保身の代償 ~長崎高2いじめ自殺と大人たち~

繰り返される児童・生徒のいじめ自死を止めるために

2025年01月09日13時00分 中川七海

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福浦勇斗さんの亡くなった公園で命日に手をあわせる遺族=中川七海撮影

シリーズ「保身の代償 ~長崎高2いじめ自殺と大人たち~」は2023年5月に開始して以来、46本の記事を出してきました。進行中の「報道の自由裁判」は明日、第9回の口頭弁論が開かれます。

共同通信と長崎新聞は、報道機関としての使命よりも「組織の保身」を優先させ続けています。私立・海星学園高校でのいじめによって自死した福浦勇斗さんの存在など忘れてしまったかのようです。

しかし、遺族の闘いは終わっていません。

2018年11月、弁護士や他校の元校長らからなる第三者委員会は、調査報告書で、「中学3年時から高校進学後にかけて行われたいじめが、福浦君の自死の主たる要因であることは間違いない」と結論づけました。ところが、海星学園はこれを認めず、報告書自体を否定しているのです。

その後の2022年11月、遺族は学校を提訴しました。裁判は、事件から8年を迎えようとする現在も続いています。

私の取材動機は、このままでは同じ犠牲者が出てしまうことへの危機感です。

いじめによって命を落とす10代の若者がいようと、大人たちの保身の連鎖は止みません。学校、地元行政、地方紙、共同通信が、いじめを許す構造を作り上げているのです。

この構造は、全国どこにでもあると思いませんか。共同通信の加盟社である各地方紙に、本件について質しても、無視を貫いています。地方紙と共同通信の報道機関としての存在意義を問うていきます。

続編の準備も進めています。

我が子と同じ思いをさせたくない遺族の尽力を、なぜ海星学園がいまだに阻むのか。その核心に迫ります。

児童・生徒のいじめ自死は、全国でどれだけ起こっているのか。2013年以降の事例を集めたデータベースも製作中です。2013年はいじめ防止対策推進法が制定された年ですが、いかに法律が子どもたちの命を救えていないかを痛感しています。

次回期日:第9回口頭弁論 1月10日午前10時30分から東京地裁611号法廷

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