高齢者狙う新聞販売

コロナ下でも「押し売り」(5)

2021年02月27日16時54分 渡辺周

高齢化が進む東京都新宿区の団地に掲げられている看板

(読むために必要な時間) 4分30秒

高齢者の新型コロナ感染は命に関わる。新聞の拡販では、高齢者への訪問勧誘でその配慮を十分にしているのだろうか。

ワセダクロニクルは、2020年4月と5月に国民生活センターに寄せられた高齢者への新聞販売に関する相談内容を、情報公開請求で取り寄せてみた。両月は緊急事態宣言が出ていた期間内である。

相談件数は、コロナ感染が広がる前の2020年1月が106件だったの対して、4月は148件、5月は126件だった。

自宅を訪問し30分粘る勧誘員

2020年4月と5月の相談内容をみていくと、コロナ下にもかかわらずしつこく勧誘されるケースが目立った。

「包括支援員です。昨日、独居の高齢者宅に勧誘員が訪れ、来月から半年間の新聞の契約をした。契約書はない。どうしたらいいか」(4月)

「一人暮らしの母の所に新聞勧誘員が来て30分くらい粘られた。目が悪くて字が読めず、何度も断ったが押し切られ契約してしまった。解約したい」(4月)

「高齢で一人暮らしの母の所に新聞勧誘が地方から来た。断ったが、しつこく粘られた。勧誘員は色眼鏡姿で、母は怖い思いをした」(4月)

「高齢の一人暮らしの母親宅に新聞勧誘員が訪問し、しつこく勧誘。3年先から2年間の契約をさせられてしまった」(4月)

「1週間前に新聞の勧誘があり断ったが、3日前、自分が留守の時に高齢の母親に勧誘行為を行い契約したようだ。クーリングオフ希望」(5月)

「90代独居の母が、新聞販売店と2年後までの契約をしてしまった。解約したい」(5月)

「要介護2の実家の父が新聞の契約をしてしまった。販売店と交渉したいが電話もくれない。センターから電話してほしい」(5月)

コロナの感染予防で、心身をすり減らす介護施設の職員を気遣った相談もあった。

「老人ホームに入居しており、個人で新聞を契約中。コロナで疲弊している職員に迷惑をかけられないと思い、解約を申し出たら断られた。解約は無理なのか」(5月)

独居の認知症女性、怖くなり契約

相談の中から、被害者が認知症と思われるケースを拾ってみた。

4月が18件、5月は28件、計46件ある。両月の高齢者に関する相談計274件のうち約17%だ。

押し売りの被害に遭っていることを家族や介護職員らが発見し、相談している。認知症の高齢者が自ら相談をしてくることは難しいので、実際はもっと被害が出ていると考えられる。

具体的な内容は以下の通りだ。

「一人暮らしの高齢の母が新聞購読契約をしたとケアマネージャーから知らされた。母は認知症で要介護2の認定を受けている。解約したい」(4月)

「認知症で独居の母が訪販で新聞を勧誘され、怖くなり契約。居住地のセンターの斡旋で契約期間を短縮してもらった。情報提供する」(4月)

「新聞購読の契約を、認知症の母の後見人である自分が解約した。にもかかわらず再度配達が始まり困惑している。どうしたらいいか」(4月)

「母親が認知症なので、知らない間に新聞の契約をしてしまい、何社も契約している。今日、契約書を見つけた。どうしたらいいか」(5月)

「認知症の母が新聞契約をしたようだが、世帯主の氏名の名前が全く知らない名前で契約されているので、クーリングオフし過去の購読料返金希望」(5月)

「高齢で認知症の姉が3日前販売店の訪問を受けて新聞の契約をしたようだが、契約内容を理解していない。解約し再勧誘を断りたい」(5月)

孫のふりをして・・・

他にも次のような事例がある。

「新聞配達員をしている。他社の新聞販売拡張員が、(購読者の)孫のふりをして自社の新聞の購読解約を申し出し、他社の新聞購読契約をさせている」(4月)

「祖母が道端で新聞購読の勧誘を受け、断りきれず来年1月から3ヶ月間の契約をした。祖母が解約を希望している」(5月)

「母が契約期間が切れた新聞会社に口頭で口座番号を伝え、手続きされてしまったようだ。どうしたらよいか」(5月)

どの例を見ても、勧誘員がコロナ感染を配慮して高齢者に対応しているとはとても思えない。

こうした事例が、自社の販売現場で起きていないか。起きていたとしたらどう対処しているのか。ワセクロは全国の新聞社に質問状を出した。次回はその回答内容を報じる。

=つづく

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