公害「PFOA」

PFOA処理水の濃度を公開せよ/全会一致で意見書/ダイキン視察でスマホまで禁じられた摂津市議団

2023年09月27日23時29分 中川七海

大阪府摂津市の全国一のPFOA汚染は、ダイキン工業淀川製作所が敷地外にPFOAを漏出させたことが原因だ。しかし、工場敷地内の地下水や、敷地外へ放出している水のPFOA濃度について、ダイキンは企業秘密を盾にTansaの取材にはもちろん、市民の代表である議会にも徹底して隠蔽してきた。

2023年9月27日、摂津市議会が動いた。工場敷地内の地下水、処理水、下水放流水等のPFOA濃度をダイキンに公開させるための意見書を全会一致で可決したのだ。ダイキンへの指導・監督権限がある大阪府が、ダイキンに公開を迫るよう求めた。

資料の全ページに公表阻止用スタンプ

この日の本会議で、共産、公明、大阪維新が意見書案「PFOA等についての敷地内濃度の公表を求める意見書」を共同で提出。議長を除く18人の議員全員が賛成し議決した。自民、無所属、ダイキン労組推薦市議のいる民主市民連合も含まれる。

普段は政策について互いに論争を繰り広げる各会派が、PFOA汚染に関しては全会一致で意見書を可決したのには、理由がある。ダイキンが、市民の代表である市議会を軽視する態度を取り続けてきたのだ。

例えば2023年6月8日のこと。摂津市議団は、2回目となるダイキン淀川製作所の視察を行った。1回目の視察は2021年12月。それから1年半の間に、国会やマスメディアでもダイキンによるPFOA汚染が取り上げられるようになったが、ダイキンの態度は相変わらずだった。

ダイキンは視察時の携帯電話の持ち込みを禁じ、議員たちは敷地内の撮影や録音ができなかった。

なぜ録音すらできないのかはすぐに分かった。ダイキンは全て口頭で説明したのだ。資料は配布せず、市議団側が事前に書面で提出していた29項目の質問にも口頭で回答した。

肝心のPFOA濃度についても伏せた。

これでは話にならないと、市議団は後日ダイキンに対し、PFOA濃度を含めた32項目の再質問を送付した。市議団への口頭説明の基になった資料の提出も求めた。

ダイキンから回答と資料が届いた。

PFOA濃度の公開についての回答。

「敷地内や排水のPFOA濃度については、企業間競争に影響する製造技術ノウハウ等の機密情報に関するものである為、詳細の開示は控えさせていただきます」

資料については、第三者への公表を固く禁じるという条件付きだった。

議員たちが驚いたのは、資料の全ページに、「摂津市議会民生常任委員会様提出用」とページを横断するように大きく印が押されていたことだ。

市民に選ばれた議員として、資料は市民に公表する必要がある。市民は第三者ではない。ダイキンによる汚染被害を受けている、まさに当事者だ。市議団は9月22日、資料公表の許可を得るため、再び申し入れを行った。

9月25日、ダイキンから公表を拒否する回答があった。「説明会」とは6月8日の視察を指す。

「説明会の際もお断りしましたように第三者への資料提供は認めることは出来ません」

地方自治法第99条に基づいた意見書

全会一致で可決された意見書では、市民から選ばれた議員として、まず市民の声を代弁した。

私たちの住む摂津市では、国や大阪府の調査によって地下水や水路から全国一高濃度のPFOAが検出され、市⺠に不安が広がっています。

その上で、敷地内の濃度の公表が必要な理由について、ダイキンが汚染対策として計画中の遮水壁設置の効果確認を挙げた。

敷地内に遮水壁を設け地下水の敷地外への流出を防止する計画ですが、遮水壁の効果確認のためにも敷地内濃度の開示は必須であります。

敷地内濃度の公表は「早急」とし、指導・監督権限のある大阪府がダイキンに公表を促すよう「強く要望します」と記した。

今回の意見書は、「地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができる」と規定した地方自治法第99条に基づいている。

大阪・摂津市のダイキン工業淀川製作所にたつ看板=2023年8月25日、中川七海撮影

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