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第1期ベーシックコース受講生の声

Tansa School 第1期ベーシックコースでは44人が受講しました。多くは現状を打破してジャーナリストとして飛躍したい若者たち。寄せられた感想を紹介します。

國崎万智さん「ノウハウの言語化でモヤモヤ解消」「情報公開請求マスターで東京23区から引き出した校則の理不尽」

西日本新聞で6年間記者をして退社後、今は東京のネットメディアで記者をしています。

新聞記者の時は、熊本支局で県警、市政、県政を担当して本社ではくらし文化部に配属されました。先輩記者のやり方を見様見真似で学ぶことが多く、うまくいく時もあったけど、うまくいかない時もあって「この差はなんだろう」とモヤモヤした感じが残りました。

転職したネットメディアでは、特定の担当はなく自由に取材テーマを選べます。自分にしかできない調査報道をしたいという思いはあるのですが、調査報道のノウハウを会社内で修得する機会は不十分です。自分1人では無理かなと思っていました。

一方で自分が記者になったのは、過酷な犠牲を強いられながら、誰にも知られないまま、なかったことにされる人たちがいるのが悔しいという思いがあるからです。誰かが報じないと埋もれる事実を報じたいんです。

そんなもどかしい思いを抱えている時に、Tansa Schoolを知りました。今の自分にまさに必要だなと思い、受講を決めました。

Tansa Schoolでは、授業のエッセンスが書かれた「Tipsシート」が毎回アップされます。授業の動画を視聴しながら、そのシートにメモを書き込んで修得していきました。

渡辺周さんが講師のスキル編では、ネタの探し方からインタビューの手法、記事の書き方までノウハウが言語化されていて、新聞社時代に感じた「モヤモヤ感」が解消されました。

自己流でしていた情報公開は一から教えてもらえ、早速自分の取材で使いました。下着の色を決めるなど理不尽な中学の校則があることを知り、「こんな校則が一体どれくらい蔓延しているのか」を調べるため、東京の23区の教育委員会に情報公開をかけたんです。すると、校則で下着・肌着の色と柄を決めている区立中学が、全体の約4割にあたる158校あることが分かりました。

マインドセット編では、「何を目指して取材をしているのか」ということを講師の辻和洋さんと双方向のやり取りで深めることができました。原点を確認することで、この仕事をやっていくメンタル的な支えができたと思っています。

渡辺真希子さんが講師のオープンデータ編では、自分が知らないデータベースや情報入手法が分かり、取材の幅が広がりました。アメリカの情報文書の入手は今後ぜひ使っていきたいです。

ゲスト講師では、依光隆明さんとマーティン・ファクラーさんのお話が印象に残っています。

依光さんは、原発事故後の朝日新聞での連載「プロメテウスの罠」をどうやって紡いでいたのかをお話してくれたのですが、登場人物を実名で書く重要性についてはハッとしました。私はこれまで、実名で書くための努力を怠ってきたのではと気づかされました。

ファクラーさんのお話では、ジャーナリスト同士が連携する必要性を強調されていたのが心に響きました。日本ではどうしても会社単位で記者が活動するので、協力し合う文化が根づけばいいなと思っています。

社会に知られていない問題を報じて社会を変えたい、でも方法がわからないし仲間もいないと悩んでいる人には、Tansa Schoolの一員になってほしいですね。

20代新聞記者「記者人生のターニングポイントに」「講座ヒントに体育館のバスケットゴール落下時事故でスクープ」

新聞社の記者です。受講当時は3年目で、自治体の行政担当でした。入社以降、日頃から探査報道をしたいとは思ってはいたものの、日々の紙面を埋め、発表ものを他社より早く書くことに忙殺されていました。何より、探査報道のやり方が分からない。私が働いていた環境では記者教育が体系化されておらず、「分からないことがあったら」その都度先輩に聞く場合がほとんどで、「何から手をつけていいか分からない」ときに頼れる人はいませんでした。そんなときに知人の勧めでベーシック講座を受けることに決めました。

探査報道の実用的なノウハウを学ぶのが目的でしたが、マインドセット編で大切な気付きを得ました。3回目の講座で日本新聞協会の新聞倫理綱領を読み、「プロのジャーナリストとして国民のため、社会のために記事を書かなければならない」という考えにはっとしました。スクープ欲しさや知的欲求を満たすために記事を書いていた自分が恥ずかしくなりました。世の中を良くするために記事を書く。今振り返ると、仕事のモチベーションが変わったことは私の記者人生で大きなターニングポイントだったと思います。

スキル編は「まさにこういうことが知りたかった」という内容でした。私が一番知りたかった、端緒の取り方から普段の取材先への対応、情報開示請求のノウハウは書類の書き方だけでなく情報を不足なく得るための注意点も教えてもらいました。ベテランの新聞記者の経験則に基づいたスキルなので説得力がありました。

オープンデータ編で教えてもらった行政文書の検索サイトや米国の学術情報サイトは実際に探査報道を始めてから重宝しています。ネット社会の今、情報は思ったよりネットで得ることができます。サイトの存在を知っていれば情報収集の効率は大幅に上がることに気付きました。

約半年間の受講後、スキル編で学んだことを生かし、自治体が組む予算事業を抜くのではなく「何にお金を使うのか」に目を向けてみました。ある予算で、体育館のバスケットゴールが落下して生徒がけがした事故をきっかけに、自治体が約17億円をかけて全体育館の8割のゴールを修理・交換する費用を組みました。予算全体の半分を占めるあまりの金額に違和感を抱き調べてみると、事故が起きたゴールと8割のゴールは業者が定める点検を何十年もやっていなかったことが分かりました。さらに近隣の複数の自治体でも同様に業者点検をしていませんでした。予算書の数字を深く調べたこと、同じ事故を二度と起こさせないという気持ちがあったこと。講座での学びが生かされた最初の経験になりました。

受講後アンケートから

その他にも受講後のアンケートでは以下のような声が寄せられました。

「同様の内容をジャーナリズム大学院に留学して学ぼうとしたらとんでもない金額がかかります。これをオンラインで学べたことで積年の思いが少しは解消できました」

「取材手法に正解はなく、個々が実践の中で確立するものだとは思いますが、スキル編のような体系化された知識は取材技術のベースとして必要であると感じました。講座で得た知識を必ず現場で生かし、字にします」

「報道倫理を改めて勉強でき、また自分では収集できない海外事情を学ぶことができた」

「さまざまなオープンデータを教えていただきありがとうございました。 使えそうなデータベースはブックマークに登録して必要に応じて使っていきます。 特に論文や研究者検索は即使えそうです」

「取材のスキルもさることながら、ジャーナリズムとは、を問い続け、確かめ続けて足場を固めることが良質なコンテンツを担保すると改めて感じた。指摘の妥当性はともかく、週刊文春の「新聞不信」、週刊金曜日など、メディアのあり方を論じ、提言する媒体は多い。こうした記事を題材に、記者自身がどう考えるのか、なぜそう考えるのか、互いに語り、考える場があればぜひ参加したいと思った。まさに『学校』のように、自らへの問いかけと共有の機会を日常的、習慣的に確保する必要があると感じる」

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