
農林水産省の職員公募についてインタビューを受けた御厩敷寛氏=転職支援サイト「AMBI」
「国葬文書隠蔽裁判」証人尋問の直前特集2回目は、御厩敷寛氏。当時、内閣官房内閣総務官室 企画官だった。
御厩敷氏の役割は、「国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて」の案段階文書を作成することだった。2022年7月12日から14日、この案段階文書が内閣法制局と内閣官房・内閣府による3者で協議され、内閣法制局による修正の上で確定した。
御厩敷氏は主に農林水産省で官僚としてのキャリアを積んだ。今は水産庁漁政部の漁業保険管理官だ。
閣議決定を根拠に国葬を実施しても良いという提案文書を、畑違いの御厩敷氏がどのように作成したのか。
「上司に従うだけではなく、能動的に行動を」
御厩敷氏は2004年に農水省に入省し、農業や畜産分野の法律と税制改正に取り組んだ。高齢化と共に衰退していく農業を改革し、将来にわたって豊かな食を確保することに、官僚としての使命を感じているようだ。2020年、農水省が一般職員を公募していた際に転職支援サイト「AMBI」のインタビューに答えている。
「私たちの孫やひ孫、次の世代の人たちが飢えることなく、おいしいものを食べることができる。日本の豊かな環境を次の世代に引き継いでいく、これは今生きている私たちの責任だと考えています。こうした国の『未来』を純粋に考えて働ける職業は、この仕事しかない。こうした志を持った多くの方々と、一緒に働けると嬉しいですね」
では、どんな人物が農水省では求められているのか。御厩敷氏は、上司の言うことを聞いて仕事をするだけでは駄目だと言う。
「多くの方が、私たちの政策を待っている。その中で上から命じられたことだけをこなすのではなく、現場の課題はなにか、解決するためにはどういう政策を打てばいいのか。職員には当事者として、能動的に考え、行動していくことが求められます」
御厩敷氏が主張する3日間のストーリー
御厩敷氏は2021年7月、内閣官房内閣総務官室に企画官として着任した。1年後、安倍晋三元首相が銃撃されて死亡し、国葬実施に向けて重要な役割を担う。御厩敷氏は、東京地裁に提出した報告書で、2022年7月12日から14日のことを次のように説明している。
【7月12日】
内閣官房と内閣府で、閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことが可能であることの根拠を整理したところ、法律問題が含まれることから、内閣法制局に意見を求めることにした。
「国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて」の案段階文書を私が作成し、西澤参事官と内閣府に共有した。
7月12日夕方、内閣官房内閣総務官室からは西澤参事官と私、内閣府大臣官房総務課からは中嶋護課長と担当者(名前は記憶にない)の計4名で内閣法制局を訪問した。
内閣法制局の乗越参事官と担当者(名前は記憶にない)に、案段階文書を示して説明した。具体的なやりとりについては記憶にないが、事実関係に関する細かい質問、確認がその場であったものの、修正や資料の作成に迫られるような指摘はなかった。時間は1時間程度、内閣法制局を訪問したのはこの時だけだ。
【7月13日と14日】
内閣法制局を訪問後、7月14日までの間に、内閣法制局の乗越参事官または担当者から、案段階文書について、文章の追加や語句の修正等の連絡が私宛てに電話であった。日時と回数は記憶にない。内閣官房と内閣府の見解の変更に至らない修正に関する連絡だ。
連絡の主な内容は、「国費をもって国の事務として行う葬儀を、将来にわたって一定の条件に該当する人について、必ず行うこととするものではないこと」の一文の追記だ。閣議決定を根拠に国の儀式である国葬儀を行うことが可能である理由として、原案になかった。
内閣官房と内閣府は、内閣法制局からの指摘を踏まえて案段階文書を修正した。具体的に作業を行なったのは私で、西澤参事官に修正内容の了解をとった。具体的な共有方法については記憶にない。
修正した案段階文書は、内閣官房の内閣総務官、西澤参事官、内閣法制局への訪問に同行した内閣府大臣官房総務課職員にメールで共有した。
内閣法制局には、私から乗越参事官又は担当者宛てに修正した案段階文書を送付した。CCに誰を入れていたかは記憶にない。
7月14日、内閣法制局の乗越参事官または担当者から内閣官房宛てに、修正した案段階文書について、意見がない旨の回答が電話であった。
