公害「PFOA」

PFAS水道基準の見直し・妊産婦の健康調査を求め、署名6万1089筆を環境省などに提出 厚労省、国交省は受け取り拒否

2026年07月13日 21時31分  中川七海

XLineBlueskyFacebookEmailHatena

各省庁の担当者に質問する「つながろう! PFAS法規制にモノ申す全国ネット」の長岡ゆりこさん=東京都千代田区で2026年7月13日、友永翔大撮影

2026年7月13日、「つながろう! PFAS法規制にモノ申す全国ネット」が、PFASの水道基準値の見直しや妊産婦の健康調査などを求める6万1089人分の署名を、環境省、農林水産省、子ども家庭庁に提出した。署名提出と合わせて、各省庁と計2時間の懇談も実施した。

ところが、人々の健康を預かる厚生労働省と水道事業を担う国土交通省は、「管轄外」を理由に署名の受け取りも、懇談も拒否した。

4カ月で全国から6万超

全国ネットは、北海道、東京、静岡、大阪、兵庫、岡山、沖縄に住む8人の女性たちからなる。各居住地でPFAS汚染が起きており、3月8日の国際女性デーに合わせて署名を立ち上げた。

要望項目は、次の3点だ。

・水道水の基準50ng/Lをゼロに近づけてください。まずはアメリカ基準の4ng/L以下と同様にしてください。

 

・PFASの汚染が強い地域、特に妊産婦を中心に、PFASの健康被害を調査・研究し、健康被害への補償をしてください。

 

・水道水だけじゃなく、水全般・土壌・農水作物の安全基準を早急に設け、公共の無料検査を実施してください。農業・漁業従事者の安全を守り、被害補償も行ってください。

4カ月余りで、6万1089筆の署名が集まった。7月13日、全国ネットは環境省、農林水産省、子ども家庭庁の3者に対して署名を提出。続けて、市民との懇談の場が設けられた。省庁からの参加者は以下のとおり。(敬称略)

環境省

𠮷川圭子  水・大気環境局 環境管理課長

東利博 水・大気環境局 環境管理課 水道水室・衛生管理室長

塚田源一郎 大臣官房環境保健部 化学物質安全課長、化学物質審査室

川原志郎 大臣官房環境保健部 化学物質安全課 環境リスク評価室 室長補佐

 

子ども家庭庁

西川昌登 成育局 母子保健課 参事官(母子保健推進担当)

 

農林水産省

吉田知太郎 食品安全政策課 課長補佐(リスク管理企画班担当)

三木真之介 食品安全政策課 食品安全科学室 課長補佐

 

消費者庁(懇談のみ参加)

青木大輔 食品衛生基準審査課 衛生専門官

後藤純平 食品衛生基準審査課 基準策定専門官

環境省課長「水道関係者に衝撃が走った」

懇談時は、要望項目を軸に担当者が回答した。ところが、危機意識が全くない。6万人を超える市民が見直しを求める水道基準値について、環境省・環境管理課長の𠮷川氏は開口一番、こう語った。

「50ng/Lは、実はものすごく低い濃度です。普通、水道の水質基準はミリグラム単位なんですよね。ナノグラムからすると100万倍の差がある。そういう水準でものを語っているところに、いきなりこのナノグラムという単位が出現して、水道関係者も含めてかなり衝撃が走って、それでもしっかり対応せねばということでやっているわけでございます」

だが、これは誤解を生む説明だ。PFOAもPFOSも、微量でも健康影響を生じさせるため、低濃度の基準が設けられている。「低いから大丈夫」ではなく、「低くても危ない」のだ。米国の基準は、日本の50ng/Lに対して4ng/Lに設定されている。他の物質と単位が違うことは何の関係もない。

農水省食品安全政策課・課長補佐の吉田氏は、PFAS濃度が高い地域で採れた農作物を調査した結果、「十分に少ない水準である」と述べた。しかし、例に出したのは2024年度に調査した4品目のみ。全国ネットのメンバーからは「あまりに品目が少ない」との指摘が入った。

食品からの摂取は侮れない。

2021年、京都大学の研究チームが、国内最大規模のPFOA汚染が発生している大阪府摂津市で農作物の調査をした。汚染源であるダイキン淀川製作所から数メートルにある畑の野菜から、ナスやジャガイモ、ダイコンなど10種類以上を測定。いずれも高濃度のPFOAが検出された。例えば、140グラムのナスと、100グラムのサトイモを食べると、合わせて50.5ngのPFOAを摂取することになる。

2023年に大阪府下で行われた1192人対象の血液検査では、ダイキン淀川製作所周辺で採れた野菜を食べている人ほど、血中のPFOA濃度が高かった。その後、そういった野菜の摂取をやめた人は血中濃度が低下し、やめなかった人は血中濃度が維持されるという追跡調査結果も出ている。

4省庁との懇談は、計2時間に及んだ。各省庁はどの要望についても、「まずは知見の集積が必要」との回答に留めた。

受け取り拒否に「とてもショック」

当初予定していた署名提出先は、環境省、農水省、子ども家庭庁、厚労省、国交省だ。5省庁への提出を見据えた上で、署名を募っていた。

ところが、厚労省と国交省は受け取りを拒否した。要望項目に関して省庁としての権限がなく、「管轄外」であることを理由に挙げた。

厚労省は、子どもや妊産婦を含む人々の健康に責任がある。

国交省は、環境省とともに水道事業を管轄する。

いずれも、PFAS汚染問題において重要な役割を担う。全国ネット側は「(あなたの省庁が)関係ないことはないでしょう」と迫ったが、受け入れられなかったという。

全国ネットの長岡ゆりこさん(大阪PFAS汚染と健康を考える会)は、署名を寄せた6万人超の人々に思いを馳せ、こう述べる。

「残念なことに、本当は厚生労働省さんと国土交通省さんにも署名を提出します、ということで皆さんにお約束をして集めていたんですけれども。所管ではないということで、受け取っていただくに至りませんでした。とてもショックを受けています」

同じく全国ネットのメンバーの町田直美さん(宜野湾ちゅら水会)は言う。

「厚労省と国交省さんに直接的な質問が足りなかったのかなって。次回からはちゃんと、各省庁に責任があるような質問の仕方で、責任を持ってその問題を解決していく姿勢を求める質疑にしたいと思っています」

全国ネットは、継続して署名を集める。厚労省や国交省に加え、PFAS基準の策定に深く関わる内閣府・食品安全委員会にも署名を提出予定だ。

【署名】

オンライン:サイトはこちら

用紙:ダウンロードはこちら

【女性ネットへ参加、署名に関するお問い合わせ】

NO! PFAS女性ネット、つながろう! PFAS 法規制にモノ申す全国ネット

呼びかけ人代表 長岡ゆりこ(大阪)

電話:090-8376-1215

メール:osakapfas.nagaoka@gmail.com

XLineBlueskyFacebookEmailHatena
公害「PFOA」一覧へ