誰が私を拡散したのか

【アルバムコレクション運営者を追う】「だってそういうシステムが欲しいっていうんだから」(29)

2024年06月27日 16時35分  辻麻梨子

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(イラスト:qnel)

アルバムコレクションの運営を、一人で行なっていたという新田啓介。私たちは2023年12月28日、マレーシアから一時帰国した新田に東京・渋谷の喫茶店で取材した。

新田はアプリに性的画像を誘引する意図はなかったと否定した

だが私たちはアルバムコレクションの前身のアプリで、児童ポルノの取引を促すためのインターネット掲示板を見つけている。アプリと掲示板には、同じ運営元である可能性が高いことを示すデータが見つかった。それでも新田は「わからない」と誤魔化した。

アルバムコレクションで取引される画像は、違法画像や性的画像が占めた。新田は次第に、加害者の情報を警察に提供するなどの対応に「終わりがない」と感じ、アルバムコレクションを譲渡することに決めたという。

譲渡先は米国ハワイの「Eclipse Incorporated」だ。どんな経緯があったのか。

「システム会社」を仲介して譲渡?

Eclipse Incorporated(以下イクリプス社)は、アルバムコレクションのウェブサイトなどで運営会社を名乗っていた。期間は2020年ごろから、2024年1月の運営終了まで。代表者には、「William Leal」(以下ウィリアム・リール)という人物の名前が記されていた。

だが、ウェブサイトやSNSなど、イクリプス社が自社で発信している情報はほとんどなかった。新田はどのようにしてイクリプス社にたどり着いたのか。

「システム会社の方から紹介していただいた」

「システム会社」とは、新田がアルバムコレクション運営業務の一部を委託していた会社を指す。システムの改修など、技術的な対応を行なっていたという。

新田が経緯を説明する。()内はTansaが補足。

「私としては(アルバムコレクションが)対応しきれないというふうになって、もうこのサービスをやめたいとシステム会社に相談したんですね」

「そしたらそのシステム会社の方が対策、いわゆる違法なユーザーを排除していくなり、利用を中止させるとか、そのような機能を追加して運営していきたいということだったので。それで譲渡しました」

解決策がないまま

つまり犯罪行為への対応が手に負えなくなった新田に対し、システム会社が運営を続けたいと主張したということだ。その際、違法な取引が行われないようアプリのシステムを改善すると約束した。

ただし、そのシステム会社がアルバムコレクションの運営会社になったわけではない。新しい運営会社はイクリプス社で、その代表がウィリアム・リールという人物だった。

しかし、改善を約束しアプリを譲渡したと新田が主張する2020年以降も、アルバムコレクションでの犯罪行為や性的画像の拡散は続いた。システム会社はなぜ、違法行為を防げると新田に告げたのか。

編集長の渡辺が尋ねた。

「新田さんに対し、システム会社はどのように機能を変えれば犯罪が防げると提案してきたんですか。なぜ改善できると判断したんでしょうか」

「それを私が知ることはないんじゃないでしょうか」

「いやいや、新田さんが相談されたわけですから。システムで防げるという回答はあったんですか」

「いや特に…。その…システムでソリューションは出ていないですね」

「ビッグモーターにしても同じこと」

新田は、アルバムコレクションを改善の見通しが立たないままイクリプス社に譲渡した。自身でも手に負えないほど、犯罪行為が常態化していたにもかかわらずだ。

譲渡先のイクリプス社の素性はわかっていたのだろうか。もし犯罪行為に対処しない会社にアルバムコレクションを渡せば、ますます被害者が増えることは想像に難くない。ユーザーに性的画像を投稿するよう誘導し、利益を上げる可能性すらある。

渡辺は、社長のウィリアム・リールはどんな人物かと尋ねた。

「私は知らないですよ、あまり」

では仲介したシステム会社がすべてを仕切り、よく知りもしない相手に売ったのか。新田は言った。

「うーん、まあそういうことになるんじゃないでしょうか」

「だってそういうシステムが欲しいっていうんだから」

犯罪対策もできないまま、子どもを含む多くの被害者を出している事業を譲渡するのは無責任ではないか。そう問うと新田は、中古車販売会社のビッグモーターを引き合いに出した。保険金の不正請求問題を起こした後、伊藤忠商事が買収した。

「ビッグモーターにしても、あれはもう売却していますよね。別に(問題が)綺麗になってから売ったわけじゃない」

「(ビッグモーターのケースと)同じことじゃないですか」

「面白おかしく書かれるのは…」

イクリプスのことは知らないと言う新田。だが、社長のリールに一度会ったことがあることは認めた。アルバムコレクションの譲渡の話し合い時ではなかったという。リールとは日本語で会話した。