案段階文書は、私が使っていたパソコンで作成し保存していた。案段階文書を廃棄した日付は記憶にないが、私は保存する必要のない文書は定期的に紙媒体・電子媒体を問わず整理している。内閣法制局との調整が終了し、「国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて」を保存したことから、案段階文書の保存の必要はなくなり、他の不要なメールと併せて廃棄した。
解説:岸田首相の「しっかり調整した」証拠を隠滅したに等しい
御厩敷氏は「国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて」の案段階文書を作成した。内閣法制局からの指摘で、「国費をもって国の事務として行う葬儀を、将来にわたって一定の条件に該当する人について、必ず行うこととするものではないこと」の一文を追記したのも、御厩敷氏だという。
だが御厩敷氏は、内閣官房の企画官であり「現場担当者」に過ぎない。案段階文書の作成や修正過程では、逐一、内閣官房の幹部たちに報告し、指示を受けたはずだ。
Tansaが入手した国葬実施に関する内閣官房の決裁者一覧によると、御厩敷氏の上には、西澤参事官を含め8人の上司がいる。代理を含めれば13人だ。
内閣総理大臣・岸田文雄(代決 総理室・白倉純)
内閣官房長官・松野博一(代理 官房長官室・南順子)
内閣官房副長官・木原誠二(代理 衆・官房副長官室・萩原玲子)
内閣官房副長官・磯崎仁彦(代理 参・官房副長官室・弘田英規)
内閣官房副長官・栗生俊一(代理 事務・官房副長官室・成田洋基)
内閣総務官・松田浩樹
内閣審議官・黒田秀郎
内閣参事官・西澤能之
企画官・御厩敷寛
ところが御厩敷氏は、案段階文書の作成や修正に関して送受信したメールを廃棄したと主張する。岸田首相は国葬の実施を表明する際に「内閣法制局ともしっかり調整した」と明言したが、その証拠を「隠滅した」と言っているに等しい。
<お知らせ>8月21日、24日は「国葬文書隠蔽裁判」証人尋問
安倍晋三元首相の国葬に関する文書開示を求め、Tansaが国を提訴した「国葬文書隠蔽裁判」で、8月21日と24日、国葬実施を協議した官僚4人への証人尋問があります。
〈国葬文書隠蔽裁判 証人尋問〉
法廷:東京地裁第103号(大法廷、約100席)
▽8月21日 開廷は午前10時15分
①午前10時20分~11時35分ごろ
御厩敷寛
内閣官房内閣総務官室企画官(当時)、現・水産庁漁政部漁業保険管理官
国が20分、Tansaが45分の予定
②午後1時30分~2時45分ごろ
西澤能之
内閣官房内閣総務官室内閣参事官(当時)、現・総務省行政管理局企画調整課長
国が20分、Tansaが45分の予定
③午後3時15分~4時ごろ
中嶋護
内閣府大臣官房総務課長(当時)、現・内閣府大臣官房審議官(沖縄政策及び沖縄科学技術大学院大学担当)
国が20分、Tansaが15分の予定
▽8月24日 開廷は午後1時25分
④午後1時30分~2時40分ごろ
乗越徹哉
内閣法制局参事官(当時)、現・内閣官房内閣参事官
国が20分、Tansaが40分の予定
ぜひ傍聴にお越しください。
24日の証人尋問終了後には、報告イベントを開く予定です。
〈裁判報告イベント「国葬文書隠蔽裁判 証人尋問 官僚たちは何を語ったか」〉
日時:8月24日(月)午後4時30分~6時
会場:TIME SHARING 銀座三丁目ビルディング5F
〒104-0061 東京都中央区銀座3丁目8-13 銀座三丁目ビルディング5階
東京メトロ丸の内線「銀座」駅A13番出口より徒歩3分
定員:90名
参加費:無料
Tansaと弁護団が、2日間にわたる証人尋問の内容や、尋問を終えての感想、今後の展望などをお話しし、みなさんからの質問にもお答えします。
報告イベントのみのご参加も可能ですので、ぜひお誘いあわせの上、足をお運びください。
また本イベントはYouTubeでのオンライン配信を予定しています。Tansaの公式YouTubeチャンネルより、ぜひご参加ください。リアルタイムでご参加できない方も、アーカイブからご覧いただけます。
配信:Tansa公式YouTubeチャンネル
その他:アーカイブ化あり、申込不要、参加無料
これまでの裁判の報告は「記録のない国」シリーズ一覧から記事をご覧ください。
これまでの訴訟の資料などは公共訴訟プラットフォーム「CALL4」のページで公開しています。
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