人質司法 なぜ労組は狙われたのか

「子どもを施設に放り込むぞ」 布団で泣く息子の部屋も捜索、組合潰し狙う滋賀県警の卑怯/関生支部・元組合員<関西生コン事件・証言#7>

2025年04月02日 18時35分  渡辺周、中川七海

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警察と検察による関生支部への弾圧の特徴は、組織の壊滅を目的としていることにある。立件理由に挙げられている罪名は口実に過ぎない。そのことは、逮捕・勾留した組合員に対して、刑事や検事がしきりに組合脱退を迫っていることから明らかだ。

その手法は、卑劣だ。

組合を脱退すれば釈放すると持ちかける。組合員が勾留されている間に家族に電話をして本人を説得するよう持ちかけるーー。捜査権力を背景にした威迫だ。

最も卑怯なのが、組合員の子どもを引き合いに出して「この子が辛い目に遭ってもいいのか」と脅すことだ。

滋賀県警に逮捕された元組合員がインタビューに応じた。

「お待たせ」と家宅捜索に来た滋賀県警

関生組合員として活動していた当時、「そろそろ来るかもしれん」という雰囲気はありましたね。周りが逮捕されていってたんで。

ある朝、出勤しようとして家の扉をガラガラと開けた瞬間、表で警察が待ってたんです。滋賀県警です。「お待たせ」みたいな感じで言われましたね。

ガサ入れ(家宅捜索)が始まって、1時間半、2時間かかったんかな。自宅を捜索したところで何かあるわけではないと思うんですけど、嫌がらせみたいな感じでいじくり回されたというか。

中学2年、14歳の息子と2人暮らしだったんですけど、息子には前もって言ってたんです。「悪いことじゃなくて、ちゃんとした組合活動をやってる。弾圧って言っても分からんやろうけど、組合を潰しにきてて、もしかしたら連れて行かれるかもしれない」という話はしてたんですよね。

警察は子ども部屋も捜索するんです。組合の資料も何もないし、全然事件とか関係ない部屋なんですけどね。息子はずっと布団をかぶってました。でも顔を見たら、布団の中で泣いていました。

警察は「勾留が長期になるから、子どもは(児童養護)施設に入れるわ」とか言うてるんですよ。子どもにも聞こえてると思います。

子どもを狙うのは卑怯ですよね。「施設」という言葉を聞いたらみんなびっくりしますよ。

それに僕は施設出身やから、大体どんなところか分かってる。ルールは有って無いようなところで、暴力もすごいし。生徒だけの暴力じゃなくて、先生からやられたり。そんな経験がいっぱい頭に残ってる。夜はね、いろんなところからすすり泣きが聞こえるんですよ。寂しいんかな。枕をびっしょり濡らして。警察は僕のこういう経歴も知っていたはずです。

息子を施設に入れるのだけはやめてくれ、と。でも警察は聞こえるように、「(勾留が)長くなるから、もう施設に放り込むぞ」って。結局息子は、元妻に預けました。

滋賀県警「子どもに会わせてくれ」

逮捕後、取り調べ室に入ってきた警察官が「お待たせ。辞めるか? 」って。

その後も、組合脱退の説得が多かったですね。「組合辞めとったら逮捕せんで済んだのに」とか「組合に入ってなかったら在宅起訴で済んでたんや」みたいな。

「子どもの中学に、逮捕されたことを言うぞ」とかも言われましたね。面会に来た弁護士さんから聞いたんですけど、息子の面倒を見ている元妻に警察が電話をして、「子どもに会わせてくれ」って。「ほんで組合を辞めるように説得してくれ」みたいな感じで言っていたそうです。

1カ月ぐらいの勾留中は家族との面会を禁じられていて。息子に会えないことが一番心配でした。

「本当は関生支部に戻りたい」

だけど、組合の活動は大事なんですよ。僕は関生に20年ぐらい前に入りました。大資本相手でも、会社にまともにモノが言えるのはすごいと思います。僕が言えないことも全部、組合が交渉して、給料や休みの労働条件を上げてくれたりね。それに楽しい組合です。

でも釈放後、勤めていた会社から、もうこの組合と関わりたくないみたいな感じで、「もしも関生組合員として会社に残るんやったらクビを切る」と。「だからもう組合をやめろ」って言われたんです。その時に辞めました。

組合に入ってた時よりも、労働条件はかなり悪くなりましたね。出勤時間は朝1時間早くなって、退勤時間は変わらずです。ボーナスは40%ぐらい下がりました。

本当は戻りたいですね。でも戻ったら会社を辞めさせられるからね。戻るためには他の働き口を探さないといけないし。

今やっている裁判も無罪にしないといけない。そもそも労組活動で逮捕されること自体がおかしいです。無罪を勝ち取って、正々堂々と戻りたいです。

【取材者後記】はらわたが煮えくり返る滋賀県警の所業/リポーター 中川七海

元組合員の証言を聞いたとき、はらわたが煮えくり返る思いだった。

泣く子どもを前に児童養護施設に入れるぞと脅し、組合脱退を迫る。倫理観や道徳心の欠如どころではない。警察官たちの言動は、人として歪んでいる。

滋賀県警とは、一体どういう集団なのか。

私は滋賀県警の採用案内パンフレットを開いた。表紙には「今、優しさが、強さに変わる。」という文字。背景は、小学生ぐらいの子どもと警察官が向かい合う写真だ。パンフレットの随所に子どもの写真が載っている。

ページをめくると、警察官の夫妻とその幼い子どもたちの家族写真が目に入った。隣には、「やりがいのある仕事をしながら、充実した家庭生活を送ることができています」。

なぜ、自分の子どもは大切に扱うのに、関生組合員の子どもは平気で傷つけるのか。なぜ、関生組合員の生活は壊してもよいと考えているのか。それが、滋賀県警の言う「やりがいのある仕事」なのか。

元組合員の息子は、社会人になった。現在も父子2人で暮らしている。

逮捕当時の話は、全くしないという。

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