ジャーナリズムを創る

ドキュメンタリー映画「燃えあがる女性記者たち」の監督・Tansa女性記者がトークイベント/「ジャーナリズムを手に立ち上がる仲間」

2023年10月06日18時47分 Tansa編集部

ドキュメンタリー映画「燃えあがる女性記者たち」という映画が今、日本各地で上映されている。海外では先行上映されており、ワシントン・ポストは「おそらくこれまでで最も感動的なジャーナリズム映画」と評した。

主人公は、インドのカースト制度の外にある被差別民「ダリト」の女性記者たち。貧困と暴力に苦しむダリトの苦境を救おうと、2002年にインド北部のウッタル・プラデーシュ州を拠点に「カバル・ラハリヤ」という新聞社を立ち上げた。映画は彼女たちの仕事と、人物像を5年にわたって取材したものだ。

監督はインド出身のリントゥ・トーマス氏と、スシュミト・ゴーシュ氏。9月12日、来日していた両監督と、Tansaの辻麻梨子と中川七海が参加したトークイベントが実現した。

 文化・歴史の背景は違っても

きっかけは、7月の試写会で中川と辻が鑑賞したことだった。その時期中川は、大企業による公害や、いじめにより高校生が自殺するという事態にあっても保身を優先するマスコミを追及していた。辻は、子どもの性的虐待や女性の性的動画がネット上で拡散している加害者に切り込んでいた最中だった。どの問題も、社会的弱者を踏みにじっても平気な社会構造がある。日本とインドでは文化的・歴史的背景が違っても、そうした社会構造にジャーナリストがいかに立ち向かうかが重要だと感じた。

そこへ、試写会終了後に映画の配給会社「きろくびと」から、トーマス氏とゴーシュ氏の両監督の来日時にトークイベントを開くことを提案され、辻と中川は快諾した。

当日は一般公募した22人と共にイベントを進めた。ジャーナリストだけではなく、市民も参加してジャーナリズムに活力を吹き込みたいと考えたからだ。

映画上映に先立ち、中川と辻がまず日本のジャーナリズムの状況について語った。

ジャーナリストの殺害や逮捕が日常ではないにもかかわらず、日本の報道の自由度は世界68位。記者クラブを拠点にしたマスコミは当局に忖度し、女性記者の割合は2割という旧態依然とした状況を説明した。

上映が始まった。電気のない地域の窮状をカバル・ラハリヤが報じた結果、行政が電気を通す。住民の目線に立ったきめ細やかな取材をしたかと思えば、女性をレイプして殺害した事件に文字通り「命がけ」で迫る。会場の人が引き込まれていった。

上映後のトークセッションでは、会場から両監督に「緊迫した現場を撮影する上で困難だったことは何か」や「インドで上映した時の反応は」といった質問が出た。緊迫した現場を撮影できるようになるには、4年間その地域に通って住民と信頼関係を築いたといい、インドでの上映後の反応も上々だったという。

イベントを終えた辻は「社会状況は大きく違うが、実は日本とインドのジェンダーギャップ指数は同じ水準。カバル・ラハリヤの記者たちは、ジャーナリズムを手に立ち上がる『仲間』だと感じられた」。中川は「どんな国でも、ジャーナリストの役割は同じ。権力の暴走を止め、立場の弱い人のために闘うこと。そこに国境はない。『女性記者』とラベリングされる社会を変える闘いも、私たちの役目だと思う」。

「燃えあがる女性記者たち」の上映スケジュールについては、こちらから。

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