
巨大プラットフォームのXで、児童の性的搾取物いわゆる児童ポルノや、盗撮といった違法な画像や動画の投稿が蔓延している。
投稿者たちは捜査当局による摘発を逃れるため、様々な手段を使う。違法画像を表す隠語を使ったり、動画像を直接投稿せず、ファイル共有サービスを使ってやりとりしたりする。デジタル性暴力がXでどのように広がっているか、実態を把握するのは困難だ。
Tansaは、SNSなどの情報分析を専門とする株式会社Japan Nexus Intelligence(JNI)と共同で、Xでの違法画像の拡散状況を調査した。
調査の結果、児童ポルノや盗撮画像を含む可能性のある投稿は、2025年1月1日から2026年3月20日の約15カ月間で66万831件に上った。
2025.01 〜 2026.03
15カ月間の関連投稿数
0件拡散の仕組みも見えてきた。
短期的なアカウントと、長期的なアカウントを使い分けることで、摘発を逃れながら画像や動画を拡散していた。
短期的なアカウントは、削除や作り直しを繰り返す。
長期的なアカウントは、本来の目的をカモフラージュしながら、フォロワーを増やしつつ、違法画像の巨大な拡散コミュニティを作ってきた。コミュニティには、数十万規模のユーザーが集まっていた。
さらに、生成AIの悪用も明らかになった。
Xに導入されているGrokだ。Grokはユーザーの要望に応え、違法画像に関連した投稿を人気順などで整理し、収集していた。
被害の拡大を防ぐポイントは、コミュニティを壊し、繋がりを断ち切ることだ。
ところが、Xの運営会社やプラットフォームを監督する総務省は事態を放置する。
Xは、性的な画像や動画をやりとりする一大拠点となってきた。同意なく撮影されたり公開されたものや、児童の性的虐待や盗撮も含まれている。
加害者たちにとってXは、「便利な」プラットフォームだ。
まず、ユーザーが多い。性的画像の投稿者は、自身の投稿をより多くのユーザーに広めたがる。広まることで、性的画像を販売して収益を得たり、フォロワーを増やして影響力を拡大したりできる。
アカウントが簡単に開設できることも、加害者にとっては利点だ。メールアドレスか電話番号があれば開設できる。詳細な個人情報を入力する必要はなく、何個もアカウントを作ることができる。
一方で、児童ポルノなどの性的画像は、X上に投稿すると、利用規約に違反するとして投稿やアカウントが削除される可能性が高い。また、捜査機関から摘発されるおそれもある。
そうした中で、2025年頃からファイル共有サービスを使った投稿が急速に増えていった。
X外のサービスに画像や動画を投稿し、アクセスするためのリンクをXに投稿する方法だ。ここでは「ファイル共有サービス型」と呼ぶ。
「ファイル共有サービス型」とは
JK 配布
https://gofile.io/×××
画像・動画は添付せず、リンクと隠語だけを投稿。
外部ファイル共有サービス(Gofile等)
リンク先から画像や動画をダウンロードできる
これまでも、Xに性的画像を直接投稿せず、投稿先のリンクを案内する手法は取られてきた。スマホアプリも使われてきた。違法画像のやりとりに多用されていたアプリ「アルバムコレクション」が典型的で、Tansaの報道の末、運営を終了した。
アプリの使用が下火になった頃に、ファイル共有サービス型の投稿がどんどんと増えていった。特に目立っているのは、「Gofile」というウェブサイトの利用だ。
Gofileにアップロードされた動画(一部を加工しています)
ファイル共有サービス型では、とくに、Xに特徴的な3つの機能を悪用していることがわかった。
1つは、アルゴリズム。
アルゴリズムとは、誰の、どんな投稿を、どのような順番で表示するかをコンピュータが自動で評価する仕組みだ。
アルゴリズムの仕組み
JK 配布
https://gofile.io/△△△…
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ファイル共有サービス型は、Xにリンクのみや、リンクと児童ポルノなどの隠語を含めて投稿することが多い。一見しただけでは、違法な性的画像の取引だとはわからない。
