保身の代償 ~長崎高2いじめ自死と大人たち~【学校編】

「突然死はギリ許せる」 長崎・高2いじめ自死、死因を隠蔽しようとした学校に県がお墨付き(20)

2026年04月23日 14時51分  中川七海

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(左から)海星学園と長崎県庁

福浦勇斗(はやと)の遺族は、私立学校を管轄する長崎県学事振興課の職員らとの面会を経て、海星学園に絶望した。

いじめの詳細が綴られた遺書を県に見せていなかったり、死因変更を遺族に持ちかけたことを県に報告していなかったり。海星学園は遺族に対し、「いじめ自死」を「突然死」や「転校」として公表する提案をしていた。

海星学園は遺族の目の届かないところで、いじめ自死の公表を避けようと様々に動いていた。

これ以上、学校と一対一でのやり取りを重ねても意味がない。遺族の要望で、遺族、学校、県による3者での面会が行われた。

学校側に着席した長崎県

2018年1月31日、長崎市内にあるホテルの会議室に、3者が揃った。

勇斗の母・さおり、父・大助、海星学園の高校教頭・武川眞一郎、中学教頭・川島一麿、長崎県学事振興課の課長・松尾信哉、参事・松尾修だ。

机を挟んで6人が対面する。遺族の向かい側に、学校と県の4人が座った。まるで学校と県が“同じチーム”のような配置だった。

大助は「認識のズレを明らかにしたいと思い、この場を設けてもらいました」と切り出し、こう続けた。

「学校側の見解もあると思いますし、私たちの思いもあるので、細かいことから始めましょうか」

大助が「細かいこと」と言ったのには、訳がある。

海星学園は、口では「遺族の意向に沿う」や「二度と犠牲者を出さない」と言うものの、行動が伴っていないのだ。注意深く観察すると、むしろ事実に蓋をし、時が経つのを待っているかのようだと遺族は感じていた。

勇斗が亡くなった当初、遺族は学校を頼りにし、いじめの真相究明と再発防止策を講じてくれることを期待していた。

自死から2日後、葬儀場にやってきた武川と川島に「マスコミ対応はどうするのか」と詰め寄られ、「マスコミにバレたくないので、勇斗の名前は出さないでください」と答えた。その後、再発防止に役立ててほしいとの思いで、勇斗の遺書のコピーも学校に託した。

ところが、これらが全て裏目に出た。

学校側は「遺族の意向」を理由に情報統制を図った。マスコミどころか、生徒や保護者に対してもいじめ自死を公表しようとしない。

遺族の再三の要請により、一部の生徒と保護者向けの説明会は実施された。

だが、情報を切り取って伝えていた。いじめについては触れなかったり、勇斗が「第一発見者」に向けた遺書の中の、「騒がず静かに警察を呼んでほしい」という部分を強調したり。説明を聞いた生徒たちが、勇斗の自死を話題にしてはいけない、と受け取ってしまう表現になっていた。

こういった海星学園の言動は、氷山の一角だ。勇斗のいじめ自死の公表を避けているのは明らかだった。

だが、県は海星学園の言動や姿勢を把握していなかった。遺族が実態を伝えた後も、海星の教職員について、「真摯な対応でした。再度、学校側と話し合ってください」と遺族に伝えた。

「海星学園は、遺族と県に二枚舌で対応しているのだろう」

そう感じていた遺族は、3者が揃ったこの機会に、細かな点まで突き合わせていこうと提案したのだ。

「突然死提案」したことを認めた武川教頭

大助は、勇斗が亡くなった2017年4月20日以降の出来事を、順を追って振り返った。

「確かに、こういうことが起きた一番初めに、武川教頭に窓口になっていただいて、新聞・マスコミの防波堤になっていただき、シャットアウトしていただいたことに関してはありがたく思っています。それは私たちの意向でしたので助かりました」

「だからといって、それを全て隠すという訳じゃなくて。教頭先生が『マスコミが騒いでいるから突然死というのも一つの方法』とか、『遺族の意向によっては、我々は何とでもできます。事故死だとか転校だとか、かつてそういうこともありました』と言われて、正直、面食らいました」

「本当は学校側がマスコミに騒がれたくないんじゃないのかな、と感じるようになりました。クラスや保護者会での話し合いや、いじめの講演会を実施しないのも、対外的な公表を学校側がしたくなかったのかな、と感じたのは事実です」

「勇斗が亡くなって1週間ぐらいの時に『突然死』を提案され、正直かなり、精神的にきつかったです」

武川が答える。

「そのことに関しては、私は確かに言いました」

武川は、突然死や転校に関する自身の発言を認めた。しかし、大助との電話を振り返り、こう反論した。

「その時の前提として、勇斗くんがいなくなったことについて、『他の生徒は動揺しています。いつまでも空席にしているわけにはいきません。どうしましょうか』という話になって、しばらく無言がありました。『学校としては、こういう時に転校だとか突然死だとかということにもできますよ』と」

「私としてはその時、福浦さん方の気持ち、残っている生徒のことを考えて、最善の方法は何かなと思ってお話をしたつもりです」

海星学園をかばう教員出身の県職員

大助もさおりも呆れ、県の同席があって良かったと思った。

ところが、そんな期待は裏切られる。

学事振興課の参事・松尾修が、死因の変更提案について口を開く。

「(自死を)転校にというお話は、私もそういう言い方をしたことがあったと思うんですけど」

松尾修はもともと県立高校の教員だ。県の学事振興課に出向し、また教育現場に戻る。そんな松尾は教員時代に、自死を転校だと公表したことがあると認め、こう続けた。

「現状は『突然死』という言い方まではギリ許せる。ただ、『転校』というのは事実と反することなので言うべきではなかった」

驚く大助とさおりに構わず、松尾修は続ける。

「ただ海星側として少し弁解するならば、まだノート(いじめの詳細が記された勇斗の遺書の一つ)が見つかっていなかった時点ではあった。それにしても、言うべきではなかったと海星にお伝えしてですね。海星も反省していて、遺族に謝罪しますとのことでした」

学校を指導・監督する立場にある県の職員が、海星学園による死因の変更提案にお墨付きを与えたのだ。

(つづく)

*敬称略

情報提供のお願い

 

本シリーズでは、長崎・海星学園で起きた福浦勇斗さん以外のいじめや自死についても報じていきます。海星学園で、これ以上の犠牲を出したくないからです。

 

そこで、海星学園でのいじめ及び自死についての情報を募ります。情報は、勇斗さんの事案か否かは問いません。海星学園の生徒、卒業生、保護者、教職員の方々は、ぜひご協力をお願いします。情報提供者の秘密は必ず守ります。

 

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