記録のない国

国葬の実施前に、記録文書を廃棄? 国葬事務局が置かれた内閣府の責任者/中嶋護・内閣府総務課長【国葬文書隠蔽裁判・証人尋問 直前特集③】

2026年08月19日 14時21分  渡辺周

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中嶋護氏(中央)=沖縄県糸満市のホームページから

「国葬文書隠蔽裁判」証人尋問の直前特集3回目は、中嶋護氏。2022年7月12日から14日の内閣法制局と内閣官房・内閣府との3者協議に、内閣府の責任者として参加した。当時は内閣府大臣官房 総務課長だった。

内閣府大臣官房は「故安倍晋三国葬儀事務局」を担った。国葬に関する対外的な発信や、国葬実施後の有識者への意見聴取を仕切った。

ところが中嶋氏は、7月12日からの3者協議に関する文書を、国葬が実施された9月27日以前に捨てたという。事務局の責任者として、あり得ない行為だ。

中嶋氏が主張する3日間のストーリー

中嶋氏は1995年に内閣府の前身の総理府に入省した。

東日本大震災後の復興庁の参事官や、北方領土問題に取り組む北方対策本部の参事官などを歴任し、今は沖縄政策担当の官房審議官を務めている。国の重大政策を担ってきた官僚だ。

国葬を閣議決定を根拠に実施できるかを検討する3者協議の時は、内閣府大臣官房 総務課長。内閣府大臣官房は、国葬の事務局を担うことになる。中嶋氏が主張する3日間の協議はどのようなものだったのか。協議で発生した文書についてはどのように取り扱ったのか。中嶋氏は東京地裁に提出した報告書で、2022年7月12日から14日のことを次のように説明している。

【7月12日】

閣議決定を根拠として国の儀式である国葬儀を行うことが可能であることについて、その内容に法律問題が含まれることから、内閣法制局に意見を聴く必要があるとの連絡が、7月12日に内閣官房からあった。同日、内閣官房と内閣府の両者で内閣法制局を訪問することになったと記憶している。

 

内閣法制局に持ち込んだ「国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて」の案段階文書は、内閣官房が作成し内閣府に共有された。内閣府として異議のない内容で、内閣府から特段の修正等の意見は出なかったと記憶している。

 

安倍元総理の葬儀のあり方への対応は、初期の段階では、内閣府大臣官房総務課内で私と田原太郎課長補佐以外は関与していなかったと記憶している。内閣官房から共有された案段階文書が、電子メールで送付されたのか、田原課長補佐からプリントアウトされて持ち込まれたのか等については、記憶が定かではない。本件の対応を含め、極めて多岐にわたる業務をこなす状況にあった。

 

内閣官房内閣総務官室からは西澤能之参事官と御厩敷寛企画官、内閣府大臣官房からは私と田原太郎課長補佐の計4名で、内閣法制局第一部を訪れた。内閣法制局の対応者は乗越参事官であり、他に1名の担当者(氏名は記憶していない)が陪席していたように記憶している。

 

案段階文書に基づき、内閣官房と内閣府の考え方について当方から説明したところ、その場で内閣法制局から具体的な指摘はなく、内閣法制局が案件を一旦預かる形になったと記憶している。訪問の時刻は正確には記憶していないが、すでに外が暗くなった時間帯だった。それほど長時間にわたらず比較的あっさりと終了したという印象がある。

 

【7月13日と14日】

その後、内閣府が内閣法制局と直接やり取りすることはなかった。

 

7月14日、案段階文書に内閣法制局の修正指示を反映した文書「国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて」に関し、内閣法制局から了解を得られたと内閣官房から連絡があった。内閣府の事務次官と、大臣官房長に内閣法制局の了解が得られた旨を報告したと記憶している。

 

案段階文書と、修正後に内閣法制局の了解を得た確定文書では、本質的な部分で異なるところはなかったと認識している。本質的な部分とは、閣議決定を根拠に葬儀を執行することが可能であるとの見解のことだ。

 

このため、確定文書は行政文書として保存したが、案段階文書は「意思決定の途中段階で作成したもので、当該意思決定に与える影響はないものとして、長期の保存を要しないと判断される文書」と位置付けることになったと認識している。

 

私自身が一時的に所持した案段階文書をいつ廃棄したかは記憶していない。ただ私は、これまでも保存の必要がなくなった紙文書は速やかにシュレッダーにかけるなどして処分しており、案段階文書についても同様に処理したものと思う。