何を話したのか。新田に聞くが、「別に何も」「会ったのはたまたま」とはっきりと答えない。

新田はあいまいな返答を続けながら、切り出した。

「私が今お話ししたことって、無許可で記事にすると言われたと思うんですけど。なので、言わないことになりますから」

「私は面白おかしく、そういう記事を書かれるのが…」

渡辺が反論した。

「新田さんも弁護士を通じて送ってきた文書で、アルバムコレクションの被害を止めたいと書いておられますよね」

「新田さんがイクリプス社のリールさんのことを、アルバムコレクションを責任を持って運営する人物であるかしっかり見極めたのか。それを知る必要があるんです」

だが新田は「言う必要がない」と主張し続けた。

アルバムコレクションをイクリプス社に譲渡した経緯や金額、リールや譲渡を仲介したシステム会社の詳細は最後まで語らなかった。

「イクリプス社の日本人」と連絡

アルバムコレクションの譲渡を受けたイクリプス社と社長のリールを、直接取材するしかない。

渡辺は取材の終盤、新田にこう頼んだ。

「やはりイクリプス社のリールさん、それを仲介した日本のシステム会社に対して、TansaとNHKから取材を受けているからリールさんとシステム会社も取材に応じて欲しい、と伝えていただけませんか」

私たちはこれまで、アルバムコレクションのウェブサイトに記載されたメールアドレスに宛てて何度も質問状を送付してきた。中身のある回答は一切なかった。運営に関わってきた新田と高浜憲一を宛名にして事実誤認がないか尋ねたときも、アルバムコレクション側は否定しなかった。

新田は「それで言えば、イクリプスには話はしてありまして」と言う。

「こういう状況になっていて、自分たちはもう(アルバムコレクションを)渡しているものだから現状がわかり得ない。直接連絡するように(Tansa側に)お伝えしますよ、とはもう言っていますから」

連絡の相手は、リールか。

「いや、別の方ですね」

「ただ彼が実際に社員かどうかちょっとわからないですけども。社員証を見たこともないし」

相手は日本人で、アルバムコレクションのサポート窓口を担当しているらしい。新田は「実際には経営しているのか、何をしているのかわからない」が、新田とイクリプス側とのやりとりはその人物を通じて行なっているという。

私たちへの取材対応は、その人物が引き受けるはずだと新田は言った。だが新田はこの人物の名前と連絡先も明かさなかった。

ハワイへ

新田を取材した3日後の2023年12月31日、アルバムコレクションがウェブサイト上で「サービス終了」を発表した。同日で新規会員登録や画像のアップロードを終了。翌年1月31日で、すべての機能を終了させた。

私たちは運営終了に合わせ、アルバムコレクションに再度質問状を送付した。今回は宛先を社長のウィリアム・リールと、「⽇本国内ご担当者様」とした。新田がイクリプス社内の日本人に、Tansaの取材について伝えたと言っていたからだ。

質問状では新田と高浜への取材結果を踏まえ、運営責任者の身元を明かすよう求めた。アルバムコレクション終了後に、被害者への謝罪や賠償を行なうかなども尋ねた。

アルバムコレクションからは、以下の回答がメールで届いた。

ご連絡を頂きました内容について回答申し上げます。

 

高浜憲一氏、新田啓介氏については弊社サービスに関して一切関係ございません。

 

また、サービスの運営に関しては特定商取引に基づく表記の通りです。

 

アルバムコレクションは写真や動画などの個人間ファイル送受信サービスであり、利用規約にも記載のとおり「猥褻画像、動画を含む内容(イラストや絵画等も含む)」の送受信について禁止しております。

 

一部ユーザーによる利用規約に違反していると思われるファイルの送受信が行われた通報があった際には即刻削除対応や利用禁止処分などの対応を行っております。

 

また、「利用規約違反を報告」フォームより通報があったものについては自動的に削除となりお問い合わせフォームに通報があったものについてもすべて削除の対応をしております。

 

不適切な利用をするユーザーについては利用禁止処分・新規登録の禁止・IPアドレス規制などの対応をしております

 

公的機関より正式な照会があった場合については照会書に基づき情報開示をし回答をさせて頂いております

 

アルバムコレクションは2024年1月31日をもってサービス終了となります

この回答はこちらの質問に答えていない。私はもう一度連絡した。しかし返信はなかった。運営を終了したことで、幕引きを狙っているのだろう。

だが、アルバムコレクションが引き起こした被害は終わっていない。

アルバムコレクションで売買された被害者の画像は、場所を変えて取引され続ける。イクリプス社のように、身元を明かさず、被害も放置したまま違法な画像の取引の温床を維持するプラットフォームも後を絶たない。

さらに追及する必要がある。

私たちはNHKと共に、次の取材先を定めた。イクリプス社が本拠を置くハワイだ。

=つづく

敬称略

シリーズ「誰が私を拡散したのか」の取材費をサポートいただけませんか。巨大プラットフォームも加担して違法な性的画像や児童の性的虐待の動画などが売買・拡散され、多くの被害者を生み出しています。私たちは2022年から、被害を止めるための報道を続けています。海外出張などを含む徹底的な取材には、資金が必要です。こちらから、ご支援をお願いいたします。

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