自民支えた企業の半世紀

甘利明労働大臣「企業は勝ち抜く必要」、派遣労働の対象業務を自由化【非正規4割時代-2】

2024年09月28日13時38分 Tansa編集部

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「雇用柔軟型」という言葉が出てきたのは1995年。日本経営者団体連盟(2002年、経団連に統合)のレポート「新時代の日本的経営―挑戦すべき方向とその具体策」の中だった。

日・米・独・仏・英5か国の財務大臣と中央銀行総裁が、ドル高を抑えると決めた「プラザ合意」(1985年)後、円が1ドル70円台にまでなった。バブル経済も崩壊し「失われた10年」だと危機感を募らせていた。

レポートを出した後も日本企業は復調しない。1999年、経団連は「わが国産業の競争力強化に向けた第1次提言」を発表した。その中で、雇用分野がターゲットとなった。

「企業内に必要以上に労働力を抱えたまま事業転換を図るという、これまで通りの対応では、世界的な大競争には打ち勝てない。雇用分野においても現下の厳しい情勢に即した対応が必要である」

リストラ実施企業の側に立つ労働大臣

1999年の首相は自民党の小渕恵三氏、労働大臣は甘利明氏だ。甘利氏はその後、安倍晋三内閣では経産大臣、岸田文雄内閣では自民党の幹事長を務めることになる。

この年、経団連に呼応するように労働者派遣法が改定される。それまでは派遣対象業務を、通訳や研究開発、アナウンサーなど専門職の26業務に限っていたが、原則自由化したのだ。「原則」というのは、この時点では製造や建設業務などは例外的に認められていないからだ。

だが、これには働く側の人たちから反対の声があがる。国会周辺ではデモや座り込みが頻繁にあった。

自民党政権は労働者の側ではなく、企業経営者の味方ではないか。1999年6月10日の参院労働・社会政策委員会では、そのことがはっきりした。

国会議事堂=渡辺周撮影

質問に立ったのは、共産党の市田忠義氏。リストラで人減らしをした企業には、1年間、派遣労働者の受け入れを制限することを提案した。正社員が非正規雇用に置き換わっていくことを防ぐためだ。

労働大臣の甘利氏が答弁する。

「その企業への派遣を希望する労働者のニーズに的確に対応できなくなる、あるいは当該企業の経営の立て直しに支障をもたらすということでありますから、それをリストラした企業に対して禁止行為をするということは適当ではない」

甘利氏は企業経営者と労働者、どちらの側に立っているのか。市田氏が詰める。

甘利:「当然その企業も経営戦略の中で勝ち抜いていかなければならないわけでありますから、ある手段は有効に使えるということは企業側の論理としても当然働くわけでありますから、求職側にとってこういう理由、それから企業側にとっても・・・・・・」

市田:「時間がないから短く」

甘利:「はい。経営の立て直しについて、それが禁止をされると支障をもたらすということは事実だと思います」

【1999年の国民政治協会(自民党への献金受け皿)への支払額トップ50社】

企業名献金額
トヨタ自動車6200万円
彰国社5000万円
新日本製鐵3000万円
東芝2964万円
松下電器産業2964万円
本田技研工業2640万円
日産自動車2540万円
東洋建設2376万2000円
スズキ2370万円
ソニー2300万円
日立製作所2280万円
伊藤忠商事2240万円
三井物産2240万円
三菱商事2240万円
大林組2227万7000円
大成建設2227万7000円
サントリー2203万6000円
西松建設2106万1000円
戸田建設1986万1000円
三菱自動車工業1840万円
三菱電機1820万円
竹中工務店1797万7000円
日本生命保険1769万円
鹿島1632万7000円
熊谷組1632万5000円
清水建設1627万7000円
鴻池組1608万2000円
三共1581万円
ダイハツ工業1550万円
富士重工業1550万円
武田薬品工業1548万円
住友商事1520万円
住友金属工業1500万円
川崎製鉄1500万円
神戸製鋼所1500万円
NKK1500万円
大豊建設1486万3000円
関電工1485万円
奥村組1406万2000円
五洋建設1406万1000円
前田建設工業1406万1000円
トーエネック1400万円
きんでん1400万円
デンソー1370万円
日野自動車1350万円
間組1346万2000円
石川島播磨重工業1329万円
マツダ1300万円
山之内製薬1265万円
三井建設1246万2000円

注:各社の支払額には、グループ企業や子会社の献金額は含みません

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