
パネルディスカッションに登壇するニュースタパのメンバーたち=マレーシア・クアラルンプールで2025年11月21日、小川湖羽撮影
昨年11月、マレーシアで開催された世界探査ジャーナリズム会議(GIJC)に参加した。GIJCには、世界中から探査報道に取り組むジャーナリストたちが集まる。取材の知見を発表するパネルディスカッションや、食事会の場で、私も彼らと実際に話をすることができた。
驚いたのは、出会った多くのジャーナリストたちが弾圧を経験していたことだ。
例えば、インドネシアの出版社「テンポ」は、有力政治家が関与するオンライン賭博事件を報じた。すると記者に対して、耳を切り取られた豚の頭が送られてきた。同時期に、自社のニュースサイトはサイバー攻撃も受けた。
基調講演に登壇したのは、ノーベル平和賞を受賞したフィリピンのジャーナリスト、マリア・レッサさんだ。ロドリゴ・ドゥテルテ元大統領を批判し、何度も逮捕された経験がある。マリアさんは強く訴えた。
「権利がまだある今、闘うことです。なぜなら、権利は縮小され、後になって取り戻すことはほぼ不可能になるからです」
特に印象に残ったのが、韓国の独立報道機関「ニュースタパ」の編集長であるハン・サンジンさんだ。Tansaは創刊以前からタパと交流を続けており、今回のGIJCでも食事を共にした。
2023年9月14日、ソウルの中央地検特別捜査チームはタパの強制捜査に着手した。
タパはその前年の3月6日、ユン・ソンニョル前大統領の検事時代の不正を報じた。大統領選挙の3日前の報道だ。ソウル中央地検は、この報道が虚偽であり、ユン氏に対する名誉毀損だと判断した。
ニュースタパの事務所と、創設者のキム・ヨンジンさんや担当記者の自宅に捜査官が踏み込んできた。その1人がサンジンさんだった。タパのメンバーが登壇したパネルディスカッションで、当時の状況について話した。
「突然6人の検察官が家にやってきました。来ることは予想していましたが、驚きました。裁判所の許可を受けていないものまで、違法に押収されたのです。そのことを後から知り、さらに動揺しました」
当時ユン氏が所属していた与党「国民の力」のキム・ギヒョン代表は、タパの報道を「国家反逆の罪」「死刑に値する」とまで言った。
しかし、サンジンさんとタパは折れない。
「ジャーナリストとして最もしてはいけないのは、権力に屈服することだ」
「どんな政権であっても、きちんと仕事をしているかを監視することが、ニュースタパのミッションだ」
それはGIJCに参加するジャーナリストに共通の闘志だった。これがジャーナリストの「常識」なのか。私は気がついた。
私はサンジンさんと、勉強中の韓国語でさまざまな話をした。
韓国や日本のドラマが好きで、とくに恋愛ドラマをよく見るという。タパが受けた弾圧を記録したドキュメンタリー映画『非常戒厳前夜』では、弾圧を振り返り、涙してしまうサンジンさんのインタビューシーンがある。印象的な場面なだけに、会う人会う人に「あのシーンがよかった」と言われるのが、とても恥ずかしいと話していた。
来年韓国に留学する予定だと話すと、「いつでもニュースタパに、見学に来てくださいね」とも言ってくれた。気さくな人だ。
日本には、「絶対に権力に屈しない」と言えるジャーナリストがどれだけいるだろう。私はTansaで学び、自信を持ってそう言えるジャーナリストになりたい。

メルマガ登録