 

日々膨大な量が蓄積されるメールについても、一定期間ごとに消去している。

解説:2カ月半以内に事務局が「文書やメールを廃棄」はあり得ない

中嶋氏は、案段階文書は「速やかに」廃棄し、メールは「一定期間ごとに」消去すると主張している。

では「速やかに」とはいつで、「一定期間」とは具体的にどれくらいの期間なのだろうか。

Tansaは2022年9月26日、内閣府と内閣官房に対し、「国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて、令和4年7月12日〜14日に内閣法制局とやりとりした内容を記録した文書一切」を開示請求した。結果は「文書不存在」だったから、遅くとも9月26日の時点で中嶋氏は、案段階文書もメールも処分したことになる。

だが内閣法制局との協議が終わったのは、7月14日。2カ月半以内で文書もメールも捨てることがあるだろうか。

最も重要な点は国葬が開催されたのは、9月27日であるということだ。事務局を担った内閣府大臣官房の総務課長が、国葬の前にすでに文書やメールを廃棄するなどあり得ない。

国葬に関する世論は、反対の声の方が多かったから、事後に検証を迫られることも予想できたはずだ。実際、岸田文雄政権は国葬の翌月の10月から12月にかけて、憲法、行政法、外交など各分野の有識者20〜30人をヒアリングした。この時に事務局として仕切ったのも、内閣府の大臣官房だ。有識者たちは、岸田首相が国葬実施の拠り所とした内閣法制局との協議記録なしで、どうやって意見を述べられるだろう。

中嶋氏は、東日本大震災からの復興政策や北方領土問題、沖縄政策を担ってきた官僚だ。国葬の前に文書やメールを廃棄するという迂闊なことを、するわけがない。

<お知らせ>8月21日、24日は「国葬文書隠蔽裁判」証人尋問

安倍晋三元首相の国葬に関する文書開示を求め、Tansaが国を提訴した「国葬文書隠蔽裁判」で、8月21日と24日、国葬実施を協議した官僚4人への証人尋問があります。

〈国葬文書隠蔽裁判 証人尋問〉

 

法廷:東京地裁第103号(大法廷、約100席)

 

▽8月21日 開廷は午前10時15分

①午前10時20分~11時35分ごろ
御厩敷寛
内閣官房内閣総務官室企画官(当時)、現・水産庁漁政部漁業保険管理官
国が20分、Tansaが45分の予定

 

②午後1時30分~2時45分ごろ
西澤能之
内閣官房内閣総務官室内閣参事官(当時)、現・総務省行政管理局企画調整課長
国が20分、Tansaが45分の予定

 

③午後3時15分~4時ごろ
中嶋護
内閣府大臣官房総務課長(当時)、現・内閣府大臣官房審議官(沖縄政策及び沖縄科学技術大学院大学担当)
国が20分、Tansaが15分の予定

 

▽8月24日 開廷は午後1時25分

④午後1時30分~2時40分ごろ
乗越徹哉
内閣法制局参事官(当時)、現・内閣官房内閣参事官
国が20分、Tansaが40分の予定

ぜひ傍聴にお越しください。

24日の証人尋問終了後には、報告イベントを開く予定です。

〈裁判報告イベント「国葬文書隠蔽裁判 証人尋問 官僚たちは何を語ったか」〉

 

日時:8月24日(月)午後4時30分~6時
会場:TIME SHARING 銀座三丁目ビルディング5F
〒104-0061 東京都中央区銀座3丁目8-13 銀座三丁目ビルディング5階
東京メトロ丸の内線「銀座」駅A13番出口より徒歩3分
定員:90名
参加費:無料

Tansaと弁護団が、2日間にわたる証人尋問の内容や、尋問を終えての感想、今後の展望などをお話しし、みなさんからの質問にもお答えします。

報告イベントのみのご参加も可能ですので、ぜひお誘いあわせの上、足をお運びください。

また本イベントはYouTubeでのオンライン配信を予定しています。Tansaの公式YouTubeチャンネルより、ぜひご参加ください。リアルタイムでご参加できない方も、アーカイブからご覧いただけます。

配信:Tansa公式YouTubeチャンネル
その他:アーカイブ化あり、申込不要、参加無料

これまでの裁判の報告は「記録のない国」シリーズ一覧から記事をご覧ください。

これまでの訴訟の資料などは公共訴訟プラットフォーム「CALL4」のページで公開しています。

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