自治体による地方創生臨時交付金の無駄遣いを後押ししたのは、交付金の決定権を持つ内閣府である。
2020年春、地方創生推進事務局の村上敬亮審議官は記者会見で、交付金について次のように語った。
「コロナ対策であればまったく制限はない」
「計画書はぶっちゃけ大雑把でいい」
「細かく審査しないで数千万や1億を使うことになるが、自治体を信じている」
その結果、コロナ対策や地方創生と無関係な事業が横行した。(Tansaが報じた無駄遣いワースト100事業はこちら)
こうした状況を、内閣府は認識しているのだろうか。知っているとしたら、どのような対策をとっているのだろうか。
永田町の合同庁舎にある、地方創生推進事務局を訪れた。参事官補佐の畑裕幸氏と上坂宗憲氏が2名で取材に応じた。
千代田区の青山通り沿いの永田町合同庁舎入り口には、事務局の看板が掲げられていた=2022年2月8日撮影
事業計画まともにチェックせず
内閣府は、自治体から上がって来る事業計画書をチェックしていなかった。1700以上の自治体から提出された計画は、2020年度分だけでも約8万件にのぼる。人手が少なく、それらを確認することは「正直、そこまでできない」という。
そもそも内閣府は厳格な審査を行うつもりはなかった。審査を厳格に行えば時間がかかる。今すぐ支援が必要な自治体への給付が遅れるというのが、内閣府の言い分だ。
自治体がコロナ対策や地方創生に絡めて事業計画を提出すれば、内閣府は「基本的に認めざるを得なかった」という。
これまでに計画を取り下げたり、再提出するように伝えたりしたのは、自治体自身がコロナや地方創生との関連を説明できない事業だ。
内閣府「現金ばらまくのはさすがに・・・」
内閣府が杜撰な審査で事業を認めた結果、地方創生臨時交付金の無駄遣いに走る自治体が続出した。
2021年2月2日、内閣府は各自治体宛に事務連絡を送付した。その中で、「特定の事業者に支援をする場合には詳細な内容を提出すること」や、「現金の一律給付は適切な範囲に限定して支給すること」を、自治体に伝えた。
畑氏はTansaの取材にこう話す。
「市民全員に現金をばらまくというようなものはさすがに…。言い方は悪いが、(自治体が)何も考えていないということになりかねない」
しかしこうなった一因は、交付金の使途をチェックせずに「お墨付き」を与えた内閣府にあるのではないか。
「この臨時交付金自体は地方が単独で使えるものです。コロナとの関連などに関する説明責任は地方公共団体にあると認識している」。(畑氏)
他方で、地方自治体の職員への取材では、交付金の無駄遣いについて問うと「国からは特に何も言われていない」と答えるところが複数あった。
巨額の交付金をめぐって、国も地方も責任を押し付けあっていた。
=つづく
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