがわかる。

「大手マスコミが取り上げない問題を掘り起こし、追求していくTANSAを応援します」

 

「私が起業して1年が経とうとしています。企業が社会的責任を忘れて、過ちを犯し、暴走することのないように、健全なジャーナリズムの存在は、私たち経営者にとっても、むしろ、ありがたいものだと痛感しています。続編、取材の成果に期待しております」

 

「日本における真のジャーナリズムの、最後の砦だと思っています。応援しています」

来週の2月24日には、大阪府摂津市の住民らでつくる「PFOA汚染問題を考える会」が、「Change.org」で集めたオンライン署名16,000人超分を大阪府へ提出する。署名集めでは、中川の記事が使われた。

この日は「考える会」が、大阪府庁の記者クラブで会見する。中川も取材者として出席する。事態はどんどん動いている。

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