記録のない国

篠田裁判長「キーパーソンが浮かび上がりつつある」 異例の提案「証人尋問の早めの実施を」/国葬文書隠蔽裁判・第4回口頭弁論

2025年10月09日 20時00分  中川七海

FacebookTwitterEmailHatenaLineBluesky

安倍晋三元首相の国葬を巡る、内閣法制局との協議に参加した官邸側の4人の報告書(写真の一部を加工しています)

2025年10月9日、国葬文書隠蔽裁判の第4回口頭弁論が開かれた。東京地裁の103号法廷、通称「大法廷」の傍聴席は、9割方が埋まった。

これまでの法廷では異例の展開を見せている。篠田賢治裁判長が自ら、被告である国に次々と疑問を投げかけ、国が追い込まれているのだ。

この日の口頭弁論でも、篠田裁判長が原告側も驚く提案をした。

判明した4人の協議参加者

おさらいをする。

裁判でクローズアップされているのは、2022年7月12日から14日の3日間だ。7月8日に殺害された安倍晋三元首相の国葬を、閣議のみで実施を決めても法的に問題ないか。「法の番人」と呼ばれる内閣法制局と、内閣官房、内閣府が協議した。

Tansaは3日間の協議記録を情報公開請求したのだが、国は「記録を取っていないか、捨てた」から不存在だと主張している。記録を取らなかったり、捨てたりした理由は「意思決定に影響を与える重要な内容ではないから」。

だが当時の岸田文雄首相は、閣議決定により国葬を行うことに「内閣法制局としっかり調整した」と、記者会見でも国会でも答えている。重要な協議でないはずがない。原告のTansaは「ないわけないだろ国葬文書」をキャッチフレーズにしている。

篠田裁判長は、3日間の協議内容を具体的に知りたがっている。記録して保存するべき内容が含まれているかを確かめるためだ。だが国は当初、徹底的にはぐらかした。篠田裁判長は第3回口頭弁論で、いつ誰がどのような内容をやり取りしたのか、「5W1Hを意識して」報告するよう宿題を出した。

その結果、第4回口頭弁論の準備書面として、国は3日間の協議に参加した官邸側4人の氏名と役職、それぞれの当時の記憶をもとにした「報告書」を提出した。10月6日付の記事「法制局との3日間、官邸側の参加者4人が判明 情報公開請求には「不存在」の矛盾 国葬文書隠蔽裁判」で報じた通りだ。

裁判長「決裁ラインはどうなっているの?」

この日の口頭弁論で、篠田裁判長は国の準備書面に対し、「合計4人が(内閣法制局との協議に)いらっしゃったことは、よくわかったのですけれども・・・」と言い、ある点を突いた。

「内部で検討したり、ペーパーを作ったり、決裁した時のチームっていうんですかね。(内閣官房から)2人、(内閣府から)2人だけだったのか? 補佐とか係とかも絡んで仕事をしていたのか? 決裁ラインがどうなっているのか?」

「検討チームの体制がわかるようなもの。例えば、課の組織図。どういう体制で検討したのかがわかるものを、内閣官房、内閣府、それぞれについてご説明いただきたい」

もっともな指摘だ。

元首相の国葬実施という重要事項を検討するにあたり、この4人だけで協議から決裁までを担うはずがない。協議参加者からの情報をもとに、関係者と更なる調整を経た上で、物事が決まる。最終的には、岸田元首相に報告され、記者会見や国会で答えているのだから、何人、何十人もの人に情報が共有されているはずだ。それらが全て口頭で行われるはずがない。

裁判長「文書探索の裏付けを」

篠田裁判長は、もう1点、国に要望した。

「文書探索の裏付け」だ。

報告書を提出した4人は、Tansaの情報公開請求に対して、文書を探したが「存在しなかった」と主張している。

これも、篠田裁判長は鵜呑みにしなかった。

「行政庁だと、文書開示請求がくると窓口部署が、関係しそうな部署に文書の探索依頼をかけるのが、通常のルーティーンだと思います」

「どの範囲でどうやって探索したのか。4人の方が自分のパソコンを探したなどと報告書に書いていますけど。内閣官房や内閣府という組織として、こういった探索依頼をしたけれど見つかりませんでした、ということの裏付けとなるものはありますか」

次回期日:12月23日(火)午後1時30分、東京地裁103号法廷

篠田裁判長の2つの質問については、次回の裁判までに国側が回答することが決まった。その上で篠田裁判長は「キーパーソンが浮かび上がりつつあるという中で・・・」と述べ、今度は原告に矢印を向けてきた。

「今後、尋問をするのか、その場合どんなことを聞いたらいいのかについて、可能であれば次回、計画というか、青写真というか、概要をお伺いできたら」

通常、証人尋問は口頭弁論を経てすべての証拠が出尽くした最終盤で実施される。

なぜ今の段階で、証人尋問の話を振ってきたのか。篠田裁判長が続ける。

「なんでこんなことを言うのかというと、一つは、関係者の記憶の減退からして、3年も5年も経ってから昔のことを聞かれても、細かいことを覚えていないというのは、(原告被告)どっちにとっても不幸なことだと思います」

さらに篠田裁判長は、この裁判での原告の意図を汲み取る。

「原告にとって、『文書があるはずだ』ということが大事なのではなくて、『その文書を見せろ』というのが開示請求の意図だと思われるので」

「一般論として、こういう開示請求があったとき、最初に探した範囲ではなかったけれど『どこかにたまたまありました』みたいに、後から見つかるケースが他の事例でもあると思う」

「今後の裁判で、『開示請求時にあったじゃないか』ということになったとしても、年月が経って『今はない』となれば、『文書を見せろ』ということが実現できない。その意味からも、あまり何年も、3年も5年もかけない方がいいんじゃないかと。だからなるべく、遠からず尋問をやった方がいいんじゃないかと」

次回期日は、12月23日(火)午後1時30分、東京地裁103号法廷で開かれる。

FacebookTwitterEmailHatenaLineBluesky
記録のない国一覧へ