シリーズ「誰が私を拡散したのか」が「第4回ジャーナリズムXアワード」大賞を受賞

2023年12月14日12時30分 Tansa編集部

2023年12月13日、ジャーナリズム支援市民基金が主宰する「第4回ジャーナリズムXアワード」において、シリーズ「誰が私を拡散したのか」がX賞(大賞)を受賞しました。

本賞は、「自由で公正な社会を創るジャーナリズムを応援したい」という思いで集った市民が立ち上げました。選考委員の職業や専門分野、国のルーツやジェンダーは多様で、まさに「市民」を体現しています。Xアワードのマインドセットに合致する多数の応募作品の中から今回、大賞を受賞することができました。Tansaとしては第1回、第3回に続く3度目の大賞受賞です。

シリーズ「誰が私を拡散したのか」は、誰もが入手できるスマホのアプリで、女性や子どもの性的違法画像が大量に売買されている実態を報じています。画像は一度出回れば完全に削除することは非常に困難で、被害者を苦しめ続けます。個別の加害者だけでなく、法制度の不備、アプリの運営者やプラットフォーム企業の責任など、性的画像の拡散被害が起こる背景を大きな構図で捉えました。現在も取材を継続しており、海外出張等にかかる取材費や人件費が不足しています。シリーズへのサポートをこちらからお願いいたします。

選考委員の総評はこちらです。

違法に入手した性的な画像や動画が、一見無害なGoogleやAppleのアプリを通じネット上で広く拡散・売買されていることを、知人の被害をきっかけに日本で初めて本格的に追及する連載。「闇に葬られている大きな問題を果敢に取り上げた」(選評より)との評価が高く、対象期間の2022年内に発表された記事は出だしの5回のみで未完である弱点も、同じ非営利ジャーナリズム組織の所属記者による2年連続受賞となるハードル(運営側の抵抗を含む)も乗り越えた。被害者にとっては“魂の殺人”とも言われる事態を野放しにすまいと、実名・顔出しのリスクを冒しながら、心ない加害者と大小プラットフォーマーの双方に立ち向かう若い記者を応援することは、本アワードの存在意義と重なる。連載は現在も継続中で、成果に期待したい。

筆者の辻麻梨子のコメントはこちらです。

本シリーズの取材は、身近な友人からの被害相談をきっかけに始まった。だが着手してすぐ、被害が膨大であることに気がついた。連日ネットでの取引を監視する中で、たくさんの女性や子供の顔を見ていると、いつ自分や家族、友人の写真が見つかってもおかしくないと感じた。

 

取材で重視したのは、被害を抑止することだ。特にGoogleなどのプラットフォーマーによって、大規模な被害画像の取引が可能となっていることに着目した。これらの企業は世界中にビジネスを拡大し、巨額の利益を上げてきたが、個別の被害には目もくれない。報道機関の収益源にもなっており、追及が難しい新たな権力だ。

 

際限なく広がる被害を前に暗い気持ちになることもあったが、共に立ち向かう人たちに励まされた。被害者支援に取り組む団体や違法画像を通報する市民、リサーチを担ったホワイトハッカーたち、寄付で取材の継続を支えてくれた人たちだ。何より誰にも話すことのできない被害を語ってくれた当事者に、心から感謝を申し上げたい。被害は今も続く。今後も諦めずに報道を続ける。

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