自民支えた企業の半世紀

国を仕切るのはトヨタ?/製造業での派遣労働解禁【非正規4割時代-3】

2024年10月02日19時39分 Tansa編集部

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なぜ非正規雇用は、この30年で働く人の2割から4割に増えたのか。初回は、1995年に日本経営者団体連盟(日経連)が出したレポート「新時代の日本的経営」。第2回では1999年に労働者派遣法が改定され、派遣対象が原則自由化されたことを取り上げた。

1995年と1999年で共通していることがある。それは、自民党への献金額が最も多かった企業がトヨタ自動車であるということだ。1995年は4540万円、1999年は6200万円だった。

献金トップ10は全てメーカー

トヨタは2002年、会長の奥田碩氏が経団連会長に就任する。首相は小泉純一郎氏。新自由主義の政策を推し進めていた。

奥田氏は小泉氏をパートナーとし、これまでとは違う次元で政治に踏み込んでいく。経団連自身、ホームページの中の「経団連の沿革」でこう説明している。

「奥田会長が経済財政諮問会議の民間議員に就任して以来、政府主催の主要会合の民間議員に経団連会長自らが就任し、政府の経済、財政、産業、科学技術など幅広い分野における政策論議に参加しています」

経団連の念願は、製造業への派遣労働の解禁だった。1999年の法改定では、派遣労働が原則自由化されたものの、製造業務は認められていなかった。労働者側は、正社員が非正規雇用に置き換わっていくことを懸念した。経営者側には円高で人件費が高騰しており、国外に工場を移す「産業空洞化」が起きるという主張があった。

結局、2004年に製造業への派遣労働は解禁された。この年の自民党への献金額もトップはトヨタで6440万円。トップ10は全てメーカーだ。

「企業ファースト」の奥田氏の考え方が表れているのが、2003年1月の内外情勢調査会での講演だ。奥田は消費税を2025年時点で16%に上げる試算を披露した上で言う。

「企業が強くならなければ、個人の生活も、日本の経済も決して良くはならないわけであります。法人税率を思い切って大幅に引き下げることにより、国内の事業を活性化させる。その果実は、国内の投資家に対しては配当というかたちで、また従業員、消費者に対しては賞与や賃金、雇用というかたちで還元され、それが再び新規の設備投資あるいは消費に振り向けられ、好循環を生み出していくのであります」

本当だろうか。

2024年5月、大手企業が発表した3月期決算は軒並み過去最高益で、トヨタは約4兆9000億円だった。

だが同じ時期に厚労省が発表した実質賃金は、24か月連続でマイナス。2008年のリーマンショックの前後を超えて、過去最長だった。

【2004年の国民政治協会(自民党への献金受け皿)への支払額トップ50社】

企業名献金額
トヨタ自動車6440万円
本田技研工業3100万円
ソニー3000万円
三菱重工業3000万円
松下電器産業2824万円
東芝2824万円
日立製作所2824万円
住友化学2500万円
新日本製鐵2500万円
武田薬品工業2451万円
東亜建設工業2085万円
住友商事2000万円
JFEスチール2000万円
三井物産2000万円
三菱商事2000万円
大成建設1996万円
清水建設1990万円
鹿島1972万5200円
前田建設工業1892万9600円
野村ホールディングス1880万円
マツダ1820万円
富士重工業1820万円
三菱電機1820万円
西松建設1708万円
伊藤忠商事1700万円
富士通1680万円
スズキ1620万円
戸田建設1608万円
大林組1575万200円
竹中工務店1567万5200円
ダイハツ工業1560万円
大和証券グループ本社1500万円
日本電気1500万円
日野自動車1490万円
トーエネック1400万円
東京海上日動火災保険1400万円
関電工1380万円
きんでん1300万円
味の素1300万円
凸版印刷1240万円
デンソー1200万円
日興コーディアルグループ1200万円
日本生命保険1153万円
日本ガイシ1100万円
石川島播磨重工業1090万円
三井住友海上火災保険1050万円
錢高組1020万8000円
アサヒビール1007万円
旭化成1000万円
サントリー1000万円
住友金属工業1000万円
神戸製鋼所1000万円
王子製紙1000万円
コマツ1000万円
東レ1000万円

注:各社の支払額には、グループ企業や子会社の献金額は含みません

東京都文京区後楽1丁目のトヨタ東京本社=渡辺周撮影

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