自民支えた企業の半世紀

奥田経団連が自画自賛の2年後/真っ先に切られた派遣労働者【非正規4割時代-4】

2024年10月03日13時54分 Tansa編集部

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トヨタ自動車会長の奥田碩氏は2006年、経団連会長としての最終年を迎え、自身の実績に自信満々だった。

2003年の就任以来、経団連の政党評価で自民党に高得点をつけて会員企業に献金を促した。トヨタ自身、率先して自民党に献金。6440万円でトップだった2004年には、法改定で製造業への派遣労働を解禁させることに成功した。

2006年の経団連・経営労働者政策委員会のレポート「経営者よ 正しく 強かれ」では、自画自賛するようにつづった。

「バブル経済とその崩壊によるダメージはきわめて大きく、その後の低迷は長きにわたらざるをえなかったが、日本経済が今日の回復をみることができたのは、政府による構造改革への取り組みもさることながら、なによりわれわれ民間企業の努力によるところが大きいと自負する」

ではどれくらい努力したのか。経営者と従業員が「歯を食いしばった」のだと言う。

「『失われた10年』といわれた苦難の時期に、きびしいスリム化や事業再編に迫られながら、歯を食いしばって将来に向けた研究開発や人材育成への投資を続けてきた経営者、そして従業員の懸命のがんばりが、日本経済をよみがえらせたといっても過言ではあるまい」

「トヨタのお膝元なら・・・」

ところが2008年から09年にかけて、状況が一変する。リーマンショックによる経済危機が訪れたのだ。企業は派遣労働者を雇い止めにする「派遣切り」で乗り切ろうとし、職を失った人たちがまちにあふれた。派遣労働者と請負労働者の失業者は40万人という試算を、派遣会社などでつくる業界団体は出した。

当時、派遣切りに遭った人たちを名古屋市内で取材した。ある中年男性は、同じ境遇の友人ができて、共にネットカフェやサウナを転々としながら職を探していた。公園での炊き出しを利用していたのだが、ふとその友人とはぐれてしまった時があった。「どこに行ったんだろう」と言って不安な表情をしていた。

名古屋にはあの時、職を失った人が全国から流れ着いた。「なぜ名古屋なんですか」と尋ねたことがある。返ってきた答えはこうだ。

「トヨタのお膝元なら何か仕事があるかと思って」

【2008年の国民政治協会(自民党への献金受け皿)への支払額トップ50社】

企業名献金額
トヨタ自動車6440万円
キヤノン5000万円
三菱重工業4000万円
東芝3850万円
日立製作所3850万円
パナソニック3850万円
住友化学3600万円
住友商事3300万円
三井物産3300万円
三菱商事3300万円
本田技研工業3100万円
新日本製鐵3000万円
JFEスチール3000万円
日本郵船3000万円
野村ホールディングス2800万円
武田薬品工業2637万円
三菱電機2520万円
ソニー2500万円
大和証券グループ本社2500万円
伊藤忠商事2500万円
日産自動車2400万円
マツダ2200万円
丸紅2000万円
ダイハツ工業1910万円
清水建設1880万円
鹿島建設1826万円
旭化成1800万円
日本電気1800万円
富士通1800万円
大成建設1796万円
東京海上日動火災保険1764万円
日野自動車1760万円
いすゞ自動車1720万円
日本生命保険1696万円
スズキ1660万円
IHI1600万円
昭和電工1600万円
富士重工業1580万円
大林組1575万円
竹中工務店1575万円
三井不動産1500万円
東レ1500万円
味の素1500万円
住友金属工業1500万円
神戸製鋼所1500万円
トーエネック1400万円
関電工1380万円
凸版印刷1340万円
王子製紙1300万円
きんでん1300万円

注:各社の支払額には、グループ企業や子会社の献金額は含みません

東京都千代田区大手町の経団連会館=渡辺周撮影

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