忘れられない出会いがあった。
昨年11月、Tansaは世界から約1500人の探査報道ジャーナリストが集まる国際会議に参加した。期間中はAIや紛争、気候変動など様々なテーマが議論される。互いに取材手法や知見を共有し、共同取材をするパートナーを探す場だ。
私は「女性ジャーナリストたちのつながりを作る」というイベントに参加した。参加者が8人ほどでグループを作り、それぞれが抱えている課題について話す。話を聞いた他の人たちは、アドバイスをする。
ドイツのジャーナリストは、汚職の取材中、男性の捜査官と2人きりで深夜まで酒を飲むような付き合いをしなければ、情報を得られないという取材の「常識」が苦痛だと話した。別のジャーナリストは、上司が「女性は嘘をつく」という先入観で被害者の証言を頑なに信用しないという。
私はデジタル上で拡散される性暴力について取材をしていると話し、被害映像に繰り返し触れる苦しさを共有した。
みんなが一通り話した後、口を開いたのがネパールで活動するディーパ・ダハルさんだった。
彼女はネパールのテレビ放送局やラジオ局などで働き、20年近くにわたって政府の汚職や詐欺事件を暴いてきた。
ネパールでは女性のジャーナリストが極めて少なく、差別を受けている。過去には、人権問題を報じて殺害された女性ジャーナリストもいる。ディーパさんも女性にはできない、と政治の取材から外されたり、会社の上司から性暴力を受けてきた。チャンスを奪われながらも諦めずにキャリアを築き、国際的な賞も受賞した。
「私は長年色々な闘いを経験してきたから、ここにいる女性たちの気持ちがよくわかる。私たちは支えあい、共に成長していくことができると信じています」と結ぶと、参加者からは自然と拍手が沸き起こった。
会場全体では、他にもこんな意見が交わされた。
「女性のジャーナリストは見た目で判断されることが多すぎる」
「取材の中で安全ではないと感じる場面があっても、周囲から理解されにくい」
「常に能力を証明することを求められ、努力をしてもいつも不十分だと感じてしまう」
課題も悩みも、多くが共通していた。司会者は「みなさんの抱えている問題は、決して小さなものではありません。大切なのは経験をシェアして、支え合うつながりを作ることです」と強調した。
その日の夜、私が会議場を歩いていると向こうから女性が駆け寄ってきた。
「あなたと話したかったの」ときつくハグをしてくれたのは、ディーパさんだった。私たちはワインを飲みながら、これまでの経験やそれぞれの国の状況を語った。「長く困難な道を歩んできたからこそ、あなたの中にも私と同じ強さがあるのがわかる」と彼女は言った。
遠く離れた場所にも、勇気を持って闘う女性ジャーナリストたちがいる。彼女たちは自分の困難な経験を、他のジャーナリストが前に進むための力に変えようともしていた。
ディーパさんの言葉が、今も私の胸に明かりを灯している。

ディーパさんとの記念撮影。連絡先を交換し、再会を誓った
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