自民支えた企業の半世紀

総額36兆円! 大手軍需企業が冷戦終結以降に受注/自民党への献金と政策要望の末に【政治と軍需企業-1】

2024年10月24日22時12分 Tansa編集部

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日本経済が斜陽の中、なぜ自公政権は防衛費を増やすのか。背景には、政府からの兵器受注で莫大な利益を得る軍需企業と、そこから献金を受ける自民党との蜜月関係があった。冷戦終結後から現代に至るまでの、財界と自民の足取りをたどる。

なぜ自公政権は、防衛費を激増させるのか。

2023年度から2027年度の5年間で総額43兆円。以前の計画の1.6倍にもっていく。

岸田文雄・前首相のもとで、2022年に閣議決定した。閣議決定とは、内閣の大臣たちだけで決めることだ。国会での審議は必要ない。

中国や北朝鮮が、日本を攻撃した時に備える。あるいは攻撃してこないための抑止力を持つ。そのために防衛費を増やすというのが、自公政権の理屈だ。

だが本当にそのための増額だろうか。

「憲政の父」と言われる政治家、尾崎行雄は1937年の議会で、軍事費の増加を批判した。

「仕方がないで済ませれば今後益々軍事費が増え、国民は生活に不安を感じるようになる」

「軍備の拡大競争になった時、相手国と同等以上の軍事力を持つことができるのか。国防は相手があることなので、こちらが軍備を拡充しても相手がそれを上回れば国防は危うくなる」

尾崎の言葉は今に当てはまる。

すでに生活不安を抱えている人が多い中、防衛費が増大すれば、暮らしを支える予算を圧迫しないのか。増税はどの程度なのか。不安は募る。

日本経済が斜陽の中、中国と軍備の拡大競争をして勝てる見込みもない。

ではなぜ、戦前と同じ失敗を繰り返す危険をおかしてまで、防衛費を増やすのか。

Tansaは、自民党と軍需企業との蜜月に着目した。

三菱重工、前年比4.6倍の1兆6800億円受注

1989年12月、ソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領と、米国のジョージ・H・W・ブッシュ大統領が地中海のマルタ島で会談し、冷戦終結を宣言した。日本が新たな国際秩序の中で歩み始めた1990年から、最新のデータが揃う2023年までを対象に、以下の3点を調べた。記事最下部に表を掲載した。

①防衛省側から軍需企業に対する戦闘機や艦船、燃料など装備品の発注額(各年トップ20社分)

 

②軍需企業トップ20社から、自民党の献金窓口である国民政治協会への献金額(公開されている2022年分まで)

 

③日本経団連など軍需企業側の政策要望、政治への関与

各年のトップ20社の受注額は、33年間の合計で36兆4182億円だった。

一方で献金の総額は120億円。自民党への献金額に比べて、桁違いの金額を受注する構図だ。

2023年は、三菱重工業が1兆6803億円受注した。前年比4.6倍だ。IHIや日本電気(NEC)、日立製作所、富士通も前年比で3〜4倍の金額を受注している。自公政権が2022年12月、防衛3文書を閣議決定し、防衛費を2027年までに1.6倍に増やすと決めたことが受注を増やした。

石破首相、「利益を受ける会社からいただく」

どんどん増える防衛費をどうやって賄うのか。石破茂首相は今年9月の総裁選の最中、NHKの番組で防衛増税について次のように述べた。

「防衛費の増額によって利益を受ける会社からいただくことを真剣に考えたい」

衆議院選挙の公示日である10月15日にもNHKの番組に出演し、「負担能力のある方々や法人に負担していただくことは当然考えなければならない」と言った。

だが、軍需企業側が負担に応じるだろうか。

軍需企業側は日本経団連とともに、「そこまで利益を優先するか? 」と驚くような政策要望を長年にわたってしてきた。自分たちの利益を削ぐことに対して、そう簡単に同意するとは思えない。

次回からは、その時々の軍需企業側の要望を、受注額・自民党への献金額と合わせて報じていく。

【政治と軍需企業】の記事を読む

(2)三菱重工業会長から防衛庁長官へのお願い/冷戦終結後も「発注減らさないで」

(3)「武器輸出、アメリカは別だ」 態度豹変させた経団連/禁止原則「骨抜き」の始まり

(4)憲法9条も変えよと提言/「金は出すが口も出す」経団連

(5)「宇宙の利用は平和目的限定」の国会決議/ビジネスには「邪魔だ」

(6)安倍政権で加速した「軍産複合体」への道/「武器輸出3原則」は廃止

(7)米国政府の言いなり安倍政権/経団連は受注減に焦り

(8)「まるでキックバック」の三菱重工と自民/決壊した「平和国家」の堤防

親会社名受注額(1990-2023)献金額(1990-2022)
三菱重工業11兆6182億4300万円8億2046万円
川崎重工業5兆1785億9800万円1億4953万円
三菱電機3兆8060億4000万円7億7865万円
日本電気2兆7995億3700万円6億4930万円
IHI1兆9310億8700万円3億6989万円
東芝1兆5698億9700万円8億1182万2000円
富士通1兆3698億2200万円5億8340万円
小松製作所1兆199億4000万円2億1260万円
日立製作所7450億1100万円11億5379万円
SUBARU6375億7200万円5億7263万円
ジャパン マリンユナイテッド5808億2600万円870万円
日本製鋼所5476億3500万円1629万円
ダイキン工業5005億7800万円1億4220万円
伊藤忠商事4771億9600万円8億1197万5000円
沖電気工業4492億5200万円8350万円
ENEOSホールディングス3850億5700万円3億59万200円
コスモエネルギーホールディングス2999億200万円2552万4600円
JECC2879億3300万円0円
中川物産2650億1600万円0円
三井E&S2610億6600万円8247万円
日産自動車2488億5700万円9億8423万円
日立造船2015億4700万円8966万円
新明和工業1721億2900万円1380万円
出光興産1482億2000万円7711万7400円
三菱商事1305億8800万円8億3792万円
スカパーJSATホールディングス1221億円0円
住友商事1076億2300万円7億8619万円
ジーエス・ユアサ コーポレーション1072億円2085万円
ANAホールディングス928億円1億5800万円
いすゞ自動車923億8500万円5億6978万円
住友重機械工業824億5200万円9395万円
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構754億円0円
GEアビエーション・ディストリビューション・ジャパン569億円0円
兼松565億円7073万円
日清紡ホールディングス353億円2178万円
山田洋行319億100万円0円
日油300億4000万円486万円
高速マリン・トランスポート250億円0円
フジクラ249億円1331万円
エム・シー・シー228億3400万円0円
カメイ184億5600万円199万5000円
エアバス・ヘリコプタージャパン175億円0円
島津製作所147億800万円6093万円
阪和興業111億円568万円
JFEホールディングス110億8800万円7億3014万円
クラレ100億円129万4800円
大倉商事90億円610万円

※防衛省や防衛装備庁の資料等から集計

(10月26日訂正)

集計の際、三菱電機の2023年分の受注額の入力漏れがありました。33年間での合計受注額は3兆5375億4000万円から3兆8060億4000万円となりました。サムネイル画像と本文の表を訂正しました。

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