それでも参政党を選びますか

参政党躍進 日本社会の「ナチス化」を止めるため、立場・職種を超えた連帯を

2025年07月25日 21時02分  Tansa編集部

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東京・芝公園で開かれた参政党の参院選・最終演説に集まった支持者たち=2025年7月19日、千金良航太郎撮影

2025年の参院選で、参政党が14議席を獲得し躍進しました。

比例代表の得票数は742万5053票。これは、自民党、国民民主党に続く3番目。立憲民主党を上回っています。

Tansaは選挙期間中の7月17日、報道機関として、参政党に反対すると宣言しました

報道機関であるならば、中立であるべきだという批判があります。

しかし、ジャーナリズムの役割は、誰しもの命と暮らしを守るために、暴走する権力に歯止めをかけることです。批判を恐れ、「中立」を理由に、基本的人権を否定する権力を見過ごす行為は、報道機関としての職務放棄を意味すると、私たちは考えます。

さらに、日本社会を構成するあらゆる人が、立場や職種を超えて参政党の台頭を止めるべきだと考えています。

当初は過激な弱小政党だったナチスは、急伸しました。社会を挙げての熱狂が押し上げたのです。あの時のドイツ社会と、今の日本社会は似ています。

550万人のユダヤ人を虐殺したナチスドイツと、今の日本社会を比較するのは荒唐無稽だと考える人もいるでしょう。

しかし、本当にそうでしょうか。

選挙期間は封印した危険な「本性」

参政党は、食と医の安全を訴えるなど市井の人を安心させる主張が多くあります。外国人への姿勢も「『日本人ファースト』と言っているだけで、排外主義ではない」と、神谷宗幣代表は選挙期間中に言っていました。

しかし、本性はどうか。Tansaが過去19年間の神谷氏や、参政党の言動を総ざらいしたところ、そこには「安心」とは程遠い言葉の数々がありました。7月17日付の「参政党・神谷宗幣代表の過去19年間の発言を総ざらい 議会質問、書籍、ブログ、YouTube、雑誌 差別や戦争助長する発言の数々」で報じた通りです。一部を再掲します。

⚫︎祖先から子孫へと受け継がれていく日本人としての血統を大事にするべき(『参政党ドリル』2024年、青林堂)

⚫︎日本人は「大御宝」、天皇陛下の大切な子供という関係です。親(天皇陛下)が子供たち(日本人)を見守り、子供たちは親に報いるために努力する(『参政党ドリル』2024年、青林堂)

⚫︎国民に戦う意思がなければ、仮に日本が核武装しても、発射スイッチをもつことになる総理大臣は世論を気にするのでスイッチを押すことができない(「月刊WiLL」2022年8月号、WAC)

⚫︎日本人の男子には、短期でもいいので、命の危険を感じるような合宿訓練でもするべき(2014年10月19日、神谷宗幣氏オフィシャルウェブサイト「戦いたい! 海外の戦場へ向かう日本人」)

⚫︎参政党は、外国人労働者に頼らなくても済むよう、AI・ロボットを活用することで生産性を高めて、日本人のみで運営可能な活力ある社会を築く(『参政党ドリル』2024年、青林堂)

⚫︎ジェンダーフリーやLGBTQなどは、共産主義者が敵対する国を内部から崩壊させるために悪用している思想戦の一つ(『参政党ドリル』2024年、青林堂)

⚫︎果たして子どもを預けて働きに出る女性は、母親と幼児のかかわりの大切さを認識しているのであろうか(2008年9月12日、吹田市議会)

さらに参政党の憲法草案には、現行憲法で保障されている「法の下の平等」や「思想・良心の自由」が脱落しています。国民の要件は「父または母が日本人であり、日本語を母国語とし、日本を大切にする心を有することを基準として、法律で定める」と定めています。

しかし、こうした「本音」を参政党は選挙期間中に押し出しませんでした。幅広い支持を得るため、封印していたようです。

7月19日、参政党は選挙期間での最後の集会を東京・芝公園で開き、2万人が集まりましたが、支持者たちは安心しきっていました。家族連れで来た親は、幼いわが子に「来てよかったね」と言っていました。

「血統主義」で共通するナチスと参政党

ナチスと参政党には共通した主張があります。

まず、「血統」を重視していることです。1920年に発表されたナチスの綱領には、ドイツ人の血を引く者だけが国民になることができるという「血統主義」が含まれていました。

ナチスのアドルフ・ヒトラーは、第一次世界大戦での敗戦原因をユダヤ人が裏で糸を引く国際資本に求めるなど、陰謀論に傾倒しました。参政党の神谷氏も、日本の敗戦を陰謀論で語っています。神谷氏によれば、日本は罠にはめられて「大東亜戦争」に突入したのであり、日本を傘下に置くのは欧米からすれば、「コロンブスやザビエル以来の悲願」だそうです。

その他にも、母親は家庭で子育てに専念することや性的マイノリティへの侮蔑など様々な共通点があります。

しかしナチスもまた、国民から幅広い支持を得るため、本音をその時々で封印しました。

例えば1933年、首相に就任したアドルフ・ヒトラーは、国会で世界平和を訴えました。「国際条約はしっかり守るし、紛争は武力を使わずに解決する。他国民の権利も自国民と同じように守る」。そうアピールしたのです。メディアはヒトラーの演説をもてはやしました。

ドイツ国民はナチスを押し上げます。

1928年の国政選挙で2.6%だったナチスの得票率は、1932年に37.3%、ヒトラーが首相になった1933年には43.9%まで増えました。翌年には大統領と首相の役割を兼ねた「総統」に。そこからは国民のほとんどがヒトラーを支持しました。ヒトラーは独裁者でしたが、それを望んだのはドイツ国民自身だったのです。

