編集長コラム

最強の1000人(171)

2025年08月02日15時23分 渡辺周

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Tansaのマンスリーサポーターが1000人を超えた。創刊から8年半かかった。ぐぐっと増えたのはこの4年だが、全期間で平均すれば1カ月あたり10人のペース。3日に1人だ。ウサギとカメになぞらえれば、カメさんだろう。

創刊前、私は恥ずかしいくらい楽天的だった。

韓国の探査報道メディア「ニュースタパ」は、当時すでに4万人のマンスリーサポーターが寄付で支えていた。日本は寄付文化が脆弱だが、おとなりの韓国でうまくいっているならば大丈夫。人口だって日本は韓国の2倍だ。そんな浅はかな考えだった。実際は、市民社会の熱量のすごさという点で、韓国は日本から最も遠い国だった。

資金繰りに苦悩する中、いろんな人がいろんなアドバイスをくれた。

芸能人の不倫スキャンダルもたまには報じたらどうか? 民放のワイドショーでコメンテーターをやって認知度を上げたらどうか? 丁寧な取材にこだわらず、記事の本数を増やしたらどうか?

取材対象となる大企業、Tansaを使って自身のやりたいことを実現しようとする資産家からの資金提供の申し出もあった。

話に乗っかっていれば、Tansaのメンバーの生活は一時的には保障されたかもしれない。

だが全て断った。「ペン」より「パン」を優先した瞬間、Tansaは報道機関として死んだのも同然だからだ。

『新聞と戦争』(朝日新聞出版)という名著がある。朝日新聞の取材班が著した本で2008年に発行された。朝日新聞が戦争を煽るようになった過程を、つぶさに検証している。

私が印象に残ったのは、「朝日新聞社に『別の道』はあったのだろうか」という問いに対する、取材班の答えだ。

「戦後、新聞社の幹部らは、軍部に抵抗しきれなかった理由に、『従業員やその家族の生活』や『新聞社の存続』を挙げた。だが、新聞の戦争への影響力を思えば、通用しない言い訳だ」

「ペンを取るか生活を取るかは、ジャーナリズムとしての覚悟の問題に帰する」

生活を犠牲にしてまでペンを取るという覚悟は、簡単ではない。無条件に賞賛できるものでもない。

しかし、ジャーナリストである以上、報道機関である以上は、ここぞという時は踏ん張る必要がある。

重要なのは、今がその「ここぞという時」だということだ。貧困と排外主義、政治の機能不全が相まって、「新しい戦前」は「新しい戦中」へと突き進んでいる。

Tansaのメンバーはそのことをよく理解している。ペンを曲げることにつながる話は、どんなに美味しそうなパンでも超然として受け取らないことを良しとしてきた。「断ろう」と皆で合意する時の爽快感を、次への活力に変えてきた。

何よりの強みは、私たちの信念を理解した上で寄付してくれているマンスリーサポーターの存在だ。資金だけではなく、共に社会を変えていこうという気持ちがある。

最強の1000人を得ることができた。

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