「息子を侮辱する学校の言動を、裁判所が容認するようなもの」 遺族が福岡高裁に控訴 長崎・海星高2いじめ自死
2026年06月18日 15時02分 中川七海

判決後、記者会見で思いを語る遺族=長崎市で2026年6月8日、千金良航太郎撮影
2026年6月18日、学内でのいじめを苦に2017年に自死した福浦勇斗さん(名字のみ仮名)の遺族が、長崎・海星学園に損害賠償を求めた裁判で、福岡高裁への控訴を決めた。
6月8日の一審判決では、長崎地裁が被告・海星学園に対し、330万円を原告・遺族に賠償するよう命じた。勇斗さんが受けた複数のいじめ行為や、海星学園のいじめ早期発見体制の欠如があったと認定した。学校が安全配慮義務を履行し、いじめに気づいていれば、勇斗さんの精神的苦痛は一定程度緩和できたはずだという判断だ。
一方で、長崎地裁は、海星学園の体制不備と自死との因果関係を否定。いじめが酷かった中学3年時から自死した高校2年の4月までの期間が1年余り空いていることや、身体的ないじめではなかったことなどを理由として挙げた。
弁護士や元校長らからなる海星学園の第三者委員会は、2018年11月に「いじめが自死の主たる要因であることは間違いない」と結論づけた。長崎地裁は、第三者委の調査結果を否定していた海星学園側の主張を採用した。
また長崎地裁は、海星学園の武川眞一郎教頭(当時)が勇斗さんの自死を「突然死にすることもできます」と遺族に提案したことについて、「遺族を気遣っての言動」と捉えるなど、海星学園による事後対応を容認した。遺族はこう語っている。
「遺族と亡くなった息子を侮辱するかのような海星の言動を裁判所が容認するようなものであり、到底是認できません」
控訴にあたり、遺族が公表したコメントは以下の通り。
控訴にあたっての遺族コメント(全文)
長崎地裁にて6月8日に言い渡された海星学園に対する損害賠償請求訴訟の判決について、原告である遺族両名は、控訴することといたしました。
判決では、海星学園について「いじめ防止基本方針が全く周知徹底されておらず、いじめかどうかは理事会が決める、当事者間で解決させるといった不適切な方針が取られていた」と断罪し、海星の安全配慮義務違反を認めていただきました。これらの点については、私たちが訴えていた海星のいじめ対応のずさんさをご理解いただいたものであり、適切な判断であると考えています。
しかし、判決では、第三者委員会に認めていただいた高校時代のいじめについて、認定されませんでした。
また、いじめと息子の死との因果関係についても、相当因果関係については認めず、海星の責任を認めませんでした。いじめ行為が息子の自死の要因の一つであり、息子が亡くなることはなかった、との認定は第三者委員会の報告書と同様ではあるものの、さらに踏み込んで、本件のように学校による対策、救済が期待できない状況においてはいじめによる自死が十分に起こり得るものであったことを認めていただけなかった点、そして、適切な対策を取っていれば海星が息子の自死を予見できたはずであることを認めていただけなかった点は、残念でなりません。
さらに、事故後の海星教員による「突然死にすることもできますよ」との発言や、第三者委員会の報告書を受け入れなかった点、損害賠償請求権を放棄するよう打診してきた点などについて、これらが事実であると認定しつつも、賠償義務を否定した点は極めて不当であると考えています。遺族と亡くなった息子を侮辱するかのような海星の言動を裁判所が容認するようなものであり、到底是認できません。
このため、私たちとしては、息子へのいじめの一部が認定されなかった点、海星の安全配慮義務違反と息子の死との間の相当因果関係を否定した点、そして海星の事後対応についての賠償義務を否定した点への不服を理由として、福岡高等裁判所に対して控訴を申し立てることといたします。これらの点が認められない限り、海星学園が、真に生徒、保護者を守るために取り組むことは期待できないと思っていますので、高等裁判所には勇気ある判断を下していただきたいと考えております。
※Tansaはシリーズ「保身の代償 ~長崎高2いじめ自死と大人たち~【学校編】」の中で、本裁判を詳細に検証していきます。次回の記事は、7月16日に掲載予定です。
保身の代償 ~長崎高2いじめ自死と大人たち~【学校編】一覧へ
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