
(イラスト:qnel)
シンガポールで2023年11月、私たちは高浜憲一を取材した。
高浜は、「アルバムコレクション」の前身である「写真カプセル」を始めた当事者だ。アフィリエイトサービスの会社「ファーストペンギン」の創業者であり、写真カプセルでビジネスを始めた際は、MAX PAYMENT GATEWAY SERVICES(以下MAX社)の社長だった。
だが写真カプセルの実際の運営は、当時ファーストペンギンの社長だった新田啓介が引き受けた。高浜はそう主張した。新田は、高浜の後にファーストペンギンの社長を務めた人物である。
高浜は新田について、旧知の仲で「正義感の強い方」だと言う。
本当だろうか。高浜によると、写真カプセルの後に続いた同種のアプリ、「動画コンテナ」、そしてアルバムコレクションも新田が運営した。いずれも児童ポルノなどが取引されてきた。犯罪行為の温床となったアプリで収益を上げてきたことになる。
新田にも話を聞かなければならない。私たちは高浜から新田に対し、Tansaの取材を受けるよう伝えてほしいと頼んだ。
3日後、新田から私と渡辺宛てにメールが届いた。
2023年11月から、Tansaはアルバムコレクションの運営者とAppleなど巨大プラットフォームに関する本連載の取材を、NHKスペシャル「調査報道・新世紀」取材班と共同で行なっています。共同取材の成果として得た情報、撮影した映像などは双方で共有します。NHKスペシャルは、6月15日午後10時~10時49分 (再放送 19日(水) 午前0時35分~1時24分)放送予定です。
「記事にするのを控えるか、事前確認を」
新田からのメールのタイトルは「誰が私を拡散したか の記事について」。
このメールの数週間前、新田は高浜と共に代理人弁護士を通じて、Tansaの記事を削除するよう文書で要求してきた。対象は、2023年9月から11月にかけての5本の記事。アルバムコレクションの運営者として、新田と高浜を名指しして報じたことに反発した。2020年4月以降はアルバムコレクションを他社に譲渡し、運営に関わっていないという主張だ。
メール本文には、30分程度なら話をすると書かれていた。代理人弁護士とも相談して取材を受けることにしたようだ。現在はマレーシアに住んでおり、オンラインで対応するという。
新田はこれまでアプリの運営を通じ、警察に児童ポルノなどを投稿するアプリのユーザーの情報を提供してきたという。そうした加害者からの報復を「非常に不安に感じている」ことから、メールの末尾ではこんな依頼をしてきた。
「少なくとも、今回の取材内容は記事にすることはお控えいただくか、どうしても記事にする必要があれば、事前に内容を確認させていただきたく存じます。」
年末に渋谷の喫茶店で
代理人弁護士からの文書と高浜への取材を合わせると、2014年9月から2020年3月まで、一連のアプリの運営を一手に担ってきたのは新田だ。新田に対し、オンラインで30分間話を聞くだけでは足りない。それに、これは取材だ。聞いた内容を記事にしないことや、内容を事前に確認させることなどできない。
私は次のように返信した。
「取材はオンラインではなく、対面でお願いしたいです。私たちがマレーシアに伺います。
新田さんにはお聞きしたい内容が多岐に渡ることに加え、先日の高浜さんの取材では、高浜さん自身は運営等に関することをほとんど把握しておらず、新田さんが知っているとおっしゃっていました。事実関係の把握のためには、30分のオンライン取材では不十分です。また当方の保有している資料等を直接提示しながら、写真カプセル・動画コンテナ・アルバムコレクションの運営等に関する話を伺いたいです。
今回の取材に関し、記事にしない又は記事内容の事前確認には応じることができません。私たちは、日頃からいかなる取材相手に対しても、こうした要求には一律で応じておりません。」
すると、返信では年末は東京に帰っていると告げてきた。
2023年12月28日、私たちは渋谷の喫茶店の個室で会う約束を取り付けた。
「拡散を止めたい、そういうところ? 」
当日待ち合わせ場所に現れた新田は、こちらの姿を確認すると「ちょっと一服いいですか」と、たばこを吸い始めた。
店に入り、新田が口を開いた。約2時間、話を聞いた。()内はTansaが補足。
「大前提としてお聞きしたいのですが、誰が私を拡散したのかというシリーズの目的はどこなんでしょうかね。やっぱり拡散を止めたいという…そういうところ?」
