人質司法 なぜ労組は狙われたのか

「この人が困っているなら一緒にやりたい」心に響いたリーダーの人となり/関生支部 筆頭副委員長・木村義樹さん<関西生コン事件・証言#6>

2025年03月26日 17時15分  渡辺周、中川七海

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京都地裁で湯川裕司委員長に無罪判決が出た際、川上宏裁判長に「ありがとうございました! 」と深々と頭を下げる人がいた。関生支部・筆頭副委員長の木村義樹さんだ。

チームには理念が必要だ。だがそれだけでは、実行力が伴わない。ましてや警察と検察が一体となり、関生支部に弾圧を仕掛けてきた。跳ね返すには並大抵の結束力では足らない。

証言集の6回目は、木村さんが関生支部を「情(じょう)」の面から語った。

脱退を勧める検事に「大きなお世話」

25歳の時に自分で5トンのミキサー車を買い、生コン会社の仕事をしていたんですが、会社が潰れたんです。その際に関生支部に加入しました。当時は労働組合という言葉は聞いたことがありましたが、何をするところなのか、全く分かっていませんでした。

2018年に大阪府警に逮捕されました。ストライキ中にもかかわらず生コンを出荷しようとする車を止めようとしたことが、威力業務妨害に問われました。警察官が20〜30人はいましたね。間違いなく向こうはその気で来ているというのを、肌で感じました。「東京から警察のお偉いさんが来ている」というのも、耳にしました。

検事による取り調べでは、「あなたたちは弾圧だとおっしゃるけれども、犯罪を犯しているから私たちは対応しているんでしょ。関生支部をもう辞めた方がいいのではないか」と言われましてね。私は「犯罪とは思っていない、関生支部を辞めたらどうかなんて大きなお世話、あなたに言われる筋合いはない」と返しました。

私が勤める会社には、関生支部の組合員が4人いたんです。しかし、私が逮捕されている間に次々と関生支部を辞めていって、私以外に残ったのは1人でした。最後の1人も、私の弁護士に「逮捕されている時に申し訳ないんだけれども、自分はもう続けられへん。そう木村さんに伝えてほしい」と伝言しました。

伝言を預かって面会に来た弁護士に、私は言いました。

「我慢せんでええ、組合抜けてもかまへんと木村が言っていたと伝えてくれ」

つらかったですけどね。会社からは圧力がかかるやろうし、その子にはちょっと耐えられへんやろうなと。「俺が帰るまで頑張れ」とは言えませんでした。無理せんでええと。

家族だけで息子の葬儀をしようとしたら

関生支部で活動を続けているのは、自分の賃金を上げようとかそういうことではなく、仲間のためであり、一番の決定打は湯川委員長です。「この人についていこう」というのが一番の思いです。

私が息子を亡くした時、家族だけで葬式をやろうとしたんですが、湯川委員長が関生支部のみんなに声をかけてくれて、かなりの人数で葬式に来てくれたことがありました。そういう湯川委員長の人間性を私は信頼しています。湯川委員長に借りがあるとか、そういうのは一つもないんですけど、この人が困っているなら、何とか一緒にやりたいという思いがあります。

裁判官には物事の本質を見ていただきたい。なぜこういうことが起きたのか、中身をじっくり吟味していただいて、きちっとした判決を出していただきたい。

自分が正しいと思うことに関しては、気持ちを曲げない。どんな苦難があっても乗り越えられる。社会を変える。私はそう思っています。

社会のみなさんには、「お互いに頑張っていきましょう」と伝えたいですね。

【取材者後記】闘いの渦中では必要な「情」/編集長 渡辺周

京都地裁で湯川委員長に無罪判決が出たとき、裁判官に向かって右側の傍聴席と左側とでは対照的だった。右側は主に関生支部の組合員や支持者。左側は関生支部に「被害を受けた」と主張してきた経営者たちだ。京都府警の捜査員もいた。

裁判の冒頭で「無罪」と告げられ、左側にいた経営者の一人は「なんでやねん」とボソリ。退廷した。他の経営者たちも次々に席を立って出て行く。法廷の左半分はスカスカになった。

この様子を目の当たりにし、経営者や警察と関生支部には決定的な違いが2つあると思った。

一つは、経営者や警察は「私利私欲」で動いているのに対して、関生支部の活動は理念が支えている。経営者は「金の切れ目は縁の切れ目」、警察は出世に響くと察知すれば熱を失っていくが、関生支部は「産業民主主義を達成する」という労働組合としての理念が原動力になっている。だから、もろくない。

もう一つが、関生支部には仲間を思う情があるということだ。

木村さんはインタビュー中、あまり喜怒哀楽を表さなかった。心の奥底に強固な意志を秘めつつ、淡々と語った。凄みがあった。

だが、ふと優しい目になった時があった。勾留中、同じ会社の組合員が関生支部を辞めたがっていると知った。その当時を振り返って言った時のことだ。

「会社から圧力がかかるやろうし、その子には耐えられへんやろうな。『無理せんでええと伝えてくれ』と面会に来た弁護士に言いました」

木村さんは情の人なんだなと思った。だからこそ、自分の息子の葬儀に、湯川委員長が関生支部の仲間を大勢連れてやって来た時、「この人のためなら」と決意する。

情を持ち出すのは、時代遅れだと思う人がいるかもしれない。だがそれは、闘いの渦中にいないから言えることではないか。

経営者が暴力団を使って関生支部を威迫する。警察と検察は暴力団を取り締まるどころか、関生支部を暴力団扱いして、組合員を次々と牢屋にぶち込む。憲法など無視だ。

そういう事態に直面すると、心身が削られていく。激しい闘いに身を投じていれば、情で結びつく仲間は必要だ。木村さんを取材して実感した。

 

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