
「つながろう! PFAS法規制にモノ申す全国ネット」によるオンライン署名=change.orgサイトより
PFAS汚染地に住む全国各地の女性8人が「つながろう! PFAS法規制にモノ申す全国ネット」を発足した。
2026年4月1日から、PFASの水道基準値が設けられる。
だが米国が4ng/Lに対して、日本は50ng/Lと緩い。胎児や幼い子どもへの影響が心配だ。全国ネット(仮称)は、「日本のPFAS水質基準を国際的な水準に近づけ、将来的には可能な限りゼロに近づけていくための見直しとロードマップの策定」を求めて、オンライン署名を立ち上げた。
集めた署名は、厚労省、環境省、農林水産省、国土交通省、子ども家庭庁に提出する予定だ。
「まずは米国基準と同様に」
署名は、北海道、東京、静岡、大阪、兵庫、岡山、沖縄に住む女性8人が呼びかけた。いずれの地域でも、PFAS関連企業や軍事基地などがもたらすPFAS汚染が起きている。
たとえば、大阪府摂津市では地下水から30,000ng/L(PFOA、2024年)、岡山県吉備中央町では水道水から1,400ng/L(PFOA、2023年)、沖縄市では湿地帯から3,600ng/L(PFOS、2025年)が検出されている。健康を考慮して政府が定める暫定指針値50ng/Lをはるかに上回る高濃度だ。
PFOA、PFOSは、1万種以上存在するPFASの中でも特に毒性が強い。国際的にもその危険性が認められている。発がん性や胎児・幼児への発達神経毒性、妊娠高血圧症をはじめとする、健康へのさまざまな悪影響が判明している。
妊娠高血圧症は、妊娠前は高血圧でなかった女性が、妊娠20週〜産後12週の間に高血圧になる症状で、PFOAが引き起こす代表的な疾患の一つだ。母親の出血や肝機能の悪化、胎児の発育不全などを引き起こし、最悪の場合は母子の死亡につながる。
環境中のPFASを水や食品を通して摂取すれば、自身だけでなく胎児や幼い子どもにも影響する。女性たちは2026年3月8日の国際女性デーに合わせて会を立ち上げ、署名活動を開始した。
署名を通して政府に求めるのは、次の3点だ。
・水道水の基準50ng/Lをゼロに近づけてください。まずはアメリカ基準の4ng/L以下と同様にしてください。
・PFASの汚染が強い地域、特に妊産婦を中心に、PFASの健康被害を調査・研究し、健康被害への補償をしてください。
・水道水だけじゃなく、水全般・土壌・農水作物の安全基準を早急に設け、公共の無料検査を実施してください。農業・漁業従事者の安全を守り、被害補償も行ってください。
「個人の努力だけでは防ぐことができません」
要望の中でも特に力を入れているのが、基準値を国際水準まで厳しくすることだ。
2026年4月1日、PFOAとPFOSが水道基準に加わる。2025年6月、石破政権下で決まった。
これまで、PFOA・PFOSは水道基準になく、濃度測定が義務付けられていなかった。また、暫定指針値の50ng/L以上が検出された場合の対応も、水道事業者に委ねられていた。
今回の基準化により、水道行政を担う自治体や水道事業者はPFOA・PFOS濃度の定期測定が義務付けられ、50ng/L以上が検出された場合は報告・改善が義務化される。
しかし、50ng/Lという規制値は、PFAS対策において不十分だ。
例えば米国では、バイデン前政権下で「PFAS戦略ロードマップ」を策定。国をあげたPFAS汚染対策が進められた。人々の健康を考慮した基準値として4ng/Lが制定された。
さらに、汚染地域の浄化や汚染者を特定し遡及責任を問うこともロードマップに盛り込まれた。
欧州などの諸外国でも、検出ゼロに向けた動きが加速している。
全国ネットは、こう訴える。
水道水のみを対象とした50ng/Lという緩い基準で、特に妊産婦や子どもたちの長期的な健康を守れるのか、何十年も飲み続ける水として安心できる水準なのか、全国各地から不安の声が上がっています。
目に見えない化学物質の汚染は、個人の努力だけでは防ぐことができません。
だからこそ、科学的知見に基づき、将来世代の健康を守る水質基準を整えることが重要です。
2歳の息子が全国平均70倍の値を検出、母の訴えは
呼びかけ人の一人、岡山県吉備中央町の上原京子さん(仮名)はこう述べる。
「2年半前に水道水汚染が発覚した時は、町内で署名集めを実施しました。今回も、お母さんの立場から何かしたいと思い、参加を決めました」
吉備中央町では2023年10月、水道水のPFOA汚染が発覚した。基準値の16〜28倍に当たる800〜1,400ng/LのPFOA混入水が、少なくとも3年間、水道水として供給されていた。
2023年11月、上原さんをはじめとする住民ら27人は、京都大学のPFAS研究チームのもとで血液検査を受けた。その結果、27人全員の高濃度が判明。27人の平均値は171.2ng/mL (中央値は162.6ng/mL)で、環境省が公表する全国平均2.2ng/mLの77倍に当たる。
上原さん自身も97.7ng/mLの高濃度だった。だが、上原さんが最も心配したのは、2歳(当時)の息子の健康だ。上原さんを上回る151.9ng/mLが検出された。全国平均の約70倍だ。
上原さんは言う。
「当時2歳だった息子は元々痩せ型でしたが、ここ2年半で急激に肥満体になり、小児科の医師からも指導を受けています。子どもの肥満は、PFASによる健康影響の一つですよね。単なる成長期なのか、PFASの影響かは分からないですが、こういう心配をすること自体がつらいです」
「基準が50ng/Lのままだと、日常的に摂取することで病気につながる可能性もある。PFASは身体に悪いものだと認識して、(諸外国と)足並みを揃えて厳しい値にしないといけないと思います」
全国ネットの呼びかけに賛同する人なら誰でも、オンライン上で署名することができる。
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