私はそうだと答えた。新田は記事の内容について、矢継ぎ早にいくつか尋ねてきた。自身は2020年にアルバムコレクションを譲渡し、運営に関与していないにもかかわらず、記事でそのように書かれているのが解せないという。
だが新田が2020年4月以降はアルバムコレクションの運営に関与していないとしても、アルバムコレクションを立ち上げ、数年に渡り収益を得てきたことは事実だ。さらに、アルバムコレクションが犯罪の温床であることを知りながら譲渡している。どのような相手に、どんな条件で渡したのかも知る必要がある。
「運営は全て一人で」
本題に入った。
高浜へのシンガポールでの取材では、アプリの運営は新田がしていたと主張した。これは本当だろうか。
新田によると、事実だ。アルバムコレクションの運営を、全て一人で行なっていたという。被害者からの通報への対応や警察への捜査協力などもしていたが、2019年ごろから手に負えなくなっていった。
「(アルバムコレクションの)利用者の中で検挙される人もいるということはご存知だと思いますが、そのようなユーザーさんがいらっしゃるという事実は当然認識しておりまして。それが、私としては対応しきれないと」
「たとえば(違法画像などの)数が山のようにあるというわけではなくて、ウェブのサービスですから24時間対応しないといけない」
「特に画像が悪用されてしまったというユーザーさんへの対応。これは夜中でもなんでも、ご飯を食べている時もテレビを見ている時もやらなきゃいけないので、それがもう終わりがないなというふうに思いました」
新田は違法画像への対応が追いつかなかったと話す。
だが、アルバムコレクションで違法画像が蔓延した理由は、主にその仕組みにある。アルバムコレクションに投稿した画像が有料でダウンロードされると、投稿者には利益が入る。そのため、より多くの人に購入を促す性的画像が「商品」になったのだ。
なぜ性的画像が投稿されやすい仕組みを変えなかったのか。
アルバムコレクションだけではない。前身となった写真カプセルと動画コンテナでも同じ仕組みが使われ、それがアルバムコレクションに至るまで維持されてきた。性的画像を投稿させることで、儲けようとする意図があったのではないか。
私はその点を問題視した。
「写真カプセルの時から違法な画像は投稿されていたわけですよね」
「そうですね」
「ではなぜその形態をずっと維持してきたんですか」
新田は言葉に詰まりながら答えた。
「(違法行為でユーザーが逮捕され)アプリ名が報道されるとなると、また悪いユーザーが寄ってくるんですよ。それでそういう(違法行為をする)ユーザーが一気に増えるという問題はあった」
「建て直し」の嘘
違法画像への対応が追いつかないのに、アプリの運営は続ける。その矛盾を突くと、新田は違法行為を防ぐ手段について語った。
アプリの作り替えだ。写真カプセル→動画コンテナ→アルバムコレクションと遷移させ、違法行為が蔓延した前のアプリのユーザーを排除するのが目的だ。その際、ユーザーが通報できる機能の強化や、画像をダウンロードするためのパスワードをランダムに設定するなどの対策を講じたという。
「前のもの(アプリ)は悪い人が使えるようになっていた」
新田が続ける。
「そうするとそのサービスはもうダメですよね。だから機能強化をして、また建て直そうとして新しく出すんですね」
しかしこれは嘘である。
私はこれらのアプリの過去の情報から、リニューアル先のアプリにユーザーを誘導する文言を見つけていた。
たとえば動画コンテナが終了した際、ウェブサイトにはアルバムコレクションに誘導するメッセージが掲載されていた。

次のアプリを案内すれば、違法行為をするユーザーにまた悪用される。実際、そうなった。強化したという防止機能も、アルバムコレクションでの犯罪行為の蔓延を考えれば役に立っていない。なぜ案内を掲載し、ユーザーを誘導したのか尋ねた。
「うーん。まあ利用者が離れたとか、そういう問題はあったんでしょうかね」
やはり被害防止より、ビジネスが先行したのだ。
しかもこれだけではない。私はこれらのアプリが、性的画像で金儲けをしていたと考える別の証拠も得ていた。
=つづく
敬称略
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