地球は丸い。世界に真ん中はない。
だが高市早苗首相はきのうの所信表明演説で言った。
「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す。絶対にあきらめない決意をもって、国家国民のため、果敢に働いてまいります」
高市首相の根底にあるのは、「強い日本」への憧憬だ。
「必ずや、日本列島を強く豊かに、日本を再び世界の高みに押し上げてまいります」
日本を強国にし、世界の高みに押し上げたい高市首相。過去の戦争で日本に負い目があることは耐えられないようだ。2005年、自身のサイトで「政府歴史見解は、早急に見直されるべきだと思う」と題したコラムを書いている。
漠然とした「戦争責任」を安易に認め、何に対する謝罪かも明らかにせず、自ら現代の外交交渉の足枷とし、謝罪外交・土下座外交に甘んじることは主権国家として実に無責任な姿勢だと言わざるを得ません。アジア諸国に対しても、むしろ無礼な振る舞いでしょうし、「民族責任論」を振り回すことで、日本人の誇りも傷つき、次代を担う子供たちの教育にも悪影響が出てしまっています。
保守政党である自民党の政治家なのだから、高市氏のような考えを持つのが当たり前なのではないか?
「そんなことはない」ということを知ってほしくて、Tansaの勉強会で過去の自民党の実力者たちの発言を取り上げた。Tansaは若い世代が多い。政治に目が向き始めた頃は、すでに高市氏の「政治の師」である安倍晋三氏が首相だった。
過去の報道や著書、講演録を調べた。高市氏とは真逆の政治家たちが自民党にはいた(カッコ内は主な役職)。
田中角栄氏(1972-74首相)
「戦争を知っている政治家がいるうちは日本は安全だ。戦争を知らない世代がこの国の中核になった時が怖い」
宮沢喜一氏(1991-93首相)
「我が国の行為が韓国・中国を含むアジアの国々の国民に多大の苦痛と損害を与えたことを深く自覚し、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立って平和国家としての道を歩んできた」
野中広務氏(1998年官房長官、2000年自民党幹事長)
「ぼくは戦争、絶対反対です。政治の最大の役割は戦争をしないこと。戦前の私たちは知らないうちに教育され、戦争に突入した。私はこうした民族性に恐怖を感じる。他国の人を傷つけ殺すことは、自分たちも殺されることになる」
この他にも、日本の戦争責任を自覚し、同じ過ちは絶対に繰り返さないという意思を持った政治家が、自民党にはいた。権力闘争に明け暮れる中で、金権政治に手を染めた政治家たちもいたが、不戦への決意は持っていたのではないか。
9月にソウルへ出張した際、「戦争と女性の人権博物館」を訪れた。日本軍の慰安婦を強いられた女性たちの証言や写真、慰安所に関する資料が展示されている。当時10代の少女も多く、13歳で慰安婦にされた被害者までいた。被害女性たちにとって、当時の体験を証言することはつらく、勇気のいることだ。
自身の顔写真とともに、来館者へのメッセージを寄せている女性たちもいる。ある女性の言葉が目に飛び込んできた。
「子どもたちには、平和な世界で暮らしてほしい」
自分がつらい思いをしたからこそ、子どもたちには同じ目に絶対に遭ってほしくない。そんな思いが込められているのだろう。
高市首相に決定的に欠けているのは、犠牲者への想像力だ。
日本人としての誇りを語る前に、人としての誇りを傷つけられた人に思いを馳せる。それが首相に必要な資質だ。
首相官邸ホームページより
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