こんな国会議員がいるのかと、驚いた人物がいる。
自民党の小野田紀美氏だ。
2024年9月24日、私と中川七海は岡山県の吉備中央町に赴いた。その日は町長選の告示日。町内の水道水がPFOAで汚染されたことにどう対処するのか。現職の山本雅則氏を取材するのが主な目的だった。
午前9時からの山本氏の出発式に、岡山の参議院議員として小野田氏が参加していた。政府は吉備中央町のPFOA汚染に対し無関心だ。地元の国会議員として、どのようにPFOA汚染に向き合うのか。中川が小野田氏に声をかけて、コメントを求めた。
ところが小野田氏は取材に応じない。自身の発信は、SNSで行うのだという。中川が食い下がっても、同じことを繰り返す。
小野田氏にプライベートなことを取材したわけではない。国会議員として、地元の水道水がPFOAで汚染されたという重大な問題に、どう対処するかを尋ねただけだ。
ここまで国会議員の質が下がったかと、唖然とした。ただ、たまにこういう議員もいる。国政の中枢を担うことは、さすがにないだろうと思った。小野田氏は2023年にはSNSで「私は卑弥呼の時代から歴史を刻んできた我が国そのものに忠誠を誓っています。国民にではありません」とまで語っている。
だが私の予想は甘かった。小野田氏は高市早苗政権で初入閣。経済安全保障相と外国人政策担当相を務めている。
そもそも、高市政権の誕生も「さすがにそれはないだろう」と思っていた。自民党の総裁選の最中、政治家たちも与野党を問わず言っていた。
「小泉進次郎氏は軽過ぎて首相は無理だろうが、とはいえ、さすがに右翼的過ぎる高市氏を首相にするわけにはいかない」
しかし、高市氏が首相になった。就任以来、高支持率を維持している。
第三次世界大戦への道
ブラジル出身の政治学者、へニ・オジ・キクエル氏の「我々は第三次世界大戦に向かっているのか」という講演を「TED」の動画で視聴した。TEDは登壇者を招き、あらゆるテーマに関する講演会を世界中で開いている非営利団体だ。講演は、各国のテレビやオンラインサイトで配信される。
キクエル氏は、第一次世界大戦前、第二次世界大戦前、そして現在を「社会」「経済」「政治」「軍事」の側面から比較した。
①社会
【第一次世界大戦前】
電話や自動車が発達した。大量生産の時代になり、機械が労働者に取って替わった。農業技術が発展し、農村からは人が流出した。不安と怒りが社会に満ちた。進歩が社会の基盤を揺るがすのではと恐れるようになった。
【第二次世界大戦前】
生産技術の発展が進み、経済学者のジョン・メイナード・ケインズが「技術的失業」を警告した。通信革命により大メディアが登場し、プロパガンダの強力な手段に。政治を分極化させた。
【現在】
AIやデジタルメディアによる技術革命。不安や憤りが加速。
【共通点】
技術や通信手段の進歩が、社会を不安に陥れてきた。
②経済
【第一次世界大戦前】
イギリスが世界の貿易と金融を支配。ドイツは工業で繁栄し、輸出を拡大させていた。両国とも戦争によるコストを知っていたにもかかわらず、戦争した。その国の経済状況は何ができるかを説明するかもしれないが、何をするかを決めるのは政治だ。
【第二次世界大戦前】
ドイツと日本は、イギリスやフランス、アメリカなどライバル国よりも収入が少ない状態に不安を感じていた。貿易が有益だと思えず、最終的には戦争を起こした。
【現在】
新型コロナウイルスのパンデミックと、ロシアのウクライナ侵攻を経て、ライバル国に依存することのリスクの高さを知った。自給と経済的ナショナリズムに向かっている。
【共通点】
戦争をすれば、自国の富を破壊する。だから戦争を始めたくないはずだというのは、幻想だ。ライバル国よりも豊かになろうとして、政治は経済合理性を無視する。
③政治
【第一次世界大戦前】
バルカン半島で、多くの民族主義運動が政府と衝突。1914年には、セルビアの秘密組織がオーストリアの皇太子を暗殺した。
【第二次世界大戦前】
ドイツのワイマール共和国では、政治の分極化が深刻に。1921年に財務大臣、1922年に外務大臣が暗殺された。右派、中道、左派全ての政治派閥が、自分たちの民兵組織を持つようになった。
【現在】
アメリカの国会議事堂をトランプ氏の支持者が襲撃。トランプ氏を暗殺しようとする事件も起きた。ドイツでは、極右政党AfDの支持者が他の政治家たちを攻撃。その一方で、AfDの政治家たちも頻繁に暴力のターゲットになっている。
【共通点】
政治の分極化が社会を分断し、最終的に政治的秩序を破壊する。
④軍事
【第一次世界大戦前】
元々はオーストリアとセルビアの争いだった。そこへ同盟が絡み、さらにイギリスが加わったことで世界大戦になった。
【第二次世界大戦前】
ドイツは欧州での覇権を望んだ。イタリアは地中海とアフリカに帝国を築きたかった。日本は中国とアジア太平洋を支配しようとしていた。アメリカが参戦し、第二次世界大戦となった。
【現在】
ロシアとウクライナ、中東で戦争がある。中国は台湾占領を目論む。中国、ロシア、北朝鮮は団結している。NATOと民主主義諸国の同盟は分断し、崩れつつある。この状況では、侵略国側による攻撃の動機が高まる。
【共通点】
世界規模の戦争は、いきなり始まるわけではない。局所的な戦争、軍事同盟を経て世界大戦となる。
キクエル氏の見解には、賛同できないところもある。
例えば、アメリカの横暴さを考慮に入れていない。中国を中心とした同盟側だけを、侵略側として位置付けているが、それは違う。ベネズエラへの侵攻にしろ、トランプ大統領のアメリカの振る舞いは、侵略そのものだ。
だがこれまでの世界大戦前夜と現在を比較し、第三次大戦へと近づく世界に警鐘を鳴らしている点は、その通りだと思う。
特に、以下の言葉は鋭い。
「その国の経済状況は何ができるかを説明するかもしれないが、何をするかを決めるのは政治だ」
いくら、「責任ある積極財政」がまやかしであっても、選挙で勝って政治力を持てば何でもできてしまう。
「第三次世界大戦? さすがにそれはない」とは言えない。

参院選で芝公園に集まった参政党の支持者たち(写真の一部を加工しています)=2025年7月19日、渡辺周撮影
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