公害「PFOA」

大阪・摂津市議選候補者にPFOA汚染を問う 共産・維新「ダイキンは謝罪・補償を」 立憲「環境再生計画の策定」

2025年09月21日 9時39分  中川七海

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2025年9月21日、摂津市議会議員選挙の投開票が行われる。定数19議席に対し、28人が立候補した。

摂津市における喫緊の課題は、ダイキン工業によるPFOA汚染だ。

ダイキンは世界8大PFOAメーカーの一つとして、市内にある淀川製作所でPFOAを製造・使用してきた。1960年代以降、敷地外に多量のPFOAを放出。地下水や農業用水、河川、大気、土壌、農作物を汚染した。環境省の調査では全国一の地下水汚染を記録。血液検査を受けた市民の高濃度曝露が判明している。

この間、市民は署名活動や勉強会などを実施し、ダイキンや地元行政に声を上げてきた。

市議は、市民の代表だ。市民が求める安全・安心の獲得に向け、どう対応していくのか。

質問状で問うたところ、共産・維新の候補者はダイキンに謝罪と補償を求め、立憲の候補者は「環境再生計画の策定」を挙げた。ダイキン労組が推薦するダイキン社員の候補者は、無回答だった。

ダイキンが拒む3つのこと

立候補者に尋ねたのは、「謝罪」「補償」「住民説明会」の3点についてだ。

理由は、汚染者として実施すべきこの3項目を、ダイキンが頑なに拒んでいることにある。

淀川製作所を中心としたPFOA汚染の主な原因がダイキンであることは、管轄する大阪府がすでに認めている。ダイキンは「汚染源の一つ」と、府と見解を違えているが、汚染源であること自体は認めている。

本来、公害原因企業は、汚染者負担の原則(Polluter Pays Principle)」に基づき、被害者への補償や環境の浄化、再発防止に向けた費用を負担しなければならない。来日して調査を実施した国連のビジネスと人権部会は「汚染者負担の原則に基づき、事業者が責任を取るべきだ」と指摘している。

しかしダイキンは、いまだに住民に対して謝罪と補償をしていない。

汚染は摂津市内だけでなく、近隣の大阪市にも広がっている。

それにもかかわらずダイキンは、誰もが参加できる住民説明会の開催を渋っている。摂津市内の一部地域の自治会長や農業協議会員しか参加できない説明会を開くのみだ。9日11日に報じた通りだ。

質問状では、「謝罪」「補償」「誰もが参加できる住民説明会」をダイキンが実施すべきか、市議に当選した場合にこれらの実施をダイキンに求めるかを問うた。

28人中21人が回答せず

回答したのは、28人中7人。6人が現職で、新人では、大川ゆり氏(立憲)のみ。

回答あり

増永和起(共産・現職)、安藤薫(共産・現職)、塚本崇(維新・現職)、南野直司(公明・現職)、藤浦雅彦(公明・現職)、西谷知美(無所属/民主市民連合・現職)、大川ゆり(立憲・新人)

 

回答なし

谷口治子(共産・新人)、村上英明(公明・現職)、水谷毅(公明・現職)、宇都宮美男(公明・新人)、出口貢次(維新・現職)、香川良平(維新・現職)、岩田将典(維新・新人)、光田あまね(維新・新人)、山内政和(維新・新人)、峰松由紀子(維新・新人)、松本暁彦(自民/自民党・市民の会・現職)、西島利行(自民/自民党・市民の会・新人)、光好博幸(無所属/自民党・市民の会・現職)、久保よしひろ(自民・新人)、長田知樹(参政・新人)、早坂京一朗(国民民主・新人)、戸屋匡尋(無所属・新人)、伊藤友一(無所属・新人)、大門たかし(無所属・新人)、中川嘉彦(無所属・新人)、楢村一臣(無所属・新人)

 

(敬称略)

維新候補者「救済金制度の創設を」

「謝罪」「補償」「誰もが参加できる住民説明会」について、ダイキンは実施すべきだとし、市議としてもダイキンに求めると回答したのは、次の3人だ。()内はTansaが補足。

増永和起氏(共産・現職)

「謝罪は必要。ダイキン工業自身、PFOAの排出は認めている。アメリカでは裁判で和解金も支払っている。日本国内の被害に対し謝罪は当然である。」

「補償は必要。(ダイキンは)アメリカでは裁判で和解金も支払っている。日本国内の被害に対し補償は当然である。」

「(誰もが参加できる住民説明会を)実施すべき。自治会長や農業委員など一部の人にだけ説明会を開催しているが、被害を受けているのはその人たちだけではない。誰でも参加できる開かれた説明会が必要だ。」

安藤薫氏(共産・現職)

「謝罪は必要。ダイキン工業はアメリカ法人の和解金支払いや、25年前から従業員の血液検査を行い高濃度のPFOAが検出されていたとの報道から、汚染の危険性は認識していたと考えられる。企業の社会的責任は大きいと思います。」

「補償すべきだと考えます。摂津市環境保全協定にもとづきその協議を行うべきです。」

「汚染は、摂津市はもとより近隣市にも及んでおり、この間の経過や今後の対応はすべての住民が知る権利があります。すべての住民やメディアを対象にした説明会を開催し、その内容は公開されるべきです。」

塚本崇氏(維新・現職)

