
関西生コン支部の国家賠償請求訴訟で、正当な判決を求めた原告と弁護団ら=東京都千代田区で2025年10月31日、千金良航太郎撮影
身柄を拘束し、罪を認めない限り勾留を続ける。労働組合「関西生コン支部」(関生支部)が国家賠償請求訴訟で主張したのは、「人質司法」の不当性だ。冤罪の温床となり、人権を蹂躙する。
人質司法に対する責任を誰が取るのか。
逮捕と勾留を請求するのは警察・検察だが、許可するのは裁判官だ。裁判官がノーと判断すれば人質司法は避けられる。判断基準は逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかだ。
関生支部の組合員たちのケースでは、逃亡や証拠隠滅のおそれはなかった。国賠訴訟では、逮捕と勾留を許可してきた裁判官たちの責任を問うた。
しかし、東京地裁の大寄麻代(おおより・あさよ)裁判長が言い渡したのは、「裁判官に責任があるわけがない」と言わんばかりの判決だった。
オウム返しの言い訳
2018年から、関生支部では延べ89人の組合員が逮捕された。勾留期間が最も長かったのは委員長の湯川裕司氏で644日。勾留を境に妻子が去ったり、身体を壊したりした組合員たちもいる。
いずれも逃亡や証拠隠滅のおそれはなく、法に従えば逮捕や勾留を許可してはならない。関生支部は、国賠訴訟で裁判官の責任を追及した。
「長期間にわたる恣意的拘禁による損害は、警察官が求めた逮捕状請求、検察官が求めた勾留請求及び勾留延長請求に対し、裁判所が求められるがままに許容して逮捕状、勾留状を発布したことに起因する」
しかし、大寄判決は裁判官の責任を突っぱねた。
「裁判官がした裁判について、国の責任が肯定されるためには、当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別な事情があることを必要とする」
この文言は、裁判官の責任はないと主張する際、決まり文句のように使われる。判決後の記者会見で、関生支部の代理人弁護士のひとり、海渡雄一氏は言った。
「故意に違法な行為をやったという裁判官以外は救うという判例がある。それをオウム返しのように書いただけのことです」
「松本論文」の提言はどこへ
日本の人質司法は、国連などから幾度となく批判を浴びてきた。数々の冤罪も生んだ。逮捕、勾留への権限を持つ者として、裁判官に自ら変わる意志はないのか。
2006年、大阪地裁令状部総括判事の松本芳希氏が、漫然と勾留を認める裁判官たちに一石を投じる論文を発表した。
「保釈の判断基準について原点に還って見直す必要があり、運用としては、刑訴法89条4号の『罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由』の該当性の有無・程度、裁量保釈の可否により具体的、実質的に判断していくことが重要であろう」
「否認事件であっても、予想される罪証隠滅行為の態様を考え、被告人がそのような行為に出る現実的具体的可能性があるか、そのような罪証隠滅行為に出たとして実効性があるのかどうかを、具体的に検討すべきであって、否認又は黙秘の態度から直ちに罪証隠滅のおそれを肯定するようなことをしてはならない」
現役の裁判官が、このような論文を書いたにもかかわらず、裁判官たちの態度は今も改まっていない。今回の大寄判決がそのことを物語っている。
(了)
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