人質司法 なぜ労組は狙われたのか

裁判官は「法服を着た官僚」、マスコミは「警察と待ち伏せ」 それでも仲間をつなぎとめた日々/関生支部顧問・坂田冬樹さん<関西生コン事件・証言#12>

2025年05月07日 19時12分  渡辺周、中川七海

証言集の12回目は、関生支部顧問の坂田冬樹さん。湯川裕司・現委員長をはじめ、関生支部の屋台骨を支える人たちが警察に逮捕されて不在になる中、組合員の脱退を食い止めるため心身をすり減らした。

しかし、裁判官は検察の求め通りに不当な勾留を許可した。坂田さん曰く、法律も熟知せず長いものに巻かれる「法服を着た官僚」だ。

マスコミの「メディアスクラム」も、関生支部に対する風当たりを強くした。

組合員は次々と脱退していった。それでも今、伝えたいのは「関生支部は凜として活動している」ということだ。

鴻池組で関生支部の分会結成

1988年に関生支部に入りました。当時はゼネコンの鴻池組の輸送部門にいて、関生支部の分会を結成したんです。休日出勤をしても手当がつかなかったり、タイムカードの打刻管理ができていなかったり。労働基準法がきっちり守られていなかったので、会社に改善させようと思ったんです。

会社からは嫌がられました。関生支部のような産別労組に加入する社員が出ないよう、職場を監視していたような会社でしたから。「関生支部に入っていて大丈夫か」と遠回しに脱退を促してきました。会社が差し向けたのかは確認できませんでしたが、ヤクザっぽい人に出勤から退勤するまで付きまとわれるようになりました。

会社に監視されるのに息が詰まり、鴻池組は退社しました。普通に毎日笑って仕事がしたいなと。関生支部に加入しながら、別の会社でミキサー車の運転手をするようになりました。

逮捕間近に読売テレビに取材され

2011年、大阪府警の警備部に逮捕されました。団体交渉を拒否する生コン会社に抗議したところ、威力業務妨害に問われたんです。賃金と労働条件の改善のために団体交渉を求めたわけですから、当然の労組活動なんですけどね。

あの時はまず、関生支部の事務所に警察が家宅捜索に来て、僕は事務所にいた。心配になって家に電話したら、高校生だった娘が「警察が来てるで、テレビ局も来てる。今日はお母さんの誕生日やで、このサプライズ何なん」って。

連れ合いは僕以上にしっかりしている。全く動揺してなかったですね。毅然としてましたよ。家宅捜索で娘の部屋まで入り込んだ時は相当怒ったみたい。娘には「ベッドに入っとき」って。連れ合いに言われて、警察は部屋の写真を外から撮っただけやった。

娘もしっかりしていました。弱者に対するいじめが許せないタイプなんでね。

逮捕されたのは2011年5月11日なんですが、5月1日のメーデーに読売テレビが僕にインタビューしてるんですよ。「春闘では、働いている人の権利を大きく前進させないといけない」。そういう話をしたんですが、逮捕された時のニュースでインタビュー時の映像を流したんです。春闘を報じることが目的ではなく、僕が逮捕された時のためのインタビューだったんでしょうね。間も無く逮捕されることを知っていたのだと思います。

マスコミの人の全てが嫌いなわけではないんだけど、権力と資本とマスコミが一体化した時は怖いですね。松本サリン事件の時もそうでしたけど、メディアスクラムが冤罪を生むと思います。

許せない裁判所のあり方

2018年からの今回の弾圧では、僕は逮捕されていませんが、警察は酷いもんでした。

特に滋賀県警の組織犯罪対策課が酷かった。

滋賀県警が関生事務所に家宅捜索に来た時、僕は事務所にいました。僕たちは警察に家宅捜索に入られる時は、動画で記録を撮るんですけど、それもさせない。家宅捜索の令状を読ませろと言っても、「これでええやろ」と見せるだけ。だいぶ抗議しましたけど、聞かないです。

組織犯罪対策課の羽田賢一課長は「上の指示で来てるんや」と言っていました。彼は滋賀県警では幹部なんですから、「上」と言えば警察庁長官という意味だろうなと。関生支部は沖縄の基地や原発に反対しているし、トランプ大統領が大阪に来た2019年のサミットでは、「Trump Go Home! 」の横断幕を掲げたろかと計画していました。政府にとっては面倒な存在ですよね。

許されへんなと思ったのは、裁判所のあり方です。勾留理由の開示裁判では、なぜ検察の求めに応じて勾留するのかを説明できない。憲法28条で労働組合の権利が認められているのに、全く認めようとしない。

これでは「法服を着た官僚」ですよ。

「凛としてこの運動を進めているよ」と伝えたい

留守を守っている間、「仲間が帰ってくるまでは一緒に関生を守ろう」と残ったメンバーで常に話していました。

勾留されている組合員のご家族には、僕たちが差し入れをしっかりすることや、裁判にかかる費用の工面のことなどを説明しました。親御さんの中には、ちょっと感情的になって僕に食ってかかってくる人もおられましたが、じっくりと時間をかけて理解してもらえるよう努めました。

でも残った組合員の中には、様子が変わってくる人もいる。「何か心配していることがあるんか」と声をかけると、「妻が関生を辞めてくれと言っている。警察からどんな目に遭うかと怖がっている」と打ち明けられる。家に行って慰留したこともありましたが、脱退する人が次々と出ました。

刑事が逮捕されていない組合員を回って、脱退を促していたんです。例えば、「ファミレスで警察に事情を聞かれました」と連絡があると、その2、3日後には関生支部からの脱退届が送られてきました。

僕は今、役員は退任しています。顧問という役割で、自分に何か力があるわけやないけど、みんなにずっと寄り添っていくことが大事かなと思います。「関生支部ってどうなん? 」と聞かれた時に、「凜としてこの運動を進めているよ」ということを伝えたいです。

【取材者後記】涙が必要な時もある/編集長 渡辺周

坂田さんのインタビューを編集する過程で、迷ったことがあった。動画で坂田さんが涙を見せるシーンを組み込むか、カットするかーー。

坂田さんからはインタビュー時、カットしてほしいとお願いされた。理由は、仲間から「また泣いてるで」と言われるからだという。坂田さんは涙もろいらしい。

2018年からの弾圧では逮捕されなかったことに、「すごく引け目を感じた」とも言っていた。逮捕された仲間よりも辛い目にあっていないのに、涙するのは筋違いだと思っているのかもしれない。

しかし、関生支部を取材していると感じる。坂田さんのような繊細な心持ちの人もいるからこそ、チームとしてのしなやかさが出て、逆に強さが増しているのではないか。

それに、逮捕されずに留守を預かったメンバーだって辛かったはずだ。一人、また一人と組合員が抜けていく落胆の中で、慰留を続ける。組合員の家族には負の感情をぶつけられた。

坂田さんが涙を見せるシーンは使うことにした。

「必要な怒り」があるように、「必要な涙」があると思う。

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