製薬マネーと医師

1,500万円超29人、糖尿病・循環器病の専門医に集中: 文科省調査(6)

2019年11月07日17時44分 渡辺周

2019年11月6日の衆議院厚生労働委員会に提出された資料

文部科学省が大学の勤務医を対象にした調査で、製薬会社から1,500万円超の報酬を得た医師が29人いた。そのうち10人が糖尿病の専門医、8人が循環器内科医だ。両疾患は患者が多く、市場規模が大きい(*1)。製薬会社が有力な大学教授らを「広告塔」として使っている構図が見えてきた。

トップは糖尿病医の2,899万円

文科省は、ワセダクロニクルとNPO法人医療ガバナンス研究所の「製薬マネーデータベース」を使い大学勤務医の実態を調査した。文科調査と同じ内容の資料は、2019年11月6日に衆議院厚生労働委員会で、国民民主党議員の岡本充功委員(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム)が提出した。資料は医師の実名入りだ。

厚労委に提出された資料によると、製薬会社から2016年度に講師謝金やコンサルティング費などの名目で報酬を1,500万円以上得たのは29人。そのうち糖尿病医は、2,899万円(20社・153件)でトップの加来浩平・川崎医科大特任教授をはじめ10人いた。循環器内科医は、2,091万円(22社・164件)の阿古潤哉・北里大学医学部教授ら8人だった。

製薬会社、有力医師のリストを作って競争

糖尿病と循環器病は、患者が多く医薬品の市場が大きい。糖尿病は年間5,004億円、循環器病は5,935億円で合わせると1兆円を超える(*2)。大手製薬会社関係者によると、製薬会社の市場争いは血が流れるほどの激しい競争が起きるという意味で「レッドーオーシャン」ともいわれるという。

医師に支払われる報酬は、8割以上が講演会の「講師謝金」だ。

講演会は、影響力がある有力な医師「キー・オピニオン・リーダー」(KOL)を講師として開かれる。製薬会社が高級ホテルなどの会場費や交通費も負担して開き、参加するのは医師だ。製薬会社は講演会に参加した医師が自社の薬を処方するようにする狙いがある。

KOLのリストを作り、どの医師に講演をしてもらうか計画する製薬会社もある。ワセダクロニクルが入手したKOLリストには、有力医師の大学の卒業年度、診療ガイドラインの委員かどうか、学会での活動状況などが記され、KOLとしての力量が点数化されている。

  • マネーデータベース「製薬会社と医師」はこちらから無料でご覧いただけます。

〈出典〉

*1, *2  富士経済「医療用医薬品国内市場調査(1)ーー糖尿病、高血圧症、痛風・高尿酸血症、脂質異常症、肥満など生活習慣病領域の治療剤市場を調査」2018年、富士経済ウェブページ(2019年11月7日取得)。

製薬マネーと医師一覧へ