編集長コラム

メディア間コラボ成功の秘訣(161)

2025年05月17日8時47分 渡辺周

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小さなニューズルームが、どうやったら事態を変える力を持てるようになるか。Tansaが取った重要戦略の一つが、コラボレーションだ。

インドネシアへの石炭火力発電所の日韓企業による輸出では、韓国のニュースタパ、インドネシアのTempoとコラボした。貧困に陥った高齢者の孤独死では、イギリスのガーディアンと組んだ。たばこ産業の暗部を抉る探査報道では、組織犯罪専門の国際ネットワーク「OCCRP」と協業した。

その他にも様々な外国メディアとコラボしてきた一方で、国内メディアとのコラボはなかなかうまくいかなかった。東洋経済とは、「製薬マネーと医師」でのコラボで成功したものの、稀な事例だった。

うまくいかないのは、相手方の組織内で調整がつかないからだ。Tansaが取り上げるテーマが、そのメディアと関係が深い組織を批判することになるので「不都合だ」と頓挫したこともあった。

なぜ外国メディアとはすんなり進むことが、日本のメディアとでは引っかかるのか。こりゃもう、日本ではコラボは厳しいなと思っていた時のことだ。

デジタル性暴力を取材していた辻麻梨子が、NHKで同様の問題に取り組んでいるディレクターたちと意気投合した。NHKのディレクターには、辻と同級生でワセダクロニクル(Tansaの旧称)のインターンだった大間千奈美もいる。ジャーナリストを目指し、共に学んだ2人が合流した。成長した2人に、私は嬉しくなった。

ここから、コラボの話が進んでいく。

NHKは巨大であり、組織内の事情に敏感な傾向がある。コラボを成就させる相手としては、最も困難な部類に入るだろう。実際、こちらにしたら「そこ、気にする?」と思うことが随所にあった。

それでも、コラボに関する覚書をTansaとNHKとの間で交わすことができた。主な内容は三つ。

・互いの情報、素材は自由に使える

・編集内容には介入しない

・互いの成果を発信する際、TansaとNHKのコラボであることを明記する

コラボの成果は、Tansaのシリーズ「誰が私を拡散したのか」と、NHKスペシャル「調査報道新世紀」で発揮できた。

「現場の体温」を上げる

NHKとのコラボが成功した要因は3つだ。

まずは、現場の情熱。

これがないと始まらない。性的画像をネット上で拡散され、削除が追いつかずに生涯苦しむ。被害者には子どもまでいる。何とかこの地獄を壊滅させたい。組織の人間としての立場を守ろうとする気持ちより、ジャーナリストしての情熱が上回っている必要がある。

うまくいかなかったコラボ話では、現場を持っていない幹部との交渉から始めた。これでは何か障害があった時に、すぐにあきらめてしまう。

二つ目は、強みと弱みの自覚。

コラボは双方にメリットあって成り立つ。メリットは双方の強みを生かすことで、双方の弱みを補うことで生まれる。自分たちの強みと弱みを明確に自覚することが大切だ。意地を張って弱みを認めないという態度ではなく、共通の目的のために謙虚になる必要がある。

Tansaは、取材で先行しスクープの核心情報を握っていた。逆に弱みは知名度と、メディアとしてのインパクト。NHKと組むことで、相手は取材に応じる確率が高まる。NHKスペシャルのインパクトもありがたい。

三つ目は、幹部の感度だ。

組織である以上、責任者のゴーサインが必要だ。現場の記者やディレクターだけではどうにもならない。

組織の幹部は、「体温が上昇している現場」を感知し、そこにいる部下たちの声に耳を澄ませなければならない。共感したならば、責任を持って組織の中を通す。現場の情熱を形にする手助けをし、失敗した時は責任を取る。それが幹部の仕事だ。

「そんな上司なんて、ウチにはいない」と思う記者やディレクターもいるかもしれない。

気持ちは分かる。保身に汲々としている上司の話を、同業者の若手から聞くたびに「お気の毒に」と思う。だが、NHKではTansaとのコラボに共感し、協力してくれた幹部たちがいた。あきらめず、まずは自分たちの現場の体温を上げてみてはどうだろうか。

Tansaは今、国内メディアと新たなコラボに向けて動いている。成功させて、日本でもコラボは当たり前だという状況を作りたい。

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