シリーズ「双葉病院置き去り事件」が「第3回ジャーナリズムXアワード」大賞を受賞

2022年11月02日14時17分 Tansa編集部

2022年11月2日、ジャーナリズム支援市民基金が主宰する「第3回ジャーナリズムXアワード」において、シリーズ「双葉病院 置き去り事件」が大賞を受賞しました。

本賞は、「自由で公正な社会を創るジャーナリズムを応援したい」という思いで集った市民が立ち上げました。選考委員の職業や専門分野、国のルーツやジェンダーは多様で、まさに「市民」を体現しています。Xアワードのマインドセットに合致する多数の応募作品の中から今回、大賞を受賞することができました。Tansaとしては2回目の大賞受賞です。

取材を支えてくださった寄付者の皆さまと読者の皆さまに、心から御礼申しあげます。本当にありがとうございました。

シリーズ「双葉病院 置き去り事件」は、2011年の原発事故時に、原発から5キロの医療施設で45人が命を落とした事件の責任の所在を検証した探査報道です。検察による救助関係者への聴取記録を入手したことを突破口に、自衛隊や病院の関係者、政治家らに取材を重ね、救助にあたった自衛隊が致命的なミスを重ねていたこと、本来は救助の拠点となるオフサイトセンターが機能していなかったことを暴きました。

後日開催される授賞式の様子は、追ってご報告します。

選考委員の総評はこちらです。

東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の過酷・複合事故時、入院患者の悲惨な置き去りが起こったことは知られていたが、救助にあたった自衛隊員らを検察が聴取した記録の入手をきっかけに、その実態を粘り強い取材で掘り起こした「息を吞む」「壮絶な」ルポルタージュ(選考評より)。「三つの置き去り」(患者の置き去り、災害弱者の置き去り、社会的マイノリティの置き去り)に対する疑義は重い。社会起業分野の国際NGOにいた筆者が、ジャーナリストを志して数年のうちに、本シリーズを含むいくつもの“探査報道”力作を世に放つ姿は注目と賞賛に値する。

筆者の中川七海のコメントはこちらです。

双葉病院に入院していた父を亡くした遺族、菅野正克さんの言葉が忘れられない。福島県大熊町の帰還困難区域内にあり、まもなく取り壊される自宅で呟いた。「誰も責任を取りたくないんだね。時間が経てば、そのうち忘れてくれるだろうと思ってるんじゃないですかね」。

「責任をとりたくない人」たちが不問にされる背景には、双葉病院の犠牲者のために声を上げる人が少ないことにある。かつて双葉病院で働いていた准看護師、木幡ますみさんが語るように「双葉病院は、社会の隅に置かれた人たちの最後の居場所だった」からだ。亡くなった方々の中には、引き取り手のない遺体が複数あった。

電気も水道も絶たれ、雪の降る海辺の病院に置き去りにされた方々の無念は、想像してもしきれない。記者の私にできるのは、10年間伏せられてきた事実を掘り起こすことだった。当時の私は記者1年目。不安はあったが、犠牲になった方々の視点で抱いた疑問を一つ一つ取材していった。受賞を励みに、続報に向けた取材を進めたい。

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