しかし、Xは同様の投稿を検知し、タイムラインに「おすすめ」として表示する。ファイル共有サービス型の投稿にアクセスすれば、他の投稿も芋づる式に表示されるから、性的画像にアクセスしやすくなるのだ。
実際に投稿されたリンクにアクセスすると、被写体が明らかに未成年である性的な動画、被害者の運転免許証などの身分証と裸画像がセットで拡散されているもの、盗撮動画などが大量に見つかった。1つのリンク先に4000本の画像や動画を格納しているものもあり、大規模な拡散が起きている。
2つ目は、隠語を理解する人たちがXのコミュニティ機能で集まり、違法なものも含む性的画像・動画取引の巨大なネットワークを作っていることだ。
Xでは、共通のテーマについて投稿する目的で使用される「コミュニティ」という機能がある。
性的画像のやり取りが行われるX上のコミュニティ(一部を加工しています)
性的画像のやりとりを目的に作られた最も大規模なコミュニティには、約25万ユーザーが参加していた。ファイル共有サービス型による違法画像の投稿は、コミュニティの中でも行われていた。このコミュニティは現在削除されている。
3つ目は、Xに搭載された対話型生成AIのGrokだ。
Grokは、ユーザーからの呼びかけに対応して、質問に答えたり、X上の情報を収集したりする。
この機能を使って、ファイル共有サービス型の投稿を収集させる手口が流行していた。Grokに投稿を人気順に集めさせたり、投稿に含まれるリンクに実際に画像や動画が含まれているかどうかを確認させることで、効率的な収集を行っていたのだ。
ユーザーの指示に応じてリンクを収集するGrok
Xの機能を悪用したデジタル性暴力の拡散は、大規模に、日々行われている。
実態を知るため、Tansaは、SNS上の情報分析などを行う株式会社Japan Nexus Intelligence(JNI)の協力を得て共同調査を実施した。
JNIは、Tansaのこれまでの調査に基づき、未成年と盗撮に関連する複数の隠語と、Gofileなどのファイル共有サービスのリンクを特定。2025年1月1日から2026年3月20日までの期間に投稿された、これらのキーワードが含まれる全投稿を収集した。
性的画像の取引と明らかに紐づいていない投稿は含めなかった。
調査の結果、約15カ月間に投稿された児童ポルノや盗撮の隠語を含む、ファイル共有サービス型の投稿は、66万831件だった。
ファイル共有サービスや隠語の種類は無数にある。この件数は、同様の投稿のごく一部だと考える。
投稿は、主に2つの特徴を持つアカウントによって拡散されていた。
2タイプのアカウント
長期運用しインフルエンサーの役割を果たすアカウントと、削除を前提に開設を繰り返すアカウントがある。
1つは、ファイル共有サービス型の投稿をひたすら大量に行うアカウントだ。Xの管理者によるアカウントの削除や凍結を前提としており、短期的にアカウントの削除と開設を繰り返す。プロフィールや投稿内容には、ユーザーに関する情報はほとんどない。
もう1つは、インフルエンサーとして性的画像の発信の中心になるアカウントだ。アカウントを長期的に運用するため、自分自身では露骨な投稿はしない。時には性的画像の取引という目的を隠しながら、様々な投稿を行い、フォロワーを集める。
調査を行ったJNIのプロジェクトマネージャーである関谷祥平氏が、説明する。
「長期的に運用されているアカウントは、一時的に非公開にしたり、隠語による性的画像の取引とは無関係な投稿をしながら、フォロワーを獲得してアカウントを育てていきます。認知度が十分高まったら、集まったフォロワーをDM(ダイレクトメッセージ)や別のコミュニティに誘導して、違法な画像などのやりとりをしている可能性が考えられます」
Xには、共通の話題を取り上げるためにユーザーが集うことのできる「コミュニティ」という機能がある。性的画像の取引に特化したコミュニティも作られており、今回の調査では9つのコミュニティを見つけた。
9つのコミュニティには、それぞれ5000〜18万のユーザーが参加していた。のべ参加者は、83万超に上る。
コミュニティの名前には、ファイル共有サービスの名前が使用されているケースもあった。ファイル共有サービスの名前自体が、性的画像の取引を指すキーワードになっている。
