人質司法 なぜ労組は狙われたのか

関東から猛者たちの輪に飛び込んで 組織を支える異色の書記長/関生支部・細野直也さん<関西生コン事件・証言#16>

2025年06月04日 16時03分  渡辺周、中川七海

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ある時は暴力団関係者に凄まれ、ある時は経営者にショベルカーで追われる。激しい攻撃にさらされてきた関生支部には、猛者が多い。

その中にあって、書記長の細野直也さんは少し毛色が違う。経済学を学び、関東から関生支部にやってきた。

だが、スピリットは細野さんも猛者だ。弾圧に遭った関生支部を、次世代の役員として盛り返そうとしている。

「組合員の顔が見える」機関紙

新潟の出身で大学は埼玉の立正大学、卒業後は経済学が学びたくて中央大学に2年間、聴講生として通いました。

大学生の時に、アメリカの9.11テロがあってすごく衝撃を受けました。なぜあのようなテロが起こるのか、なぜアメリカはその後に「対テロ戦争」へと突っ走っていったのか。社会問題に興味を持つようになりました。

沖縄の基地に反対する東京の団体に入って、社会運動をしていたところ、そこで出会った人が関生支部を紹介してくれたんです。当時は労働運動に関しては全く知らなかったのですが、関生に入りました。

それまでは関西には全く縁がありませんでしたし、関生の組合員たちはこれまでに会ったことのないような濃い人たちですから、最初はびっくりしました。

でもすごく人付き合いがしやすい人たちでした。思ったことはパッと言ってくれる。良いことは良い、悪いことは悪いと言ってくれるんです。

関生に入ってから、ずっと機関紙を担当しました。関生が展開する活動をきっちりと反映させることはもちろんですが、僕が心がけたのは「組合員の顔が見える」紙面づくりです。組合員の紹介コーナーを作って、「ラジコンが趣味です」とか「ペットのわんちゃんがかわいいです」とか「赤ちゃんが生まれました」とか。色んなエピソードを載せました。

リーダー不在で「受け身になってしまった」反省

2018年に関生への警察・検察による弾圧が始まってからは、機関紙で組合員を紹介するコーナーを作れなくなっていきました。組合員と組織を弾圧から守る必要があるからです。

僕には連れ合いと子ども2人がいますが、弾圧が始まり連れ合いは心配していました。子どものことを思うと、僕が警察に逮捕されて身柄を持って行かれた場合、どうすればいいのかという不安がありますからね。できれば違う仕事をしてほしいというようなことを言われたこともあります。僕は関生での活動を続けようとはもちろん思っていたんですが、不安になった時期もあります。

弾圧でたくさんの仲間がいなくなりました。自らという言い方は失礼ですが、勤めている会社から攻撃を受けたわけでもないのに、関生を離れてしまった人たちもいました。自分の身を守るためでしょう。弾圧する側の狙い通りなんだろうなと思います。当然、関生の財政も逼迫していきました。

現委員長の湯川裕司さんをはじめ、関生の核になる人たちが勾留されて不在の中、ちょっと受け身になってしまった。機関紙のこととか、組合員の支援とか日常の業務はしていたんです。でも事態を打開するための行動には出ることができなかったと、率直に思います。

裁判官への問い

関生は今、踏ん張りどころです。

働く人の要求を勝ち取るためにストライキまでする労働組合って、日本にはないと思います。だからこそ、権力から弾圧を受けるのでしょうが、自分たちがここで諦めるわけにはいかない。そういう危機感と使命感がものすごくあります。今は微々たる力かもしれないですけど、どうやって関生の活動を広げていくかが自分たちの課題やなと思っています。

関生の活動がやり過ぎだという趣旨の有罪判決は、ほんまに腑に落ちないですね。なぜそういう行為に至ったのかということを全く考えずに、もっと話し合いで解決するべきだとか言う。書面でしか判断していない。今日は仕事があるか、明日はどうかというギリギリのところで一生懸命暮らしている人たちがいるんです。裁判官には、じゃあそれで働く人の権利を守れるんですかと問いたい。

【取材者後記】異色は異色のままで/編集長 渡辺周

最後に言っておきたいことを尋ねた時、細野さんは関生支部の労働運動に対し、有罪判決を出した裁判官に怒った。書面でしか組合員のことを判断していないからだ。

細野さんも裁判官も、ミキサー車のドライバーが多い関生の組合員たちとは毛色が違う。だが細野さんと裁判官は全く違う。細野さんは関生に加入した後、組合員たちの人となりを知り、絆を深めた。機関紙で組合員たちの体温が伝わる記事を綴った。裁判官は組合員たちの人間性を知ろうともしない。

細野さんは、関生にしっかりと溶け込んでいる。たまに関西弁にもなる。一方で、自分のカラーを変えて周囲に合わせているわけではない。他の組合員たちも、そのことを当然のように受け入れている。

委員長の湯川裕司さんが興味深いことを語っていた。湯川さんは細野さんに「官僚に徹する」ことを期待しているというのだ。他の組合員たちが少々のことは融通をきかせようとしても、組織のルールに則って、「絶対にNO」と止める生真面目な官僚のような役割を果たしてほしいという意味だ。

同じ目的に向かって行動を共にすることは、個性を消すことではなく、生かすことだ。猛者の中で活躍する細野さんは、関生を根拠なく敬遠している人たちを労働運動に引き寄せる可能性を秘めていると思う。

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