
(イラスト:qnel)
マレーシア在住の新田啓介が、3つの画像共有アプリの運営を担ってきた。アプリは、「写真カプセル」「動画コンテナ」「アルバムコレクション」の順に変遷させた。新田自身、2014年9月から2020年3月にかけて、これらの運営を続けたことを認めている。
3つのアプリ全てで、違法画像を含む性的画像の拡散被害が多発した。
私と編集長の渡辺周は昨年12月、マレーシアから日本に一時帰国した新田に直接会って取材した。
新田はアプリを作り替えていった理由を、多発した違法行為を防ぎイメージを刷新するための策だったと主張する。ところが実際には、動画コンテナの終了時に次のサイトであるアルバムコレクションを案内。ユーザーを誘導した結果、性的画像の拡散はアルバムコレクションでも繰り返された。
新田はユーザーを誘導した理由について、こう言った。
「利用者が離れたとか、そういう問題はあったんでしょうかね」
結局、犯罪対策よりも金儲けを優先していたのではないか。
このことを裏付ける証拠があった。
「双方にメリット」の掲示板サイト
その証拠が、「写真カプセル合言葉データベース掲示板」だ。アプリの過去のデータを調べる中で見つけた。記録に残っている限り、2014年10月から2015年10月まで運営されていた。
サイトの説明には、こう書かれている。
「当サイト『写真カプセル 合言葉データベース掲示板』は、写真カプセルをアップロードする人にとっても、ダウンロードする人にとっても双方にメリットがある、ユーザー投稿型データベースサイトです。」
合言葉とは、画像のダウンロードに必要なパスワードのことを指す。
なぜこんなものが必要なのか。メリットとは何か。サイトでは次のように紹介している。
カプセル投稿者のメリット
当サイトに合言葉を掲載することで、合言葉自体の露出も増え宣伝効果が見込めます。
カプセルをダウンロードしたい人のメリット
定期的に当サイトのデータベースをチェックすることで、鍵なしダウンロード期間中に無料で優良カプセルをダウンロードすることができます。
つまり投稿者は、掲示板を自分の「商品」を不特定多数に広めるためのツールとして使うことができる。ダウンロードする側は、本来は有料の画像を、無料の期間中に入手できるということだ。
児童ポルノであふれ、有罪企業も活用
この掲示板は、矛盾したサービスだ。
写真カプセルは元々、家族や友人間での画像共有サービスを謳っていた。
ところが、掲示板では不特定多数に広め、金を払ってまでダウンロードしたい画像の投稿を誘導している。その結果、児童ポルノなどを示す合言葉が大量に投稿され、違法な性的画像や、児童ポルノが取引された。
私はこのことから、写真カプセルなど新田らが運営した一連のアプリが性的画像を儲けの柱としていたと考えた。
写真カプセルのライバルアプリ、「写真箱」も合言葉投稿用の掲示板サイトを立ち上げた。
運営者は2017年に児童ポルノ禁止法違反などの罪で、懲役2年6月、執行猶予4年、罰金400万円の有罪判決を受けた。裁判ではこの掲示板サイトについて、児童ポルノで収益を上げる写真カプセルを真似たと証言している。

2015年1月に掲示板に投稿されていた合言葉の一覧
IPアドレスが一致
新田に「写真カプセル 合言葉データベース掲示板」について質した。()内はTansaが補足。
「我々が運営したものではないもの(掲示板)があるのは、認識していました」
だがこちらがホワイトハッカーと調べたところ、写真カプセルのウェブサイトと掲示板サイトのIPアドレスやホスティングサービスの契約元が一致していた。写真カプセルの運営者である新田が、掲示板も立ち上げた可能性が高い。
私はその点を新田に問い詰めた。
「私たちは掲示板のIPアドレスを確認しています。それが写真カプセルの元のウェブサイトと一致しているんですよ」
新田は答えに窮した。
「あー、それが私になっていました?」
「わからないですね」
「思い当たるとしたら、前の運営者かなと思いますけど」
新田が写真カプセルの運営を始めたのは2014年9月。掲示板の過去のデータは、同年10月から始まっていた。時期も一致する。
だが新田はあいまいな答えを繰り返し、認めなかった。
「児童ポルノはよくないことです」
取材を通じて、私の目には、新田が性的画像拡散の被害をまるで気に留めない人物に映った。
違法画像の取引などを見つければ警察に情報提供したり、被害防止のために機能を変更したりしたと弁明はする。しかし被害者に対する申し訳なさや後悔を口にすることはない。
渡辺は新田の心情を確認する質問を投げかけた。
「新田さんは例えば通報があったりした時に、実際の被害の写真や動画は見たことがありますか」
「ああ、そうですね。はい」
「それを見てどう思われました?」
「よくないことだと思います」
「よくないのは当たり前ですけど、心が痛むとか、早く止めなきゃいけないという気持ちになるとか、なかったですか」
「うーん、まあこういうことがあってはいけないとは思います」
それ以上の答えは返ってこなかった。
犯罪の温床を譲渡
新田は5年半、写真カプセル、動画コンテナ、アルバムコレクションを実質一人で運営したという。どの段階でも性的画像の蔓延や被害を防ぐことができなかった。
アルバムコレクションは、2020年3月にハワイのEclipse Incorporated(以下イクリプス社)に譲渡したという。ユーザーの逮捕や警察への対応に「終わりがないと思った」からだ。だが2020年3月以降も、アルバムコレクションは犯罪の温床となり続けた。2024年1月の運営終了までずっとだ。
なぜ、犯罪の多発している事業であるアルバムコレクションを譲渡したのか。
渡辺が尋ねた。
「新田さんも被害を止めたいという気持ちがある。であればなぜ、アプリを取り下げなかったのか」
新田は答えた。
「うーん。でも一番悪いのは誰なんですか」
画像を投稿したユーザーが悪いと言いたいのだ。
だが新田が違法なユーザーに対応できないと感じた時点で運営をやめていれば、被害は止まったはずだ。
私たちはアルバムコレクションを譲渡したというハワイのイクリプス社についても、新田に詳しく尋ねた。新田は代表者であるWilliam Lealに一度会ったことがあるという。
=つづく
敬称略
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