9つのうち、2つのコミュニティを運営していたのが「もえ(@Countrymom0521)」というアカウントだ。
「もえ」が自身のアカウントを開設したのは、2013年4月。性的画像の投稿に関与しながら、10年以上も同一のアカウントを維持することは非常に珍しい。
また、「もえ」のフォロワーのうち34%以上が、Xアカウントを開設してから5年以上経過しているユーザーだった。「もえ」をフォローしているのは、性的画像を拡散する目的で作られた短期的なアカウントだけではないということだ。
現在、アカウントは凍結されており、詳細を掴むことはできなかった。
「もえ」のアカウント
GrokのXアカウント
JNIは、投稿を行っているアカウントのうち、他のユーザーに強い影響を与えているアカウントを分析した。
今回の調査で、影響力のあるアカウントとして、最も機能していたのはGrokだった。影響力とは、フォロワー数や、いいね、リポストといったユーザーの反応のことを指す。
Grokは、ユーザーの指示に応じて、隠語を含むファイル共有サービス型の投稿を収集していた。
ファイル共有サービス型の投稿は数が多く、Xの検索機能だけで探すのは難しい。投稿されたリンクから、すでに画像や動画が削除されている場合もある。Grokが画像の内容や人気順に応じて投稿を収集すれば、効率化につながる。
調査期間中に、Grokによる隠語を含む投稿は5680件に上った。うち、4504件が児童ポルノや盗撮に関連した動画像が投稿されていると見られるリンクを含んでいた。
JNIの関谷氏は、性的画像の拡散と、他の事例との違いを感じたという。
JNIでは、X上での世論工作や偽情報の拡散などの調査も行う。こうしたケースでは、発信された情報を訂正したり、削除を要請したりするなど、発信を抑制する一定の手段がある。
一方で、ファイル共有サービス型の投稿には、リンクや隠語など、わずかな情報しか含まれない。被害者や通常のユーザー、Xの管理者は気が付きにくい。それでもユーザーの間では、隠語が共通のキーワードとして機能しているため、拡散は止まらない。
性的な画像や動画を拡散していることが、明らかなアカウントもある。しかし、アカウントは削除される前提で作られている。X側が繰り返し消しても増え続けるので、利用規約違反のアカウントを凍結するような現在の対策の効果は薄い。
しかし、コミュニティを運営したり、拡散の中心となるアカウントへの対処が進めば、状況は改善されるかもしれない。
2022年、Tansaはアプリ・アルバムコレクションを使った性的画像の拡散を止めようと、拡散に関わった300超のアカウント名を記事に掲載した。同時に、投稿者たちが参加していた非公開のチャットグループに潜入。リーダー格の人物が児童ポルノを配布していたことを明らかにした。
その結果、グループは瓦解した。性的画像の取引は、個々のアカウントだけでは実現しないからだ。
X上で、違法画像取引のコミュニティを断ち切るには、どうしたらいいのか。
第一に、Xが現状に対処する仕組みを整える必要がある。
露骨な児童ポルノや盗撮、その他の違法な性的画像や動画自体が含まれる投稿だけでなく、隠語やファイル共有サービスを使用した投稿も検知しなければ、Xを使った拡散は止まらない。
しかし、Xが進んで改善に取り組むかは疑問だ。これまでも、性的画像を取引できる場を維持し続けてきた。
7月10日付でXの広報と、日本法人であるX Corp. Japanの代表取締役・松山歩氏に送付した質問状には、回答がなかった。
日本政府はXへの改善を要請しているのか。ネット上での権利侵害や、プラットフォームへの対処を管轄するのは、総務省だ。
総務省
Tansaは今回の調査結果を踏まえ、次の3点を尋ねた。
①ファイル共有サービス「Gofile」等を使用した、児童ポルノや盗撮等の違法な性的画像・動画の投稿、拡散が行われている実態を把握しているか
②調査結果を受け、総務省として被害を防ぐことを目的としたXへの対応を実施するか
③これまでに、児童ポルノや盗撮等の違法な性的画像のXにおける投稿や拡散、および生成AIのGrokの悪用等に関し、Xを運営するX Corp. Japanおよび米X Corp、米SpaceXAI等に、事業内容の報告、改善の要請、調査、指導等を実施したか