「ダイキン工業は謝罪すべきです。ダイキン工業CSR内、国内グループの環境方針では、『有害化学物質の代替化・排出削減を推進し、環境汚染を予防します。』『客観性や透明性を高めた環境に関連する情報を社会に開示し、オープンでフェアに社会とのコミュニケーションを行うことで説明責任の高度化に努めます。』とあります。この方針および、企業倫理に基づいて謝罪すべきと考えます。」

「(ダイキンは)救済金制度を創設し、補償すべきです。(理由は、)汚染者負担の原則によります。」

「(市議として、ダイキンに対して)補償することを求めます。(理由は、)汚染者負担の原則によります。これはクボタのアスベスト問題と共通する事項があり、訴訟の動向によっては長期にわたって被害者に負担がかかる可能性があります。(市議として、)早期解決に向けて企業責任を問う立場です。」

「住民説明会の開催を求めます。(理由は、ダイキンは)CSRを果たしていると現状、認識できません。先日の農業委員会(=一部住民対象の説明会)での説明どおり、従業員の血中濃度を把握していながら、その事実を隠していたことから、地下水汚染の原因を隠している可能性もあり、説明する必要があります。」

「情報公開」「根本原因の追究」「検診体制の拡充」を求める

「謝罪」「補償」「住民説明会」以外の対策についてはどうか。全ての市民に目を向けた、迅速な施策を挙げていたのは、次の立候補者たちだ。

増永和起氏(共産・現職)

「ダイキン工業にはまず情報公開を行うことを求める。敷地内濃度や下水に排出している濃度、これまでの総排出量も明らかにしていない。また、従業員の血液検査をおこなっていたこともわかった。これもその内容を明らかにすべき。」

「摂津市に対し環境保全協定に基づくダイキン工業との協議を行うよう求める。健康被害や敷地外対策はじめ住民が行おうとしている公害調停の支援を行う。」

安藤薫氏(共産・現職)

「敷地内外の汚染実態、従業員に対する血液検査の結果、継続的検査が行われてきたのか、PFOA汚染除去の技術などこれまで企業活動を理由に公開されていなかった情報公開を求めたい。」

「ダイキン工業で働く、または働いてきた労働者の継続的検査や健康フォーローも必要。摂津市には市民の立場からダイキン工業や国、大阪府と接していくこと、環境保全協定にもとづく協議を行なっていくことを強く求めたいと思います。」

塚本崇氏(維新・現職)

「そもそもの根本原因を追究、説明を求めます。(中略)摂津市、大阪府に健康影響評価調査委員会の立ち上げを要求します。」

大川ゆり氏(立憲・新人)

「①追加調査・モニタリングの強化(井戸・土壌・血中濃度の継続測定)②健康相談・検診体制の拡充③安全な飲用水等の代替確保④汚染源対策と環境再生計画の策定⑤情報公開ポータルの常設化⑥国・府支援を進めます。」

公明候補者「謝罪は、国の調査がまとまってから」

一方で、謝罪や補償、住民説明会の対象者を一部に限る、あるいは迅速な対応は求めない候補者もいた。

南野直司(公明・現職)

「先ずは、ダイキン工業淀川製作所の周辺住民に謝罪すべきだと思います。」

「ダイキン工業淀川製作所の周辺住民に対して(の)住民説明会の実施を求めます。」

藤浦雅彦氏(公明・現職)

「(ダイキンに対して、謝罪は)国の調査がまとまった時点で求めます。」

西谷知美氏(無所属/民主市民連合・現職)

「総務省管轄の公害等調整委員会に、この件を諮り、公害として該当すると判断された場合には補償するべきと考えます。」

「地域の住民主体の説明会は開くべき。ただし、部外者による発言で混乱しないように、一定の制限は必要だと考えます。」

全回答者の回答(全文)は、こちら

ダイキン労組推薦の候補者は

未回答者が多数いるが、中でも絶対に回答しなければいけない人物が回答していなかった。

早坂京一朗氏(国民民主)だ。

早坂氏は、ダイキン社員として籍を置いたまま立候補する新人で、ダイキン労組が推薦している。ダイキン社員と摂津市議(9期)を兼務していた、三好義治氏の後任だ。

深刻なPFOA汚染が起きている現在、市民の代表である市議としてか、責任から逃れようとするダイキンの一員としてか、どちらの立場で動くのか。

2021年、Tansaの対面取材に対し、三好氏はこう述べていた。

――PFOA汚染に関して、何をしているのか。

「僕に市民から問い合わせがあったら、ダイキン工業に連絡してダイキンから行ってもらうというスタンスを持ってますけど、直接僕に問い合わせというのはきてないですわ」

――市民から問い合わせがなかったら動かないということか。

「市民から問い合わせがないのに、何をどうやって動いたらいいんですか」

――摂津市がダイキンに対して対策を求めるよう、市議として摂津市の執行部に話をしているのか。

「なんで、する必要があるんですか」

案の定、三好氏はダイキンに対して謝罪や補償を求めていない。

早坂氏はどうなのか。有権者も、その点が気になっていた。地元住民らでつくる「大阪・摂津市PFOA汚染問題を考える会」は、2025年8月時点で立候補を考えていた候補者27人に質問状を提出。PFOA汚染への対応や見解を問うたが、早坂氏は回答しなかった。

早坂氏は、子どもへの健康影響が確認されているPFOA汚染に向き合わない一方で、選挙期間中にこう発信している。

「子どもが安心して心から笑える環境を作るのは大人の役目です」

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