その後のナチスの蛮行はご存知の通りです。ポーランドを「電撃戦」で侵攻して第二次世界大戦を招き、国内外のユダヤ人を虐殺していきました。

国民がヒトラーを支持した背景には、経済的な苦境があります。特に、1929年のニューヨーク株式市場での株価暴落をきっかけにした世界大恐慌は痛手でした。

なぜドイツ人の暮らしが苦しいのか。その理由を、ビジネスで成功しているユダヤ人のせいにしたヒトラーの嘘をまんまと信じてしまったのです。ドイツ社会自体が、ナチス化してしまったのです。

当時の心境を語った若者の手記があります。

ナチスには神秘的な力で我々を魅惑し熱狂させる何か違うものがあったのです。

 

それは旗をなびかせじっと前方を見つめ太鼓を打ち鳴らしながら進む若者たちの一糸乱れぬ行進でした。この共同体には何か心を揺さぶる圧倒的なものがありました。

 

しかし私の父がナチスについて語るときその言葉に感激や誇りがなく、それどころか不機嫌な響きがあるのが理解できませんでした。父は連中の言うことを信じるな、連中は狼だ。ナチスはドイツ国民を恐ろしいかたちで誘惑しているのだと言うのです。しかし父の言葉は興奮した私たち若者の耳には入りませんでした。

 

(NHK・カラーでよみがえる映像の世紀(4) 「ヒトラーの野望~人々はナチスに未来を託した~」より)

参政にあやかろうとした自民の危うさ

参政党だけを、私たちは警戒しているわけではありません。日本の社会と政治の状況が、ナチスが躍進した当時のドイツに似ていることにこそ、危機意識を持っています。

当時のドイツでは、第一次世界大戦前の強いドイツを取り戻そうという機運がありました。日本も安倍晋三・元首相が「日本を取り戻す」をスローガンにしました。日本の経済力の低下に伴い、「強い日本」の復活を望む声が高まっています。

政治状況も似ています。

ヒトラーが首相になるまで、ドイツは複数の政党が少数与党で政権運営をしていました。政権の基盤を安定させるため、ドイツの伝統を重んじる保守政党がナチスを取り込んだところ、逆にナチスの方が実権を握ってしまいました。

日本も今、自民党を中心とした少数与党です。自民党は参院選で、「日本人ファースト」の参政党人気にあやかろうとし、「違法外国人ゼロ」を掲げました。自民党をはじめとした保守政党が、生き残りをかけて参政党を取り込もうとしても不思議ではありません。

参政党は今、衆議院では3人しか議員がいないので連立政権を組むことはありませんが、これから衆議院で議席を伸ばせば十分に政権入りはあり得ます。その時、利用したつもりの参政党に、他の政党が主導権を奪われるかもしれません。

日本が基本的人権に鈍感な社会である点も、当時のドイツと似ています。

例えば、入国管理局での外国人収容者への虐待が横行しています。自白を引き出すため、捜査機関が被告を長期間勾留する「人質司法」は当たり前になっています。

「攻撃」ではなく「説得」を

本来ならば、権力の暴走を止めるのは報道機関の役割です。

しかし、参政党への批判を展開する報道機関はまだ一部で、全体としては及び腰です。

例えば朝日新聞。投開票日翌日の7月21日付の「天声人語」では、参政党の名前は出さず「その政党」と表現。排外主義により民主主義が崩壊に向かうのではと危惧し、次のように締め括っています。

「考え過ぎだろうか。『心配はまったく外れたね』と大笑いされることを心から願っている」

これでは「高みの見物」です。他人事です。

ここぞという時に闘わないとどうなるか。日本の報道機関は戦争で痛感したはずです。

組織や立場を超えて、ジャーナリズムの責務を果たす同じ職業人として、報道機関及び個々のジャーナリストが力を合わせていくことを切望します。

社会のあらゆる人にも、参政党の台頭を食い止めるために協力してほしいと思います。

様々な考え方があり、それらは尊重されるべきです。しかし、国籍や出自にかかわりなく基本的人権を守ることでは、一致団結できるはずです。それが、幾多の犠牲を経て、基本的人権を重んじる民主主義社会を享受している私たちの責務だと思います。

その際、絶対に避けたいことがあります。

参政党支持者への攻撃です。参院選中、すでに参政党の支持者に対して「情弱」(情報弱者の略)などという言葉が投げつけられていました。

あくまでも「説得」の姿勢で臨むことが重要だと考えます。そうでなければ日本社会は分断されてしまいます。

統一教会から脱会した元信者からこんな話を聞いたことがあります。

統一教会からの脱会を決意し、アパートの部屋を引き払う時のこと。両親が荷物を運ぶために手伝いに来てくれたが、統一教会の幹部たちも現れた。幹部たちは「そいつはサタンだ、地獄に落ちるぞ」と喚く。でも両親たちは「そっちじゃない! こっちに来なさい!」と言う。頭が混乱したが、最後は親の迫力が勝った。

参政党の支持者の中には、頑迷に参政党の主張を信じている人もいると思います。2万人が集まった参政党の参院選での集会は、「熱狂」というより「陶酔」という雰囲気でした。どんなに参政党の嘘や危険性を説いても分かってくれないかもしれません。

それでも、同じ社会を生きる相手を想う「迫力」が大切だと思っています。

今後もTansaは、日本国憲法の柱である基本的人権を守るため、全力を尽くします。

2025年7月25日

Tokyo Investigative Newsroom Tansa 一同

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