総務省は、Xという主要なプラットフォームを使った、大規模なデジタル性暴力の拡大を「個別」の事案だとし、判断を避けた。2025年、「情報流通プラットフォーム対処法」が施行されたが、同法で一部の大規模な事業者に課される義務は、削除対応の迅速化や窓口の整備、運用状況の透明化だけだ。
以下が、総務省の回答だ。
①個別のサービスを利用した情報の流通状況に関して、総務省からお答えすることは差し控えさせていただきます。その上で、一般論として、SNSを含むインターネット上での性的画像・動画を含む違法・有害情報の流通は深刻な課題と考えており、総務省としても、情報流通プラットフォーム対処法の適切な運用をはじめとした権利侵害を含む違法・有害情報対策に取り組んでおります。
②繰り返しとなりますが、個別のサービスを利用した情報の流通状況に関して、総務省からお答えすることは差し控えさせていただきます。
その上で、ご指摘のXを提供するX Corp.は、情報流通プラットフォーム対処法上の大規模特定電気通信役務提供者としての指定を受けており、同法による削除対応の迅速化、運用状況の透明化の義務が課せられております。総務省としては、これらの義務への対応状況も踏まえ、引き続き同法の適切な運用に努めてまいります。
③先述しました情報流通プラットフォーム対処法は、SNS等の「不特定の利用者間の交流を主たる目的としたもの」を規律の対象としており、生成AIサービス自体は大規模特定電気通信役務には該当しません。
その上で、X Corp.は、Xを提供する大規模特定電気通信役務提供者として指定を受けており、生成AIで作成された情報も含め、権利侵害情報に対する削除対応の迅速化の義務が課されているほか、年に1回、措置の実施状況の公表が義務付けられています。総務省としては、引き続き同法の適切な運用に努めてまいります。
なお、生成AI「Grok」を用いた性的画像等の生成問題に対しては、AI法を所管する内閣府において、本年1月にX社に対して速やかに改善を求める行政指導等を実施したと承知をしています(小野田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和8年1月16日 – 内閣府)。総務省としても、関係省庁として、連携して対応していきたいと考えております。
情報流通適正化推進室の大内朋哉・課長補佐は、電話での取材に応じた。
総務省は情プラ法にとどまらず、新しく事業を始めるプラットフォーム事業者の利用規約に、盗撮の禁止を盛り込むようアドバイスをするなど、「柔らかい対応も含めて行っている」と言う。
事業者側が利用規約に注意書きを入れたところで、加害者が聞くわけもない。認識が甘すぎる。
一方Grokを巡っては、改善した例がある。改善までの一連の経緯は、Xと各国の当局が真剣に取り組めば、被害を食い止められることを示している。
2025年末から2026年1月にかけて、Grokによるディープフェイクの生成が国際的な大問題になった。Grokは実在する人物の写真を脱衣させて、ビキニ姿などに加工する機能を搭載した。当初は、Grokを手掛けるSpaceXAIを率いるイーロン・マスク氏も自身の画像を加工し、楽しんでいた。
だが、被写体に無断で写真を加工する例が続出し、性暴力だと批判が高まった。
米カリフォルニア州の検察は、Grokによって生成された性的なAIディープフェイクの拡散について調査を開始した。フランス検察はパリにあるXのオフィスを家宅捜索し、マスク氏と前CEOのリンダ・ヤッカリーノ氏に聴取を要請している。
日本でも、政府がXにGrokの機能変更を求める要請を行った。
内閣府の人工知能政策推進室でXとの交渉を担った最上桂・参事官補佐は、「法的にわいせつ画像などに当たらない場合でも、本人の同意を得ずに性的画像を生成する仕組みを問題視し、要請に至った」と話す。
最終的に、XはGrokの仕組みを変更せざるを得なくなった。
日本政府は、被害が多発している現状を放置するのか。

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